『嫌ペンション』

ええと…ここでいいのかな?

いらっしゃいませー! ご予約いただいていた、坂井様ですね

なんでわかったんだろう…

あ、もしかして  「なんでわかったんだろう」 とか思ってたりします?

す、するどい…

実は、勢いでペンション開いたのはいいんですけど、ぜんっっっっぜんお客様がいらっしゃらなくって、もうすっげーヒマヒマしてたところにぽっと予約が入ったものでもーすっげー嬉しくて憶えてたんですよ!っていうかそうしなくても普通に本日のご予約は坂井様だけなので人が来たらそいつだ!みたいなところはあったんですよね、あ、そうだひとつ質問よろしいですか?

なんだこのマシンガントーク!っていうかさりげなく今すごいこと言ってなかったか?!

なんでしょう?

なんで一人でペンションなんか来ちゃってるんですか?

笑顔で聞くことじゃねええええええええええ!!!!!

ってかさりげなく、どストレートにひどいこと聞いてないかこいつ?!

す、すみません、帰ります

うぅぅ…け、経営が…

落ち込むのかよ!!!

っていうか落ち込むくらいならそんな質問しないでくれよ!!

も、もし彼女とかいないんだったら…その…

な、なんだこのときめきを感じさせる展開…

おもっくそ笑ってやろうと思いまして!

やっぱ僕帰ります

ふふーん、いいのかなぁ…? そんな簡単に帰っちゃって…

こいつ、もしかしてすっげーめんどくさいヤツなんじゃ…

今ならこのペンションに隠された極上の謎を宿泊代のみで解き明かすことができるというのに…

な、謎ってなんですか…?

ふふーん、飛びついてきたねボウヤ。

誰がボウヤだ誰が。

実はあまりにも客が来なくての。 暇をもてあましておったのじゃが、ただもてあますだけの儂ではないのじゃ。

ロリババァキャラになってるーー!

せっかくじゃから、この屋敷に複数の謎を隠しておいたのじゃ。

あの、なんでそんなころころキャラ変わるんですか…

システムで用意されておるキャラグラにあった表情でしゃべっておるだけじゃ。 他意はないぞ。

それだけ?!

…それで、じゃ。 屋敷に隠された3つの謎を全てぱーへくとに解き明かした者には、すぺさるなプレゼントを用意しておいたのじゃ。

せいぜいがんばってない知恵を絞ることじゃな。

……めんどくさいんで帰ってm

却下。

なんで?! 僕客だよ?!

この屋敷に足を踏み入れた者は、謎を解かずして外へ出ることはかなわぬ。

なんだその脱出ゲーム設定!

脱出ゲームじゃからの。

システム的にアリなの?!

知らぬ。

知らぬ、って…。

何事もやってみなければわらかぬものじゃろう? 儂も試行錯誤を繰り返している途中じゃ。

もしかして僕、試されてる?

北海道ばりに試されておるのう。 なにせこのストーリーすらも試作品じゃからの。

日の目を見ることはあるんだろうか…

まぁよい、とっとと謎解きをするのじゃ。この屋敷から無事脱出したければの。

……なんとなく一人旅に出たくなって安くてよさげなペンション見つけて喜んでたのに…なんだこれは…

あ、そうだ

なんじゃ?

お名前、聞いてもいいですか?

儂の名は「ひとみ」じゃ。

へぇ…ひとみさん、か…かわいい名前ですね。

嘘に決まっておろう。戯けが。 ちなみに第一の謎は儂の本当の名前を探すことじゃ。

ええええ?! いきなり難問っぽくないっすかそれ!

なぁに、簡単なことじゃ。 儂の私物と思しきものをかたっぱしから漁りまくればよかろう。

ただし!!

た、ただし!?

一度でも間違えば貴様の命はないものと思え。

なにそのサドンデスルール!!

このぐらい緊張感がなくては面白くないであろう?

なんかよくわかんないけど、ひとみ(仮)さんが楽しそうだからまぁいいか…。

じゃあ、なんかそこらへん探してきます。

うむ。 楽しんでまいれ。

ひとみ(仮)さんは奥へ引っ込んでしまった…。

さて、探すといってもどこを探したらいいんだろう…? まずはこの部屋からかな…?

(がさごそ)

……うーん、名前が書いてありそうなものはないなぁ……。

あれ、これは…手紙?

手紙なら、宛名とかで名前がわかるんじゃないか?

えーと宛名は…

進藤仁美、様…。

ひとみであってるじゃねぇかよ!!!

ついでだから中身も確認してみよう。

坂井 洋一様  この度は当ペンションの謎解きツアーへご参加いただきまして、ありがとうございます。  ツアーの概要について説明させていただきます。  このツアーは「ペンションに隠された3つの謎を解く」という単純明快なアドベンチャーツアーです。  ペンションに隠された3つの謎は、   ・オーナーの本名   ・本日の夕飯メニュー   ・お客様の部屋の鍵 でございます。

それらを全て集め、オーナーのところまでお持ちください。  なお、この封書の宛名である「進藤 仁美」は私の本名ではありません。あしからず。  それでは、お時間の許す限り謎解きをお楽しみください。

なんだとーーーぅ!!

別に知りたくもなんともないけどこうまで隠されるとすっげー知りたくなってきたぞひとみ(仮)さんの本名!!!

本名と、夕飯のメニューと、鍵か…。 とりあえず別な部屋に行ってみよう。

まずは…夕飯のメニューを確認してみようか。

ここなら、夕飯のメニューがわかるんじゃないかな…。

わ、わぁ!!

誰?!

あ、も、もしかして、坂井、様、で、いらっしゃいますか…?

はい、そうですが…

ご無礼をお許しください。

私、当ペンションの執事、瀬庭と申します。

せば…さん、ですか。

左様でございます。 ちなみに下の名前は寿地庵と申します。

せば、すちあん…。

ギャグか?

して、坂井様。 このようなところへ、どういったご用向きで?

あ、いやあの、謎解きをしてまして。

お嬢様…また妙な事を…

え、お嬢様?

お嬢様はさる財閥のご息女でいらっしゃいます。 幼少よりお世話させていただいておりますが、少々トリッキーなところがございまして…

まぁそこが魅力なんですけどね!

こいつもめんどくさいやつだーーー!

ですが、さすがに「瀬庭、ペンションを経営しようと思うの」と言い出した時には本当にもうどうしようかと…。

あの、全然お客が来ない、って言ってましたけど…。

来るわけがないのでございます! こんな、客を客とも思わないような、お嬢様の暇つぶしオンリーのペンションなんざ!!

実は坂井様が初めてのお客様でございます。

ええええ?! というか、やっぱり?! というか!!

ですので、私もどうおもてなしをしてよいのかわかりかねます。

うーん…あ、そうだ、あの…

はい。

今日の晩御飯って、なんですか?

本日の夕飯、でございますか? でしたらこちらの

メニューでございます。

おおお!! これで謎がひとつ解けた!!

なっ!! も、もしかして、お嬢様の出された謎というのは…

ええと、ひとみ(仮)さんの本名と、今日の夕飯のメニューと、僕の泊まる部屋の鍵を探してこい、って…。

なんという…!!

あ、あと知ってると思いますけど、ひとみ(仮)さんの本名と、僕の部屋の鍵ください。

何があってもお嬢様の本名が「如月雪乃」だとは漏らしません……!!

へぇ、雪乃さんっていうんだ。

なっ…! ど、どうしてそれを…!!?

(ちゃりん)

あれ、これって…

わ、お客様の部屋の鍵が…!!

ええと…じゃあ、僕はこれで…。

お嬢様、お許しください…!!

なんか意外とあっさり集まっちゃったけど…。

ほぅ、存外早かったの。

なんか、執事さんがぼろぼろ落としてましたけど。色々と。

ふむ…瀬庭の阿呆は後で折檻じゃの…。

ごめんなさい、瀬庭さん…。

さあ、これでペンションから脱出できますよね!

はい、坂井様のお部屋は2階のつきあたり、ひつじの間です! あ、こちら鍵です!

これさっき僕が持ってきたやつじゃないですか!

本日の夕飯はこちらです、お好きなものをお選びくださいね!

これもさっき僕が集めてきたやつじゃないですか!!

あ、申し遅れました私、当ペンションのオーナー、如月と申します!

瀬庭ー、お客様をお部屋へご案内してー!

えええええええええええーーー!!

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公開日 2013/04/21 13:34 再生回数 26

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