ピンポーン
はいはい、家の人は居ませんよぉー。むにゃむにゃ……
ピンポーン……ガンガンガン
だから居ないって言ってるでしょうー。むにゅぐにゅ……
ガチャ。タッタッタッタッタ
こらー！！ 春香！！ 分かりきった居留守を使うんじゃないの！！
むぅ、人の家に勝手に上がりこむんじゃないのぉ～
今日、出かける約束してたでしょう？ って、寝てるんじゃないわよ
分かったよ、起きるよ。起きるから布団を剥がないでよ！！ 布団をはがれたら、私死んじゃうよぉー
死ぬわけ無いでしょう！
もう、幼馴染みだからって横暴だよ！！ 人の家のドアを勝手に開けて、私の部屋に押し入るなんて！！
何処に鍵隠してるかなんて、とっくに知ってるわよ！！
うぅ。三ヶ月に一回、隠す鉢植え変えてるのに……
合鍵をそんな変な場所に隠してて、この家は平気なのかしら……
空き巣が入ったら、辰子のせいね？
なんで私なのよ！ それよりも、ほら。出かけるわよ
嫌だよ？
何でよ？
引き篭もる事が、私のジャスティス。引き篭もり万歳
あんた、そんなんで新学期入ったらどうするの？
大丈夫だよ。期末テストの結果も、辰子の倍は良かったから
ぐぬぬ……。ってそんな話をしてるんじゃなくて、私は気持ちの話を
春眠暁を覚えず……
そんな気持ちがダメだと言っているの！！ いい？ もう、春は来てるんだよ！
気の迷い
せめて気のせいと言いなさい！ ほら、立ち上がって外に出るよ？
私を立たせたら、そりゃ凄いもんだよ？
ケーキバイキングに行くんだよ？
さぁ、行こう！ すぐに立って行こう。むしろ走っていこう？
全く、あんたは……
えっと、コートはどこやったっけ？
そんなの要らないよ
え？
ほら、もう春はやってきてるんだから
そっか。時間が経つのは早いね
だから、しっかりと立って歩いて進んでいかないと、置いてかれるわよ？
その時は辰子が引っ張ってくれるよぉー
はぁ……。ならその時は、しっかり立ち上がって歩くのよ？ さぁ、行きましょう
暖かな春風が彼女たちの背を押すように吹いていく。
重い腰を上げた彼女に春の香りを運んで、立ち上がって歩く気にさせる様に風が吹いていく。 そんな春休みの、一日のこと。
