『鹿と俺』

鹿よ…お前はみじめだと思わないのか?鹿センベイをもらっては喜んでの繰り返しが…

いいんですよ人間さん。 どうかお気になさらないでください。

これが、僕が見つけた最良の生き方なのです。

だがしかし…とても見ていられないのだよ。本当は草が食べたいって素直に言えばいいじゃないか。

ふふふ、確かにそうですね。普通に食べたら、草の方が断然美味しいです。

じゃあなぜ言わないんだ?

プロ…だからですよ。

プロ…だと?

ええ、私は鹿センベイをもらうプロです。

たとえお腹いっぱいだとしても、お腹を下していたとしても、私は食べ続けなければなりません。

「ではなんのために?」 答えは簡単です。みなさんの喜ぶ顔を見るためですよ。

そんな…そんな理由のためにお前は鹿センベイを食っていたのか? くだらん…まったく理解できん。

決してくだらないことなんてありませんよ。

彼らの笑顔が、僕の力になるんです。明日を生きるための原動力となるんです。

鹿…

ふふふ、そろそろ僕を名前で呼んでくれませんか? 僕の名前は、ジャッカルです。

(ジャッカルはお前…イヌ科じゃねーか…) なぁジャッコォ

すみません。 ネイティブに発音されると困ります。

ああ、すまん。 ジャッカルよ、一つ聞きたいことがあるんだが

はい、なんでしょう?

お前の周り、よーーく見ると何か丸っこいものがいくつか落ちているのだが…それはなんだ?

トリュフ…ですよ。

トリュフ…だと?

もしかしてお前、さっきからもしゃもしゃ食ってるけどそれって…

ハハハ、いやまさか食べてませんよ?本当に食べてませんよ?トリュフなんて。むしゃむしゃ

おい、食ってるだろ? しかも…美味しいんだろ?

…本能に勝ったことがありますか?

いや、それはなかなか難しいところがあるな。

でしょう? 人間さんのように理性が発達した動物でさえも難しいと感じる。

ならば、私たちジャッカル

いやお前は鹿だろ。

失礼。私たち鹿なんて言わずもがなです。本能になんて打ち勝てるわけがありません。

つまり、「トリュフ食べたいな」なんて思ったら最後…食べるしかないんですよ。

…なんだかんだ言ってお前、グルメだよな。

グルメですって?ハハハ、何をバカなことを…私にだってね、草食動物としての誇りがあるんですよ!

そうか… それは失礼だったな。

本当に失礼ですよ。 あまり草食動物を怒らせない方がいいです。

すまんすまん。 ほら、お詫びの印に鹿センベイあげるから。

まったくしょうがないですね…。今回だけ許してあげましょう。 ところで人間さん

ん?どうした?

鹿センベイにつけるキャビアソースはありませんか? いつもつけてるんですが

お前やっぱりグルメじゃねーか…

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公開日 2012/09/06 17:42 再生回数 87

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