~とある教室の休み時間~
キーンコーンカーンコーン キーンコーンカーンコーン
「ねえねえ」
「……ん~? な~に~?」 ※読書中
「しりとりしよ!」
「…………やだ」
「ええ~いいじゃ~ん。やろ~よ~」
「……あんたさぁ、私が今何してるか分かっててそれ言ってんの?」
「うん! 本読んでるんだよね!」
「……喧嘩売ってるとしか思えないわね。いい? 本を読んでる時はね、誰にも邪魔されず自由で、なんというか救われてなきゃあダメなのよ。独りで静かで豊――」
「そんなことより、しりとりしようぜ!」
「後たったの2文字なんだから最後まで言わせなさいよ!!」
「ねぇねぇ~しりとり~しりとり~」
「……はぁ~もう分かったわよ……」
(ま、ベタベタだけどこういう時は「あの」お約束を使えばいいわね……)
「じゃあ、まずはルールの確認ね」
「いや、この歳になって今更しりとりのルール確認もないでしょ……」
「まぁまぁ、そう言わずに!」
「まず、最初の人が適当な単語を言って、次の人はその言葉の最後の文字から始まる単語を言う。それを順番に繰り返す」
「うん」
「で、同じ言葉を二回使うのは禁止!」
「……ホント何の変哲もないルールね」
「そう? じゃあこれで大丈夫?」
「ええ、大丈夫だからさっさとやりましょ」
「じゃあ、私からいくよ~。しりとりの『り』から始めて~。リンゴ!」
「五感(ごかん)。ハイ『ん』がついたから私の負――」
「ンジャナメ!」
「はあー!!?」
「ちょっと待ちなさいよ! 『ん』がついたら負けでしょ!? ていうか『ンジャナメ』って何よ!?」
「『ンジャナメ』はアフリカ中北部にあるチャド共和国の首都の名前だよ」
「アフリカ中北部!? ……よく分かんないけど、とにかく言葉の最後に『ん』がついたんだから私の負け!しりとりはこれで終わりよ!」
「いやいや、そんな事さっきのルール確認じゃ一言も言ってなかったじゃん」
「!? アンタまさかさっきのは……」
「フッフッフ……」
(クッ! 完全にしてやられた! 考えてみればこんなの使い古されてそうな手じゃない……)
(……まぁ、いいわ。最初に『ん』のつく言葉なんてそうそうあるはずないし……)
(こんなの時間の問題よ!)
「次は『め』からだったわね! 麺(めん)!」
「ンゴロンゴロ」 ※タンザニア北部の自然保護地域。詳しくは「ンゴロンゴロ保全地域」でググってください
「さすがにいきなりストック切れってことはないみたいね! 露店(ろてん)!」
「ンデベレ!」
「まだあるか! 練炭(れんたん)!」
「ンヴァラ~」
「適当に言ってるだけじゃないだろうな!? ライオン!!」
「ン・ガ・モ」
「――っ!? 木琴(もっきん)!!」
「ングルぅ~……」
「ルーチン!!」
「ンゴ!」
「極寒(ごっかん)!!」
「ンダリ」
「リン!!」
「ンメ!!」
「迷信(めいしん)!!」
「ンブンダ!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「んでんでんでwww」
「電信(でんしん)!!」
「ンバル・グラ~!」
「羅針盤(らしんばん)!!」
「え~と……。ンー。ンー……」
(!? よし! ここに来てついに悩み始めたぞ!!)
(これなら後もう少しで――)
キーンコーンカーコーン
キーンコーンカーンコーン
「…………」
「…………」
「もう休み時間終わりだね! あ~楽しかった。ありがとう! またやろうね~」
「…………」
「結局こんなオチかよ……。あ~私の貴重な読書時間が~……」
「……ていうか『ん』から始まる言葉ってどんだけあるのよ……」
~FIN~