ピンポーン!
「はいはい、今開けまーす!」
ガチャ!
いらっしゃい、高野さん。 主人なら部屋に篭っているわよ。
はい、失礼いたします。
先生、おはようございます。 担当の高野です。
(カリカリカリカリカリカリカリカリ……)
(す、凄まじいまでの筆の進み! さすが先生だ……!)
(カリカリカリカリ……バンッ!)
終わったァーーーーッ!!
お疲れ様です、先生。
おう、高野か。 ほらよ、上がった原稿だ。上の奴に叩き付けて来い!
さ、早くノートパソコンを出してくれ! その為に原稿を今日仕上げたんだ!
わかってますって。 今準備していますよ。
お茶をお持ちしましたー……ってあらあなた、また高野さんのパソコンを使わせて頂こうとしているの? いい加減自分で買ったらいいのに。
う、うるさい! 高野のパソコンが一番使い心地が良いんだ、余計な口出しをするな!
はいはい。 高野さん、主人のことよろしくお願いしますね。
そんな、僕は何もしていないですよ。 先生自身の息抜きですから。
まったく、あいつに口出しさせたらロクなことにならない。 ワシの密やかな楽しみだというのに……
先生、準備が整いましたよ。
おう、やっとか。 それじゃ今日もやるぞ、「キミP!」
(忙しい先生の息抜きにと思って紹介したが…… まさかここまでのめり込むことになるとはなあ……)
お、ワシのお気に入りの投稿者の新作が出ているじゃないか! どれどれ……
……ハハハ、やはり面白い! この人の作品は、P---先生やP---先生の著作なんかより断然面白いな!
先生、発言が危ないですよ!!
……フムフム。 よし、一通り他人の作品を読み終わったことだし、ワシも何か一作書こうかな!
すでに投稿した作品は十を超えるが……この調子なら、ワシが今まで世に出した著作の数も超えるかもな! ワハハハハハ!
(もはや重症な気もするけど…… 忙しさで先生のストレスが溜まる一方だった頃を考えると、良い傾向なのかもなあ……)
それじゃノートパソコンは置いていきますので、僕はそろそろ……
おいおい、ワシの新作を見ていかないのか? すぐに仕上がるぞ、頭の中でストーリーは出来上がっているからな!
(いやそっちの新作じゃなくて、原稿のチェックが……) わ、わかりました。じゃあお待ちしていますね。
(カタカタカタカタカタカタカタカタ……)
……よし、出来上がったぞ! 高野、ちょっと見てくれ!
失礼します。 えっと、どれどれ……
……だ、駄目よ! 私は教師で、貴方は生徒なのよ!? なのに、そんな……
どうでもいいだろそんなこと! 俺には世間体とか気にしてる余裕なんかねーよ! 先生のことが、好きなんだ!!
金崎くん…… わ、私も、貴方のことが……
という感じで、教師と生徒の禁断のラブストーリーだ! 若い衆にも受ける話に仕上がっているだろう?
(普段は厳格な文学作品を書かれているから、ギャップが激し過ぎて何と言ったらいいのか……)
さて、しばらくはキミPライフを楽しめるな! 明日も作品を書くぞ!
ちょ、ちょっと先生、次は雑誌の短期連載の原稿も控えてるんです! さすがに明日からは真面目に取り組んで頂かないと……
な、何ィーーーーッ!? くそっ、こうなったらワシは作家をやめるぞ、高野ーーーーッ!
駄目ですよ! 何言ってるんですか先生!!
キミP作家に、ワシはなる!!
駄目ですってば!!
これを見ている貴方も、作品を投稿したその日からキミP作家だ! さあ、レッツチャレンジ!
くそっ、忙し過ぎるーーーー!! ワシにキミPを楽しむ時間をくれーーーーッ!! (カリカリカリカリカリカリカリ)
(先生……本業に支障をきたさない程度にして下さいね……)
ー終ー