失礼する・・・
はい！ はいはい！
間違いました、帰ります！
あー、そうやってまたカンザキちゃんはヒトを選り好みする。 ひどい女だねまったくこりゃ。
待って、行かないで。 貴女も手紙を見てここに来たのでしょう？
先日の再現じゃあないか！ 勘弁してくれ！
先日・・・？
再現って・・・どういう事です？
・・・いろいろあって。 コスプレさせられた。以上。
不審者ですか！？ 女子高校生の制服を剥ぎ、淫猥な衣装を着用させる事案が発生ですか！
単なるアホ話で終わったから、警察沙汰にはしなかったけどね。
・・・そうなのですか。
人をこんな所で待たせっぱなしにしてるのも、その変質者なの？
断定はできないけれど・・・ 恐らく、別人じゃないでしょうか。
・・・ああ。 言われてみれば、そうだな。
その根拠は？
筆跡だ。 以前の件で用いられた手紙の筆跡と、今回の件の筆跡が異なっている
前回の拙い書き方に比べて、今日の手紙の筆跡は非常に丁寧に書かれているんだ。
異議あり！
非常に丁寧？ どこがよ、こんなクッソ汚い字で。
そうですね・・・ 私宛の手紙の筆跡も、お世辞にも綺麗とは言い難いです。
一度、全員の手紙をお互いに確認してみましょうか。 もしかしたら、差出人がわかるかもしれないし。
ええと、これが私宛の。 殴り書きみたいに、乱暴な筆跡ね。
『ギンジョウへ。午後五時に生徒会会議室にて待つ、必ず来い。必ず』
ギンジョウって、私の事ね。 申し遅れました、2年のギンジョウです。よろしく。
・・・私のは、これね。 丸まっちぃ、読みづらいったらありゃしない字だわ。
『ヤツルギ先パイへ♪ お話ししたい事があります』・・・以下同文。
『先パイ』って書き方がまずムカつくわ！ どこぞの販促漫画の回し者か！
この学校ってほんと気持ちワリィ奴ばっかりだな・・・
ハイッ、私宛の手紙はこれ！ なんか雑誌の切り抜きを貼り付けてありまーす。
脅迫状っ！ こわいっ！
どこの怖い人かしら・・・ 皆目見当がつきません。
それでそれで、カンザキちゃんのはどんなの？
私宛のものは、この中ではまともな印象を受けるはずだぞ。 見てくれ。
・・・うわ、つまんねぇ。
・・・で、心当たりはどうなの？ 誰か、差出人わかる？
さっぱりわかりませんね・・・
オコノギ先輩はほぼ確定だな。 間違いなくお礼参りだ。
マジかよ・・・
オコノギ、貴女とはほとんど3年話したことなかったけど・・・ そういう連中と仲良かったの？
ヒィ、優等生の差別発言！ オレが嫌いなのは差別と落ちこぼれだ！ みたいな？
け、結局あるんですか、この脅迫状に心当たりが。
嫌われるような事ぁしてねーよ。 きわめて健全でキレイなおカネのやりとりしてるからな。
避妊具用意しない奴とは口も利かないからね、私。
口を開けば下ネタだっ！ やめてくれ！
じゃ、じゃあ・・・ その最後のお客さんは誰なんです？
掘り下げちゃった！ 好奇心がマッハ！ 怖い！
なんつったかなぁ。 背が高くて、チャラくて、頭染めてる奴。シメジだか、そんなんだな。
まさか、シメギの事？
そうそう、シメギさん！
あいつったら終始ビクビクオドオドしやがって、とんだハズレチェリーだったんだよね。 おお、怖い怖い。
その彼からの手紙とは考えられないか？
まあ！ マジもんの恋文！？
ずいぶん物騒な恋文です・・・
やっぱりお礼参りだな。 早めに警察に通報するべきだ。
・・・カンザキ、あんた度胸ついてきたじゃないか、こんにゃろう。
だってそうとしか・・・
恋文という観点じゃあカンザキのものが近いかもしれないね。
払いも止めも完璧な筆跡・・・ 学のある人間の字だと思うわ。
が、学のある・・・ 学のある男性？ 頭脳明晰？ 品性高潔？
体つきは野郎が好きそうだからな。 後ろからも見えそうなおっぱいに、つーんと突き出たヒップときた。
私とは違う需要を集めそうかも！
・・・来る？ 私のターンが来る？
・・・でもなあ。 如何せん余計なとこがデケェんだよなあ。背だ。背だ。背！
やめてっ！
ニョキニョキ縦に膨らみやがって。 軽く190は越えてんじゃねーのか。
よく寝てよく食べたらこうなっただけです！ 健康体です！
・・・アプローチを受けた経験ないんでしょ？ それなら、恋文のセンは・・・
夢を見させてください！
あの・・・ さっきから何か臭いませんか？
・・・？
おい誰だー、生理なのになんにも対処しねーで垂れ流しにしてんのは。
返しがエグすぎますっ！
確かに、鉄くさいですね。 なんとなく・・・生臭い・・・
・・・あれじゃない、ロッカー横のポリ製ゴミ箱。妙に大きいし。
気持ちわる・・・
ハーイ、カンザキさぁーん♪ 出番でぇーす♪
いやだ・・・ 今回だけは本当にいやだ・・・！
そういう返しいいからさァ、もう。 なに？ 口喧嘩で私に勝てると思ってんの？ こいよ！ オラ！
ぐぬぬ・・・
ストップです！ やめてください、私が開けます！
よ、よろしくお願いします・・・
ひっ・・・優等生二人目・・・ どう見てもこの場でのウザキャラは私・・・怖い・・・
・
・・
・・・！
おらっ！
・・・
・・・
何、どうしたの？
ったく、誰がヨゴレもん捨てたんだか・・・
・・・見りゃわかりますよ。 気持ちいいもんじゃないです。
・・・
・・・うわっ、うそだろ！？ ひ、人が入ってる・・・！
どんな変態なのよ・・・ ちょっと、見せて・・・
・・・あら！ シメギくんじゃありませんか！
ちょっと・・・ どういう事・・・？
か、か、彼・・・ し、死んでるのか・・・？ ねね、寝てるのか・・・？
中で俯いてて、出さねえとよくわかんねえな・・・ でも、この血の臭い・・・
ふうむ・・・ 集められた先には、ゴミ箱入りの死体・・・趣味が悪いですね。
け、警察！ さっさと警察！ 警察！
・・・もしかして、差出人が殺したんでしょうか。
あわよくば、疑いが私達にかかればとここに呼び寄せた・・・
私達がこのゴミ箱を発見し、中を覗き見る事は確実じゃありません。 単なる偶然じゃありませんか。
・・・その、シメギが差出人とは考えられない？
・・・場所の因果関係を考えると、不自然ではありませんね。 問題は、誰かを呼び出す動機があるかどうか・・・
どう考えてもオコノギ先輩だ！
私ならもっと足がつかないようにヤりますー、こんな粗末にしませーん
シメギさんがオコノギ先輩をここに呼び出し・・・ その・・・
ちっす先輩！ またムラッときたんでオナシャス！
・・・ってか？ 気持ちワリィなおい。
そこで彼をグサ！ ザク！ と刺し殺した・・・
だからしねェっての！
いいえ！ そうに決まってます！ ヤツルギ先輩、警察を呼んでください、早く！
このマーダービッチ！ ブタ箱で後悔するのね！！
てめえ、いい加減に・・・
おい、おいこら待てボケッ！ ふざけんじゃねえぞ！！ 待てーッ！！
・・・
ブン投げた！ マジで行っちゃったよ二人とも！！
まあまあ。 これで落ち着く事ができるわ。
・・・そ、それはそうだが。
いやでも死体！ 死体ボローンしてる！！
あら、それならこれで大丈夫。 それ、シュッシュ。
・・・いい香りだ。 ファブリーズ？
お高いお高い香水です。 やっぱり雰囲気って大事ですから。
意味わかんないっ！ だから死体っ！！ ニオイじゃないっ！
いいじゃない、しゅっしゅ。
いやいやいやいや！ 何を言ってるのかわからない！ 頭膿んじゃったの？もうダメなの？
ああ・・・もうダメかもしれない。 だって・・・
愛しのアナタとこうしてやっと二人きりになれたんだから・・・
・・・
この人も頭あったかい人かー！ そっかー！
アナタが転校してきたときから、ずっと私・・・見てたの。 アナタの事をずっとずっとずっと。
アナタの切れ長の目・・・ ぎんぎんにはじける睫毛・・・ ミルクみたいに白い柔肌・・・
一目見た途端、ひたいの奥でぱあっと何かが広がったわ・・・ 明るくて、優しい何かが・・・
落ち着けっ、落ち着いてください！
その日から私はもうアナタの虜。 一日だって頭からアナタの姿が離れる事なんて無かったわ。
・・・ほら見てよ、この親指。 赤くふやけてるでしょ？
アナタとキスする事をずーっと考えてたら、いつの間にかね・・・ ちゅぷちゅぷしゃぶってたの・・・
（アカン）
毎晩毎晩幸せなの・・・ 胸がポカポカして、おやすみからおはようまでお風呂上りみたい。
それ営みっ！ 早く賢者になってっ！！
ああ、もう無理っ！ 嬉しくてたまらないのっ、もう離さないわ！ カンザキさん、カンザキさぁん！
タイムッ！ ちょっとタイムッ！
・・・タイム、まじで。
・・・
・・・じゃあ何かい、私のところに来た手紙はアンタが出したって事で・・・間違いないのか。
ええ、勿論。
じゃああの男！ シメギって奴については、本当に何にも知らないのか？
あーと、彼・・・ 彼はですねぇ、私がここに来る前から死んでました。
本当か？
ここで嘘ついても何の得にもならないので・・・
あっ！ 嘘ついたら殴ってくれますか！？ 私の奥歯という奥歯を叩き折ってくれますか！？
頭おかしいよォ！！
うふふぅ。 でもほんとです、彼を殺したのは私じゃあないです。
・・・となると、マジでオコノギ先輩がヤっちまったって事か？
いいえぇ。 実際ヤったのは・・・
彼をブッ殺した犯人は、 あのヤツルギさんでぇーっす！！
・・・はあ？
ちなみにガチですよ。 私、見てましたから。遺体をつめつめしてるとこをしっかり。
ヤツルギ先輩がシメギを殺し、ゴミ箱につめたと？
どうやって殺したかなんて、殺した本人しかわかんないですから。
思いっきり『刺し殺した』って言ってたじゃないですかァーッ！
気持ち悪いからって遺体をろくに調べなかったのにね。
当初の狼狽え方もそうだったけど、あのセリフで私も確信を持てましたよ。彼女が犯人だって事が。
・・・何で最初に言わなかった？
だって！ アナタと二人きりになりたかったんだもの！！
駄目っ！ 会話のキャッチボールしてくれっ！
あの二人をどっかにやっちゃいたかったものでしてね。 聞けば、どうも面倒な事になっていたらしく・・・
まず、シメギさんは手紙でヤツルギ先輩を呼び出したらしいんです。 この場で何をしたかったかは知りませんが
集合の5時から30分前、まずこの部屋でシメギさんとヤツルギ先輩が対峙
いやー、どうやらこのお二人。 人には言えぬチョメチョメな関係だったようで！おお、アツイアツイ！
なんやて・・・
さあ問題のプレイボーイのシメギさんはというと・・・
4時30分
・・・
チョリーッスｗｗｗｗｗｗ
・・・何よ、クソ野郎。 今更何の用なの。
いやねーｗｗｗｗ 最近オレっち、自分でもちょいとはしゃぎすぎちゃったと思ってー！
・・・それで？
あんまりヤツルギが怒るもんだから、反省したんだってばよ・・・ だから、宣言しようと思って・・・
シメギ・・・
もう私の財布から2万円抜き取って、ビックリマンチョコにつぎ込まないって言うの？
おうともさ！
もう私の事を銀ミクって呼ばないって言うの？
あたぼーよ！
じゃ、じゃあ・・・
私との・・・ その、健全なお付き合いに・・・ 戻ってくれるっていう事？
わ、私だけを・・・
いや、だけとか無理。 不可能。 インポッシブル。
・・・
いやいやいやいや。 はしゃぎすぎちゃったからこそ、身を固めようと思ってるのよォ！
オレはなるんだ・・・ 絶対になるんだよ・・・
オコノギさんの家畜に・・・ 他には脇目も振れぬ存在にな・・・
・・・
・・・！
間接的にとはいえ あの人のせいじゃあねーかッ！！
愛って怖いわ・・・ 怖い・・・
この男もこの男だ・・・ なんて奴だ、まったく！！
さて、次はなぜあのオコノギ先輩が来たかといいますと・・・
どうも、ヤツルギ先輩がオコノギ先輩に出した手紙らしいのよ。
・・・さっきみたいに２人も部外者がいる状況で話を切り出したくなかったみたいだけど。
さて、犯行を目撃した私は言ってあげたの。黙っててほしかったら、この部屋に来るであろうオコノギ先輩共々出て行ってねって。
言う事聞いてくれたら、オコノギ先輩が実行犯になるように証言してあげるからって。
なんだこの女！
大体何でこの部屋を選んだんだ、死体がある部屋で私と・・・
い、いかがわしい真似をしたかったのか？
それはぁ・・・
・・・この学校で唯一、内からカギがかけられる教室だからなの。
唯一・・・？
すなわち、オコノギ先輩が常日頃から男どもと・・・
こ、こ、この部屋で・・・！？
だからシメギさんはヤツルギ先輩をここに呼び寄せたんじゃないかな。
あわよくば２人でオコノギ先輩の下僕に・・・
揃って頭おかしいっ！！
と！ そんな最高なプライベートスペースを使わない手はないじゃないの！！
アンタもアンタでイカれてるぞ。
・・・
な、何だ。
ああ・・・ これで全部スッキリしたね、カンザキさん。
もう外からは邪魔は入らないよ。 だから・・・
シルクのベッドで愛し合いましょう、インマイドリーム！！
ふざけろバカたれ！
そ、そうだ！ まだハッキリしていない事がある！
何ですか！？
アンタ宛に届いた手紙だよ！ あれは何だったんだ！？
そんなの盛り上げるためのテコ入れに決まってるじゃないですかァ！！
ああ・・・ ドキドキするカンザキさんも素敵だったよぉ・・・
帰る！
ちなみに今の全部ウソだから！ ヤツルギさんを疑ったりしないでね
もう何が何やら！
