私は一体何なんだろうか？
物理的にはタンパク質やその他の物の集まり
精神的には自我の集まりと言っても良いのかしら
では何をもって私であると言えるのか、そんなことを考えてしまうの
日常生活における私、社会的な私
その全てのものをもってして私であるというのなら
私はそれを解き明かしたい
私を構成するすべてのものを
みてみたい
自分のこの腕がどこまで届くのか、この脚でどこまでいけるのか
この眼でどこまで見えるのか、この耳でどこまで聞こえるのか
こんなことが最近わかってきた気がする……気がするだけだけれども
こんな風にしてわかっていくんじゃないかって思う
自分自身というものを
いいことに気づいたわね
あなたね……久しぶりじゃない
ええ、お久しぶり……今日はどうしてこんなところに来たの？
別に……自転車を漕いでいたらついただけよ
ふふ、いつもどおりね
今度は何を考えこんでるのかと思えば、結論はもう出たみたいね
そうね、あなたの出る幕はなかったようね
それは嬉しいわぁ……あなたの成長は私の成長でもあるのよ
でもね、ひとつ言わせてちょうだい
あなたは自分を知ることが重要だと思っている
たしかにそれは重要なんだけれども、それだけじゃダメなのよ
他人の存在を忘れちゃダメ
自分自身を理解したところで他人を理解できるなど到底ありえないの
あなたに気づいてほしいことはもう一歩踏み出したところ
自分も他人である、ということね
自分を他人として認識できて、初めてあなたはあなたを理解するのよ
きっとね
……
……あなた
？
随分と説教臭くなったわね
ふふ、ご愛嬌よ
まだ私は自分を理解しきれていない
まずはそこから始めてみる
いいんじゃないかしら
何事もできることから、が重要よ
そうね、できることから
じゃあわたしはこれで
バイバイ
……
そう言っていつもの様に彼女は消えていった
私はひとつ、大きな伸びをすると傍らの自転車にまたがる
漕ぎ始めると、夏の蒸し暑い風が頬をかすめた
その熱を一体私はどう感じているんだろうか
そんなことを考えながら自転車を前へと進める
あの娘を理解するのも私を理解するのに必要かしら
そうつぶやいて私は、次の目的地へと向かった
