ある所に、二人の兄妹がいました。
兄のジョーンと、
妹のジョエル。
二人は一見仲良し兄妹のように見えますが…、
実は家族がいない所では、そうではなかったのです。
いつも兄のジョーンが、妹のジョエルをいじめていたのです。
いじめのきっかけは些細なものです。
ジョーンの汚い机の上から、探し物が見つからないと決まって、
お前が盗んだんだろ!
違うわ、ジョーン兄さん。私、盗んでないわ。
うるさい!
そう言って、ジョエルを叩いたりするのです。
そんなある日、母は二人に言いました。
『今日はクリスマスね。サンタさんにプレゼントを入れてもらう靴下を用意しておきなさい』
部屋に帰ると、兄のジョーンは言いました。
お前、確かでっかい靴下編んでたな。よこせ。
ダメよ。これはまだ編みかけで…。
うるせえ! プレゼントが入ればいいんだよ!
そう言って、ジョエルから大きな靴下を奪ったのです。
せっかく、クリスマスの為に編んだ靴下を奪われ、ジョエルは落ち込みます。
仕方ないので、代わりにいつも履いている靴下を枕元に置いて寝ることにしました。
翌日。
目が覚めたジョエルは、枕元の靴下を見ました。
何と、靴下が膨らんでいるではありませんか!
きっとサンタさんが、プレゼントを下さったのだわ♪
ジョエルは靴下の中身を取り出します。
まぁ、かわいい! これはスノードロップね。
靴下の中には、雪のしずくの様な花の髪飾りが入っていました。
ジョーン兄さんは何を貰ったのかしら? きっと大きなものかしらね。
…と、その時です。
きゃあああああああああ!!!
隣のジョーンの部屋から、母の悲鳴が聞こえました。
駆けつけてみると、母は真っ青な顔をしていました。
どうしたの、お母様?
母は声が出ないようです。
何があったのか尋ねようとしましたが、それはベッドの上を見るとわかりました。
ジョーンの身体は、ジョエルから奪った編みかけの大きな靴下にすっぽり飲み込まれていたのです。
ジョエルは思いました。
サンタさんは、良い子には靴下の中にプレゼントを入れてくれるけど、
悪い子は、靴下の中に入れられてしまうんだ、と。
スノードロップの花言葉のように、
今冬はちょっと早めの春の兆しが見えてきそうです。