“黒くて太いの”

「ねぇ……」

耳元で彼女が囁く。とても甘ったるい猫が鳴くような響きに、どうしようもなく胸がキュンとなる。いいや違う。これは危機を報せるサインだ。

「その太くて黒いのちょうだい……」

「お前ほんと底なしだな。もうだめだって」

ボクにだってプライドがある。もうこれ以上、彼女の言いなりばかりではいられない。一方的に奪われてばかりではたまらない。身体を翻して背を向け、絶対死守の構え。

「ケチ! そんなの認めない! 許さない!」

彼女は獲物に飛びつく猫のような素早さで背後から襲いかかると、両の手でボクの右腕を押さえつけた。抗う術は無い。その欲望の赴くまま、ボクの最後の希望を略奪する暴虐王。

「ああっ!」

「へっへっへっ」

彼女はボクの右手から「黒棒」を奪い取ると、かぽっと口に咥え込み、にんまりと笑う。

「ひでぇ……」

ボクが楽しみにしているおやつは、いつもこうして彼女に横取りされてしまう。

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Posted at 2012/04/20 13:40 Viewed 44 times

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お菓子です。

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