( はぁ … どうしよう…終わっちゃったよ … センター試験 … )
(自己採点で逃げ出したくなっちゃった…)
( 引きこもりだった現役の時に失敗してから一年間必死で頑張ってきたのに、あんな変な問題で受験失敗なんてやだよ…)
(病気で入院してるおかあさんにも、お仕事頑張ってくれてるお兄ちゃんにも、こんな結果だなんて言えない…どうしよう…)
(お兄ちゃん…怒るかな…)
ただいまー…
点Pがスピナトップ!スピナトップ!!
毎秒1の速さで進むと思った?残念!!x座標が毎秒1増加するように進むよ!!!!
…って感じだったんだろ?今年のセンター試験。
ヒドい…ずっと悩んでたのに…お兄ちゃんの…お兄ちゃんの…
≫バカーーーーーッッッッ!!!!≪
おいちょっと待てって!よしの!
(ダッダッダッ!バン!ガチャッ!)
あちゃー…部屋鍵かけちゃったか…
おーいよしのー、兄ちゃんが悪かったよー鍵開けてくれよー
…やだ…許さない
…ごめんなよしの…そんな傷つくとは思ってなかったんだよ…
…あっそうだ!遅くまであったしお腹すいたろ?ごはん何時がいい?
…いらない
そーんなこと言うなってー…今日はよしのの大好きな兄ちゃんオリジナルカレーだぞー?それでも食べないー?
…
…わかったよ 作っとくし気が向いたら降りてきなよ そしたら一緒に食べよう
トットットッ
(キッチンに降りてった…)
(カレーか…ホントはお腹ぺこぺこだけど…)
…意地張ってもしょうがないか
お、降りてきた。じゃあご飯にしよっか
テレビの音。二人とも黙々と食べている。
よしの、カレー美味しい?この前職場の先輩からレシピ聞いたからちょっと変えてみたんだけど…
…
なんだよーそんなめそめそすんなよーもうつくんねーぞー
…
(まぁ、しょうがないか… 結構引きずるタイプだしな、よしのって…)
黙々と食べる二人。
いやー食べた食べた。ちょっと作りすぎだったかなー。お腹いっぱい。
あっ、そうだ!食べ終わったしゲームやろうぜ!どうせ今日は勉強する気にならねーだろ?ちょっと用意してくるわ!
(ゲーム?マリカとかかな?あんましやる気にならないんだけど…)
おまたせー。はいこれ。紙とよしのの分のペン。
…五目並べ?
そ。俺がさっき書いてきたやつ。よしの先攻でいいよ。さ、やってやって。
カリカリカリ
あっちゃー…これ俺完敗だわー…
やった♪
えーいクソ!もう一回!別のマスで俺先攻で!こうだ!!
カリカリカリ
また勝ちー♪
カリカリカリ
勝ちー♪超楽しいー♪
ぐぬぬぬ…
それから大体十戦ぐらいした後。
あー楽しかった。お兄ちゃんよわーい。
もーなんだよもーこんなはずじゃねーよもー
ま、それはどうでもいいや。よしの、五目並べ楽しかったろ?
まーね。おにーちゃんが負け続けてくれるしねー。
兄がおもむろに五目並べの紙を取ってビリビリに破く。
…!なにしてるのお兄ちゃん?!
な?こんなもんだよ、よしのがさっきまで受けてた試験なんてさ。
…!
あんまり良くなかったんだろ?結果。ネットで見てたから難しくなってたことは知ってるよ。
よしのがこの一年、必死で頑張ってきたことは俺も知ってるし、俺も自分ができる限り応援してきたさ。
なにより、高校の時、自分を見失って部屋から出れなくなってたよしのが自分で志望校を決めたときは最高にうれしかった。
ちっちゃいときから俺やかあさんのいうことばーっかり聞いてたよしのが、自分の進む道を自分で決められるようになったんだって。
そうやって選んだ道をこんなバカみたいな五目並べで決められるなんてどうかしてると思わないか?こんなもんで人間がわかるか?
笑い飛ばしてやりゃいいんだよ、こんなもん。なーにがスピナトップだよ馬鹿じゃね―のって。
まだ入試本番まで二か月あるだろ?今日はゆっくり休んで、明日から自分のペースでこつこつ頑張れば絶対間に合う。
まあそこはよしのの気持ち次第だけどな。ただ、こんな問題に一喜一憂させられて終わるなんてバカらしいと俺は思うけどね。
俺、実は昼によしのの塾に電話して聞いてみたんだ。万が一センターが失敗してもよしのは受かりそうかって。
…何してくれてんのよ
先生言ってたぞ、よしのはセンターみたいな時間が押してる試験は苦手だけど、ゆっくり考えれば問題は解けるタイプだって。
だからよしのが受けようとしてる学校のタイプと合ってるってさ。
まあ、俺は所詮部外者だ。よしのの代わりに勉強して試験を受けてやることはできねーからな。やるのは自分でやらなくちゃいけないけど。
でも、二か月間やれるだけやってみるのはいいと思うぜ。そのほうがもし当たって砕けても気持ちいいとおもうし。
それでもまだよしのの選ぶ道が変わらないんなら、それをサポートできるぐらいの力は俺とかあさんにもあるし。
悔いを残さないようにあと二か月頑張ってみるのもいいと思うぜ?
…うん!残り二か月、頑張るよ、お兄ちゃん!
よっしゃ!そんなよしのにはご褒美のミルクティーを淹れてあげよう!マシュマロ入りだ!
こうして和気あいあいと夜は更けていった。
そして…
………………… おにいちゃん…
番号あった!あったよ!
Fin.