……私にはね、夢があるんだ
……夢？
そう。この国をね、誰も悲しまない 最高の国のお姫様になるの
……それは、私も？
勿論だよ！ 誰にも悲しみなんて負わせない。 そんな国にしていきたいんだ
……誰も悲しまないなんて そんなことが出来るのかな
するんだよ。してみせる。 ……だから
しばらく、お別れだよっ
数年後
くそッ！待ちやがれ小娘！ 商品を堂々をパクるたぁいい度胸だ！
誰が待つか馬鹿者！ 私はこれを食べなければ飢えて 死んでしまう！
だったら金を払いやがれ！
出世払いだ！
万引きなんてする貴様に 未来なぞ無いわ！
すたこらさっさ
くッ！逃げ足の早い奴め！
姫様、今日の今後の予定ですが
把握しているわ。街の視察でしょう
ええ。その通りです。 ……それにしても姫様
なに？
街の視察程度でしたら、我々メイド隊 が代わりに遂行しても良かったのでは 無いでしょうか
分かってないわねステラ。 それじゃダメなのよ
……その理由は一体
私が直接見て納得しなければ 意味が無いのよ。よく言うでしょう、 "百聞は一見に如かず"って
そうなのですが……
私の野望を叶える為だもの。 私自身の徒労は惜しまないわ。 さあ、行きましょう
……
野望……ね
……ふん、此れ位で勘弁してやる
ぅ……女の子に暴力とか最低だな……
お前の蒔いた種だろうが。 これに懲りたらもう万引きなんて するんじゃねーぞ
……いたい
どさり
………
ぶっ倒れた。おかげさまで青い空が これでもかという程見えるわけで
どうして私がこんな目に 合わなければ行けないのか…… 空に問いかけてみたが返事はない。 広いのは表面だけだ
確かに万引きなんて悪い行為だ。 しかし、万引きやらそんな行為を せざるを得ない状況に私は追い詰められているわけで
お天道様はなんでも見ているってのは 強ち間違っていないのだろうか…… 少しくらい見逃してほしいものだ
あーもう、悲しくなってくるな畜生。 いっそこのまま飢えて死ぬか
ここ数日食事らしい食事を摂っていない。そろそろ栄養不足で死ねるか？それとも相当な物好きに拾われるか……
空腹と苦痛に襲われながら、 私は一旦意識を手放すことにした
誰にも悲しみなんて負わせない。 そんな国に────
何が……誰も悲しまない国だ……
嘘吐き…………
！
……寝言、でしょうか
ハッ！？
あ、起きた
………
……なにここ、天国？
残念ながら天国でも地獄でも ありませんよ
そうか残念だ。まだ死ねなかったのか
自殺希望者の方でしたか
いっそ殺してくれても私は構わない って思うほどにこの世界は嫌だ
なにか特別な事情をお持ちで……
まあ、問い正す真似はしません。 今姫様を読んで参ります
……姫様？
……行ってしまわれた
それにしても、ここは何処だ？ 金持ちっぽい部屋だが……
……ああお腹もすいた。 ごはんのひとつやふたつ出ないだろうか
姫様、こちらです
あ、戻ってきた
ありがとう、下がっていいわよ
はい
……さて
……
やっと会えたね、リサ？
……私の名前を教えた覚えは 無いんだがな
……と、ここまでが、数年ぶりに再会を果たした二人のお話である。
つづけ
