イヅル先生! キミP!で、ワケわからん三国志作ってる暇があったら、原稿書いてください!
わ、わかってるよ、編集の猫田さん。ちゃんと原稿の方は進んでるから。
(ぼくの名は、引弦イヅル。大ヒット作「IS」の作者なんだ!)
ほんとに頼みますよ! 社の上のほうでは、「イヅルを切れ」なんて話が出てるんですから!!
ええぇっ! マヂですか!? 勘弁してよ~!
ほんと、頼みますよ。
(かきかきかき……)
どうですか? 進んでますか?
う、うーん、どうしても萌えシチュのアイディアが思いつかないなあ……。
しょうがないですねぇ。ちょっと待っててくださいよ。
?
お待たせ!
うげっ! ど、どなた!?
ぼくですよ、猫田です。
な、なにやってんすかッ!?
いや、最近男の娘に目覚めちゃって、女装してるんですよ。
似合うでしょ?
き、きもいよ、猫田さん!
ほら、見た目はかわいい女の子だから、どんな萌えシチュでも対応できますよ。
うげぇー!
ほら、おっぱい触っても、いいんだよっ!
わ、わかった! わかったから! 猫田さん! ちゃんと書きますからッ!
そう、それでいいんですよ、イヅル先生。
(かきかきかき……)
ピーンポーン!
『宅急便でーす! お荷物お届けに参りましたぁー!』
お! きたきた!
なに注文したんですか?
フィギュアだよ!
もう! 仕事中なんだから、オモチャは後にしてくださいよ!
いや、フィギュアがないと、書けないシーンがあるんだ。
戦闘シーンなんだけどね……。
この、アクションフィギュアが、役に立つのさ!
じゃーん! ”武装○姫”って言うんだけどね。
せ、先生……、イ○フィニットのアイディアってもしかして……。
ち、ちがうよ! これはアイディアを生かすためのものであり、パクリなんかじゃないよ!
……(こいつ、やっぱり)。
(かきかきかき……)
ああ、なんかお腹すいたなあ。
もう、お昼どきですね。 ここで休憩入れましょうか。
おおう! そうしよう!
なにか食べたい物ありますか? 買ってきますよ。
じゃあ、駅前のトンカツ和辛のヒレカツ弁当がいいな。
わかりました。買ってきますね。
たったったっ……。
……。
……行ったな。
……もういないな?
……よしっ!
逃げよーーーっと!! やってらんねーよ! まったく!
どたどたどた……
先生、買ってきましたよー! ……って、あれ? いない!
に、逃げたな!! あいつぅーーーッ!!!!
原稿は! 原稿はどこまで上がっているんだ!?
え!? 原稿用紙たったの3枚!?
ぐはあっ! イヅルめ! 手を抜きやがって!!
もう、こうなったら、あの計画を実行するしかない!
(ピッピッピッ)
(トゥルルルル……)
「あ、もしもし、編集長ですか? イヅルの奴、予想通り逃げました ええ、はい。
それで、例の計画を実行に移したいんですが……、はい、よろしくお願いします」
ピーンポーン
お、来たな?
あのう、連絡を頂いた斉藤です。 猫田さんはこちらでよろしいでしょうか?
よく来てくれたね。 さあ、上がって。
きみは、わが社のWF文庫大賞で、佳作入選した、斉藤君だよね。
はい。
キミの作品を推したのは、ぼくなんだ。 荒削りだけど、いい文章書くね。
あ、ありがとうございます。
それでね、キミにぜひ、頼みたいことがあるんだ。
何でしょうか?
キミに ”2代目イヅル” になってほしいんだ!!
えっ! おっしゃってる意味がわかりませんが……。
襲名だよ、襲名。 落語家とか、歌舞伎役者にあるだろう? それと同じ。
ぼくにイヅル先生の代わりになれってことですか!?
そう。その通り。
ムチャ言わないでください。 ぼくなんか、才能ないし……。
大丈夫、大丈夫。 キミなら出来るって。
”2代目イヅル”になって、「IS」の続きを書いて欲しいんだ。
そ、そんな、無理ですよ。 佳作入選のぼくじゃ……。
いいって。 イヅルの文なんて厨房レベルなんだから。
キミのほうがいいもの書けるよ。
だから、頼むよ。 キミなら出来る!!
そこまでおっしゃってくれるなら……。 やって、みます……。
数週間後。
本屋店頭 ライトノベル新刊発売日。
あれ? 「IS」の新刊じゃね?
え? ほんと!?
帯に「最新巻!」って書いてあるから、間違いないね。
なぁ~んだ! ネットの書き込みなんて信用できねえなあ。
なんか、特典小説落としたとか、言動が問題で干された、なんて噂されてたのにな。
ほんと、そうだよね。 イヅル先生を悪く言う奴らばかりだもんね。
まったく、イヅル先生の読者放置プレイには、まいったぜ!
ほんと、イヅル先生ってば、読者をじらすの上手いんだから。
イヅル最高ーーー!!!!
イヅル万歳ーーー!!!!
(クックックッ。計画に問題は無い)
この作品はフィクションであり、実在のライトノベル作家さんと作品は、一切関係ありません。 ……なんつって。