“Stand by your left”

その日は、唐突にクラスで席がえがありました。

俺、窓際の席がいいなー

私は一番前以外ならどこでもいいわ。

このウラスの席替えは、だいたいくじ引きで決まります。

次苗多なー、さっさとクジ引けよー

はーい

ゴソゴソ・・・

(・・・18番。  窓際のあの席かぁ・・・。)

(しかも、クラスいちのクールビューティー・左紀子さんの隣だなんて、ついてるなぁ!)

隣だね。よろしく、左紀子さん!

・・・・・・。

(さすが高貴なクールビューティ。僕みたいな凡人なんか相手にしないってか?)

(でも、この席替えをきっかけに、僕は左紀子さんにとって、かけがえのない存在になってみせる!)

左紀子さん!今日からよろしくっ!

ひゃんっ!

・・・・・・。

・・・・・・。

(今の可愛い声は・・・?)

あのっ、僕、苗多っていいます! 左紀子さんと、これからいっぱい仲良くなりたいですっ!

んっ、ちょ・・・っ、やめ・・・!

「ちょっと苗多!  あんたなに左紀子さんイジめてんのよ!」

「嫌がってんの分からないの!?  あと、苗多さっきからうるさすぎ!」

そんな・・・、僕はただ、左紀子さんと仲良くなりたいだけなのに・・・。

・・・苗多くん。ちょっと・・・

(なぜか、左紀子さんによって教室の外へ連れ出された僕)

さっきはごめんなさい。あらぬ誤解を招いてしまって・・・

いや、僕はぜんぜん気にしてないよ?

じ、じつは私ね・・・、耳元で喋られるのが苦手で・・・

そうだったんだ。さっきはあんな大きな声で、ごめんね?

(いつも窓際で涼しげな顔をしていた左紀子さんが、まさか、こんな可愛い一面を持ち合わせているなんて)

特に、左側から声を掛けられるのが弱くって・・・

ほら、私って、ずっと窓際の席だったじゃない?

だから、クラスの皆とは今までいつも、「右側の私」でしか接してこなかったから、

私の左側に立つ人間が許せないっていうか、私の聖域を犯すなっていうか・・・

そうゆう思考が知らずのうちに築き上げられちゃったのよね・・・。困ったことに。

だから、もし誰かが私の左側に立とうってもんなら・・・

おい、お前ら!席替えの途中で急に居なくなったと思ったら・・・。さっさと教室戻れ───

私の、左側に立たないで───っ!!

ぐぴぇっ!!

どさっ

・・・・・・。

と、まぁ、こんな感じになってしまうのです・・・。

(左紀子さん怖ええええっ!  つーか、左紀子さんの左隣の席って、僕じゃーん!!)

しかも、厄介なのが、たとえ相手が男だろうが女だろうが、誰であろうと構わず、過剰防衛してしまうということなの。

(苗多ハル樹、齢16にして春の到来と同時に、命の危機っ!)

あれ?でも、さっき僕が話しかけたときは、そんな素振りなかったよね?

そうなの、それが不思議で仕方なかったの。

あなたの声を聞いた瞬間、全身をまるで電気が走るみたいに、ビリリっていう感覚が襲ってきて、

私はたまらず声をあげちゃったけど、イヤな感じはしなかったわ。

どちらかというと逆の・・・、 そう、もっと声を聞いていたいって素直に思ってしまった。

でも、あなたの声をあのまま聞き続けてたら、私どうかしそうになって怖くなってつい・・・

もしかして、あなたは、特別なのかしら・・・?

・・・・・・。

・・・?

わーたーしーのー、左側にーーっ・・・

立つんじゃねーーーっ!!

ぎゃーーーーっ

どさっ

きゃーっ、ごめんなさい苗多くん!

てっきりこの流れだったら、あなたには手は出さないと思っていたのにーーっ!

(僕もそう思ってたよ・・・)

どうやら、僕は左紀子さんの「特別」になるには、まだまだ時間がかかりそうだ。

でもまぁ、気長にやっていくさ。

とりあえず、僕と左紀子さんとの生れ初めの話はここまで。

この後、左紀子さんは全校生徒に自分の弱点を知られ、男子から猛烈なアプローチを掛けられる。主に左側から。

そして、僕は彼女を邪な人間から「彼女の左側」を護るべく命を賭して戦うんだ。

ま、命を賭してってのは大げさだけど、先に彼女に命を奪われるかもしれないってのは、あながち間違いないよね?

苗多くぅん? 私の左側に───・・・

ぎゃーーっ

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Posted at 2013/06/26 17:55 Viewed 12 times

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久しぶりに投稿しました。キミPとは長い間疎遠でしたが、宜しければまたお付き合いください。

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