あ、あの… えっと、青野…くんであってるかな?
ん? 青野だけど、何か用?
良かった!! 間違えてたらどうしようかと思っちゃった。
あれ? どっかであったことあったっけ? おかしいなぁ、こんな可愛い子忘れるはずないのに。
可愛いだなんて、照れちゃうよぉっ。 私だよ、私。 分からない?
ごめん、わからないや。
そっか、そうだよね。 私は一目で分かったのに。
……ごめん。 教えてくれると嬉しいな。
架那(かな)だよ。 明石 架那(あかいし かな)。 でも青野くんには、こう言った方が早いかな?
?
クロウのカレナ。
っ!!!!!!!!!
よく聞いた事のある…正確には見たことのある名前だった。
クロウのカレナ… ネット上のオンラインゲーム、 『クロウ•モノ•オンライン』 を一緒にしていたプレイヤーだ。
彼女はオンラインゲーム初心者で、何も分かっていなかった。 だからいろいろ教えてあげたのが一緒に行動するきっかけだった。
『クロウを始めたばかりで、よく分かりません。誰か教えていただける人はいませんか?』
そう綴られていた、ランダム送信のメール。 ちょうど俺は暇だったので、そのメールに返事をした。
『基本的な事で良かったら教えられますよ。どうしますか?』
返事はすぐに来た。 『是非お願いします。』
オンラインゲームに興味があったけど、やり方が分からなかったと言う彼女からはとても頼りにされた。 そして───────
『もし良ければこれからも一緒に行動していただけませんか?まだまだ分からないこともあるので、1人だと不安なんです。』
『もちろんいいですよ。』 俺はクロウが好きだったし、なにより頼りにされることが嬉しかった。
───俺はこの選択を 後悔する事になる───
『いつもありがとう。助かってるよ。』
『1人でプレイ中。少し寂しい。』
『そろそろ来る時間だと思って、待ってたんだ。』
『今日も、もちろん私と行動してくれるよね?』
『今ログインしてるよね?一緒に行動しようよ。』
『ねえ、なんで昨日はログインしなかったの?ずっと待ってたんだよ。』
『今日私以外の人と行動してたね?誰なのか教えてもらってもいい?』
『なんで他の人とばかり一緒に行動するの?私と行動してくれるんじゃなかったの?』
『ねえ、なんで最近無視するの?冷たいよ…。なんで?』
俺はもう限界だった。 ログインすればいつも彼女がいる。 他の仲間と行動しようと思っても、彼女が割り込んでくる。
そうなったらオンラインゲームは楽しくも何ともない。 俺は次第にクロウから遠ざかっていった。
私ね、クロウにブライ…青野くんがいなくなって、とっても寂しかったの。 だから頑張って探したんだ。
でも、頑張って良かった!! こうしてまた合えたんだもん。
あ、そうそう、私が知ってる情報だけだと、青野くんを見つけられなかったから、少し青野くんのパソコン覗いちゃった。
ちゃんとセキュリティーかけとかないと危ないよ。
…………………。
どうしたの? もしかして私とまたあえて嬉しい?
そんな訳ないだろ!!!!!!!!!
思ったよりも大声が出てしまった。 あまり人がいない時間だったことが唯一の救いだ。
ビックリした~。 でもそうだよね、いきなりだったからおどろいちゃうよね。
でも安心して!これからはずっと一緒にいられるから!!
どういう…ことだ………?
私ね、この学校に転校してきたんだ。 青野くんとずっと一緒にいたくて。
俺は絶望した。 目の前が真っ暗になる、というのはこういう状態なのだろう。
オンラインゲームだったから耐えられたらものの、あれを現実でやられたら、と考えると吐き気がしてくる。
俺は一体どうなってしまうのだろう。 卒業まで耐えられると良いのだが…。