ムサシ コジロウとの決戦まで、もうすぐだ
ムサシ 巌流島の砂浜は傾斜もなく 己の力を出し切る場所には丁度良い
ムサシ つまりは互いの力をぶつけ合うための 最良の土地というわけだ
ムサシ ・・・
ムサシ だが、オレは果たして・・・ あのコジロウに勝つことができるだろうか
ムサシ 奴の長い剣から繰り出される燕返しは 目にもとまらぬ速さだという・・・
ムサシ その速さたるや、まさに燕すら斬ると・・・
ムサシ ・・・
ムサシ ・・・サスケ殿！
サスケ へえ、だんな
ムサシ 燕ってどんくらい速いのだろうかね
サスケ はあ、とんでもなく速いかと
ムサシ 刀で斬れるのだろうか
サスケ あー、コジロウ殿の使うという “燕返し”のことでごぜーますか
サスケ そりゃだんな 燕を斬るなんて無理でしょうや
ムサシ え？
サスケ いや、本人は燕斬って会得したと 仰っておりますがねえ
サスケ 実際のところ、ギラギラ光ってる刀に 近寄ってくる鳥なんざいませんよ
ムサシ そ、そうなのか？
サスケ ええ、田畑じゃあ鳥避けに 光物をくくりつけるでしょう？
サスケ 鳥ってなカラスでもなきゃ、光るもんにゃ なかなか近づかんもんですぜ
ムサシ ・・・
ムサシ じゃあコジロウは嘘をついていると？
サスケ まー、斬ったかもしれませんが 斬ったことにしたいんでしょうや
ムサシ コジロウのうそつきめ
サスケ それでもカラスくらいなら斬ったんじゃ ないですかねぇ
ムサシ カラスくらいならオレにも斬れるだろ
ムサシ いや多分、オレじゃなくても 普通に斬れると思う
ムサシ ・・・
ムサシ なんだ、コジロウなど恐るるに足らんな
サスケ へえ、その意気です、だんな
ムサシ うむ、巌流島まで頼むぞ
サスケ へえ、おまかせくだせえ
ムサシ ・・・
ムサシ ・・・だが、まずいな
ムサシ 箸でハエを捕まえるなんて嘘を 前についちゃったけど
ムサシ オレのあれもバレてんのかな・・・
ムサシ やばい・・・ 本当にハエ掴めるようにならないと いつか嘘がバレるかもしれん
ムサシ あ、でもコジロウに負けたらどうしよう・・・
ムサシ え、負けて死んだらオレ、 ハエを箸で捕まえた嘘をついた挙句に 決闘にも負けた馬鹿浪人ってことに？
ムサシ ・・・！
ムサシ ・・・
ムサシ ・・・是が非でも勝とう
ムサシ 奴相手じゃ刀では不安だ・・・ 櫂を削ってなんがい木刀でも作るか
ムサシ おーい、サスケ殿！ 櫂をひとつ貸してくだされ！
サスケ へえ？ 櫂でごぜえますか？
ムサシ そいつで木刀を作る
サスケ ええええ？勘弁してくだせえ 巌流島まではこいつ一本ですぜ？
ムサシ 頼む！削ったら返すから！
サスケ ・・・はあ、まぁ構いませんがねえ お金はいただきますよ？
ムサシ 構わん、すまないな、サスケ殿
サスケ 流されんうちに、早めに頼みますよぉ 本当に・・・・
コジロウ ・・・
コジロウ ・・・まだ来ないの？
コジロウ 潮風って結構気持ち悪いんだけど・・・
