………ただいま
センパイ！ 部長はどうしたんすか！？
………
あの後、部長から電話があった
「美術部のみんなには 云わないで欲しい」
必死に振り絞った声だった。
とても切実な願いだった。
………ああ、 ただの体調不良だってさ
一応、入院はするみたいだけど 一週間で戻ってくるっぽい
なんだー…良かったッス
体調不良って、セーリっすかね！？
………ああ。 そうだと、いいな
ちょっとぉ！ アンタさいてー！！
男なら譲れない！
捕まれ！ いや、捕まえる！！
平和だ、本当に。
周りと僕との圧倒的な違和感。
焦燥が増していく一方で。 彼女の寿命は減っていく一方で。
僕はなにも出来ない。
こうしてヘラヘラと。 不謹慎にも不本意にも 誤摩化しの笑いをし続けるだけだ。
一週間が経った。
部長は退院した。
別に奇跡が起こって 病が治ったわけではない
まだ発作がこなければ常人と 同じように過ごせる。 と医師が言っていた。
問題はその『まだ』が いつまで続くのか。
こんにちわ
あ、こんちゃー
ねぇねぇ！ そっぽ向かないでー！
そうやって。 無理矢理はしゃいで僕を 元気にさせようとしたって。 無駄だぞ
だって… お前が無理してるじゃないか…
「「こんちわー！」」
あ、こんにちわー
一瞬だけ、部長は僕を睨んだ
ヘコんでんな。 ということだろうか
でも
そんなの無理に決まってる……
……センパイ？ どうしたんすか、 元気無さそうっすよ？
笑えない…笑えない
それでも……せめて今は…
笑え
ああ、大丈夫だ
今日 元喜先生に怒られちゃってさー
あの元喜先生に怒られるなんて よっぽどっすよ！
ははは……
……………
見慣れたニンマリとした 彼女の笑いを見ても
ただ、 その儚さに打ちひしがれるばかり
