私は、籠の中の鳥のよう。
私は物心がついたときから今日まで、 自分の家から一歩も外に出たことがない。
パパとお兄ちゃんの方針で、私は読んで字の如く箱入り娘として育てられた。
私が生まれてすぐにママが死んじゃって、それもあって過保護になっちゃったんだと、私は思ってる。
もちろん学校にも行かせてもらえなかったから、勉強を教えてくれるのはもちろんパパとお兄ちゃん。
文字の読み書きや計算とかを教えてくれたけれど、外の世界のことについては全然教えてくれなかった。
私は幼い頃からパパやお兄ちゃんに 「外は怖いところだから、絶対に出てはいけない」と言われ続けてきた。
でも、パパやお兄ちゃんは普通に外の世界に足を運んでいて、その度にズルイと駄々を捏ねていた。
だから一度だけ屋根裏から外に出てみようと思って、脱走を試みてみたんだけれど、
寸前でお兄ちゃんに見つかって脱走失敗、夜にパパとお兄ちゃんに鬼のように怒られて、沢山殴られた。
特にパパは目が血走ってて、本当に恐かった。あの日から、私は脱走を試みようとはしなくなったわ。
そうそう、ちなみに私の私服は全部死んじゃったママのお下がりなの。
パパやお兄ちゃんに外で買ってきて！ って言っても「女物は分からん」って聞く耳を持たないの！
おかげで下着もお下がり。サイズからして、ママは私よりもおっぱいが段違いで大きかったみたい。
・・・本当に、ママは私のママだったのかしら？
とにかく私は、今日まで外の世界についてほとんど知らずに生きてきた。
唯一知っているのは、私の部屋の窓から見える、昔絵本で見たのと同じ青い空が広がっているということだけ。
その青い空を自由に飛びまわる鳥たちがとてもうらやましい。私も外を自由に歩いてみたい。
私は１７歳の誕生日に、外の世界を見たいと、パパとお兄ちゃんに伝えた。
二人はもちろん猛反対したわ。 お父さんなんか、あの頃と同じように、目が血走ってた。
でも、私は退かなかった。
私、籠の中の鳥はもう嫌なの！
私だって、もう１７歳よ！ これから先の人生、私が決める権利があって当然でしょう！？
もう、こんな家の中だけの世界で生きてくなんて、耐え切れないの！！
お願いよパパ！ お兄ちゃん！
大きなくまのぬいぐるみもいらない！
うさぎのぬいぐるみは、最初から欲しいだなんて言ってない！
私が欲しいのは、 外の世界を知ること！
お願いパパ！ お兄ちゃん！ 私を鳥篭から解放して！ 自由に、羽ばたかせて、お願い…！
私は涙ながらに思いのたけを二人にぶつけた。
分かってる。二人は「ダメだ」と言うことを。今までそうだったように、これからも二人の答えは変わらない。
でも、私はどこか期待していた。 １７歳になって、ある程度は自由の身になれる…。
そんな幻想を抱いていた…。 私は、誕生日が来るたびに泣いていることを、このとき初めて実感した。
そんな誕生日から数ヵ月後のこと...。
私の鳥篭の中の人生は、突然幕を閉じる事となった。
突然、私の部屋に大勢の男の人たちが押し寄せてきた。
男の人たちは皆私をひと目見た後に「女だ...」「本物の女だ...」と、呟き始めました。
そして、その中の１人が突然雄たけびを挙げたと同時に、一斉に私に襲い掛かってきて...
１人の男の人が、私の身体を汚しながら教えてくれました。
この国は１７年前から女性だけに感染するウィルスの所為で、女性の数が激減、絶滅してしまったこと。
それが原因で人口がみるみる減っていき、国の存亡が危ぶまれていること。
そして、性の捌け口を失った男たちが後を絶たず、性犯罪が横行しているということ。
私は、この国で唯一残った女性。外との関わりを断ったおかげで、ウィルスに感染することなく、今日まで生きてこれた。
そんな私の存在が公に知れ渡れば、このような結果になることは、目に見えていた。
だから・・・ パパは・・・お兄ちゃんは・・・
わたしのために・・・
初めて感じた、外の世界。 １７年間、窓からしか見ることのできなかった外の世界。
そんな世界で、私は、虚ろな目に涙を溜め、微笑を浮かべながら、本能のままに、時を忘れて、汚され続けた。
