友達のユキナが、突然学校に来なくなった。
心配だわ…、ユキナ。
一体何があったのかしら…。
ミオが気に病んでいると、同級生のひそひそ話が耳に入ってきた。
ユキナちゃんが学校に来ない理由…、アレじゃないかな？
アレだよね…、あの都市伝説の…、
ユキナちゃん、よく下校中に買い食いしてたもんね。
…ねぇ、アナタたち。
ユキナのことについて、何か知ってるの？
お願い、何か知ってるんだったら何でもいいから教えて！
…ミオさん、都市伝説って信じますか？
うーん、私はあんまりそういうものは信じないようにしてる。
ユキナちゃんは、『からあげくん』の犠牲になったんだと思います。
…『からあげくん』？
それって、コンビニに売ってるホットスナックのことよね？
ユキナがよく下校途中に買い食いしてたわね。
それとユキナが何だっていうのよ？
『からあげくん』っていう都市伝説は、
昔、自分の食い意地が原因で亡くなった弟を悔やんで、後追い自殺した姉の怨霊と言われています。
その女の怨霊が、下校途中のユキナちゃんを…。
そんなまさかッ？！
ユキナちゃんだけじゃなくて、他の女子生徒も次々不登校になってるみたいです…。
バカらしい！
都市伝説？ 『からあげくん』？ それでユキナがどうしたっていうのよ？
アナタたち、アタシをおちょくってるの？！
アタシは本気であの子を心配してるっていうのに！！
ｶﾞﾗｶﾞﾗｶﾞﾗ ﾋﾟｼｬｯ！
はぁ…、はぁ…。
…何やってんだろ、アタシ。
でもたかが都市伝説で、ユキナがどうかしちゃっただなんて考えられないわ。
今日、帰りにお見舞いに行こう。
え…、会いたくない？
あの子、部屋に引きこもっちゃって…。
母親の私にも顔見せてくれないし、口もろくに利いてくれないの…。
カーテン閉め切って、部屋を真っ暗にして、ぶつぶつ何か呟いてるし…、一体何があったのかしら？
ユキナ…。
何でユキナがこんなことに…。
アタシにはユキナの身に何が起こったのか、全く検討がつかなかった。
手がかりは、同級生たちの言っていた都市伝説『からあげくん』。
『からあげくん』の怨霊が、ユキナに何かをした…。
アタシは考えたくなかったが、…でもそれ以外に何も思いつかなかった。
もしかしたら、当日のユキナの行動を追っていけば何かわかるかもしれない！
ｱﾘｯ ｱﾘｯ（ありがとうございました）
いつもユキナはここで『からあげくん』を買って、家までつまみながら下校していた…。
ミオは、ユキナの家まで『からあげくん』を食べながら歩くことにした。
ﾓｷﾞｭ… ﾓｷﾞｭ…
初めて食べたけど、ホント美味しいわね。『からあげくん』。
４コ…、３コ…、２コ…。
ミオの手がカップに入る度、『からあげくん』の数はみるみる少なくなっていく。
ユキナの家に着いてしまったわ。
結局何も起こらない…。やっぱり、都市伝説なんて嘘だったんだわ。
何やってんだろ、アタシ。早く帰ろう…。
ミオが残り１コの『からあげくん』のカップに手を入れる。
…あらッ？
『からあげくん』が…、２コ入ってる。
アタシ、さっき確かに４コ食べたハズなのに…。
店員が個数を入れ間違えたのかしら？
ﾓｷﾞｭ… ﾓｷﾞｭ…。
再び、『からあげくん』のカップに手を入れるミオ。
えっ…？
…何で？
『からあげくん』が…、３コ…？！
何かがおかしい。
確かに、『からあげくん』の数が増えている。
や…ッ！！
ミオは思わず『からあげくん』のカップを投げ捨てた。
『からあげくん』は道端に転がり、中身がカップからこぼれた。
こぼれた数は、５コ。
また…、増えてる…？！
き…、気持ち悪い…ッ！！？
ミオは、この気持ち悪い『からあげくん』から逃げるように、家路へと急いだ。
ガチャ！ バタンッ！！
はぁ…、はぁ…。
何なのよ、もう…。
きっと疲れてるんだ、アタシ。
今日はシャワー浴びずに、早く寝よう。
……なんで？
ミオの机の上には、さきほど捨てたはずの『からあげくん』が置かれていた。
しかも、その隣にはチーズ味の『からあげくん』が置かれていた。
何よ…、これ…ッ！？
いやああッッ！！？
ミオは、ベッドの布団に包まり震え続けた。
部屋のどこかから、女のすすり泣く声が聞こえる。
ｶﾗｱｹﾞｸﾝ… ﾓｯﾄ… ﾄﾞｳｿﾞ…。
ねぇ、ミオさんも不登校になったって知ってる？
彼女も『からあげくん』の犠牲になったんだ…。
私、ミオさんの家にお見舞いに行ったんだけどさ…、
ミオさん、前より凄く太っててさぁ。もう全然あの頃の原型ないのよ。
で、ミオさん部屋を真っ暗にして呟いてたの…。
「早く食べ切らなきゃ……、『からあげくん』がどんどん増えちゃう…」 って。
そりゃあ、激太りしちゃったら人前に出られないよね。
都市伝説『からあげくん』…、恋する乙女を襲う、食の欲望。
食欲の秋…、皆様も『からあげくん』には気をつけていただきたい。
