『祝ってやる・・・』
女性の無機質な声でそう言われ、電話は切れてしまった。
俺は巷で噂の呪いの動画を見てしまった。
あの電話の後、しばらく謎の幻聴が聞こえるようになった。
おめでとう
ちゃんと式呼べよ
私には心当たりのないものばかりだった。
俺の命はあと一週間。
俺は、同じく呪いの動画を見てしまった人を探した。
そしてとある掲示板で、都内に通う女子大生と知り合う。
可愛い。
この子も呪いの動画を・・・。
俺は助からなくても、この子だけは何としても助けたい。
俺たちはお払いを受けに行く。
何言ってんだ、神社に決まってるだろ!
私は教会で見てもらいたい!
プロの霊媒師に何度も相談した。
一応念のため、災厄を振り払う指輪も揃えた。
わかりました。今度の日曜に除霊しましょう。
ではこの呪いのお札を貴方をよく知る人に配るのです。
呪いのお札を知り合いに送るのは気が引けた。
でも彼女を助けたい。俺は泣く泣く知り合いに送った。
私たち、除霊します。 場所日時は○○~。
除霊式が始まった。
白い衣装に包まれた俺たちは、親や友達に見守られながら除霊を受ける。
彼女の親はただひたすら涙をこらえていた。無理もない。娘が死ぬか死なないかの瀬戸際なんだ。
それではお二人を救う為に、清めのお米を!
俺たちに降りかかった呪いは、この米によって浄化されたのだ。
私たち、呪いから解放されたんだよね?
ああ、もう心配ないさ。
──俺たちは結婚した。
今ではあの呪いの動画に感謝している。
あの動画がなければ、俺たちはこうして出会わなかったのだから・・・。
ねぇねぇ、祝いの動画って知ってる?
知ってる、見た人は一週間後に結婚するやつでしょ?
そうそう、何でもブライダル業界が総力を挙げて仕掛けたものみたいよ。
そうでもして結婚させないと・・・、今ヤバイんでしょ?
結婚しない若者増えたからね~。
プルルルル・・・。
もしもし・・・。
『祝ってやる』