俺(くそっ、何もねぇじゃねぇか!)
嬢「…あ、あの、…誰?」
俺「え」
嬢「えっ…?」
俺「もしかして、ここの家の人?」
嬢「…誰、ですか?」
俺(マズいな…。金目のものもないし、この子でいいか)
嬢「えっと…、何して…」
俺「ちょっとおとなしくしててくれよ」
嬢「きゃっ!」
俺「…ふぅ、あとはこの鞄で運ぶだけだな。悪く思うなよ、お嬢ちゃん」
嬢「……」
・・・・・・
俺「まだ起きないのか?息は…してるな」
嬢「ん、んん…。あれ、ここ、どこ…?」
俺「先に言っておく。泣き喚いたり、叫んだりしたら、その場で殺す」
嬢「っ!?…わかり、ました…」
俺「お前が気を失っている間に、俺の家まで連れてきた。逃げようなどとは、考えないことだな」
嬢「あの、あなたは…、どうしてこんなことを…?」
俺「せっかく空き巣にいったのに、金目のものは何一つない。と思ったら、可愛いお嬢ちゃんがいたからな。拐わせてもらった」
嬢「そんな…。私は、お家に帰れないんですか?」
俺「当然だ。死ぬまでここにいろ」
嬢「…うっ…ひっく…」
俺「泣くなと言ったはずだが?」
嬢「…泣いて、ないです」
俺「ふん…。日用品はあらかた揃えておいた。それで生活しろ」
嬢「はい…」
俺「それじゃ、俺はしばらく外出する。昼飯は冷蔵庫に入ってるから、勝手に食え」
嬢「……」
俺「隠しカメラと盗聴器を仕掛けてあるから、お前が逃げようとすればすぐにわかる。無駄な足掻きはしないことだ」
嬢「…はい」
・・・・・・
俺(完璧だ。扉は内からも外からも、鍵がなければ開けられない。よって玄関からは出られない)
俺(高層マンションの7階の部屋だし、窓からの脱出も不可能。電話も置いてないため、通信手段もなし)
俺(監視していると言っておけば、目立った動きもしないだろう。これこそ、完璧な鳥籠!)
友「何ニヤニヤしてんだよ。なんかいいことでもあったのか?」
俺「悪い、そんなにニヤついてたか?」
友「そりゃあもう、気持ち悪いほどに」
俺「まぁ、たまにはそういう時もあるさ」
友「今日放課後空いてるか?俺部活オフになったからさ、ゲーセン行かね?」
俺「悪いな、今日は無理だ」
友「何だよ、つれないな。もしかしてあれか、彼女できたのか?この野郎」
俺「んな訳ないだろ?バイトだよバイト」
友「やっぱ一人暮らしは大変か?」
俺「まぁな。でも、その分楽しみもあるけどな」
友「女連れ込めるしな」
俺(何故分かった!?)
俺「お前はそういうことしか考えてねぇのかよ」
友「ははっ、お前だって…。おぉ、もうチャイムか。じゃ、またな」
俺「おう」
・・・・・・
俺「おい」
嬢「…何、ですか?」
俺「これはどういうことだ?」
嬢「何って、チェーンを掛け…」
俺「見りゃわかる。外せと言っている」
嬢「嫌、です。…入ってこないで、ください」
俺「なら仕方がない。お前はそこで餓死しろ」
嬢「……」
俺「最初からそうすればいいものを…」
嬢「…どうしたら、帰してくれますか?」
俺「諦めろ」
嬢「私を、どうするつもり、ですか…?」
俺「そうだな。今は特に何も考えてない。愛玩動物くらいには、なってもらうか」
嬢「…ペット、みたいなものですか?」
俺「まぁ、そういうことだな」
嬢「私、人間の、女の子、なんですけど…」
俺「知ってる。ヒトとしては扱ってやるから、安心しろ」
嬢「ペットだって、逃げることはありますよ?」
俺「それは飼い主の不注意が原因だ。俺から逃げられるとでも?」
嬢「……。ここ、結構高いですよね…」
俺「7階だからな。景色はいいだろ?」
嬢「まぁ、そうですね…。そろそろ、夕御飯を、いただけませんか?」
俺「まだ早い」
嬢「ですけど、私もう、お腹ペコペコで…」
俺「…ったく、しょうがねぇ」
嬢「あ、ありがとう、ございます…」
俺「飯作ってやるから、先に風呂入ってな」
嬢「はい。…あの、覗いたり、しませんよね?」
俺「はぁ…、お前の未熟な体なんて、わざわざ見ようと思うか?」
嬢「そう、ですね…。ごめんなさい…」
俺「いいから早くいってこい」
嬢「は、はい…」
俺(さて、夕飯作るか)
俺(それにしても、やはり怯えているようだな。別にそれ自体に問題はないが、面白味には欠けるな)
俺「おい、いつまで入ってんだ?冷めるぞ?」
嬢「い、今出ますっ」
俺「まぁ、焦んなくてもいいけどな」
嬢「ごめんなさい、遅くなりました」
俺「あぁ、別にいいけど」
嬢「…あなたは、食べないんですか?」
俺「俺はもう食い終わった」
嬢「そ、そうでしたか…」
俺「ほら、食えよ」
嬢「はい…。…ん、…美味しい、です」
俺「そうか、それはよかった。じゃ、俺は風呂入ってくる」
嬢「はい」
俺(ふぅ。そういえば、あいつが入った後なのか…。…まるで変態みたいだな)
俺(…ん?なんか人影が…)
俺「おい、何して…」
嬢「ひぇっ!?なな、何も…?」
俺「落ち着け。…お前、変態だったのか?」
嬢「ち、違いますっ!鍵を…、いえ、何でもないです…」
俺(なるほどな。鍵を探してたって訳か。だが、そう簡単に見つかっちゃあ、面白くないだろ?)
俺「そうかそうか、変態だったのか。なら仕方ないな」
嬢「ち、違うんですぅ~」
俺「しょうがないな、今日は裸で添い寝してやるよ」
嬢「いやぁぁぁあ!」
俺「叫ぶほど嬉しいのか。そんなに喜んでもらえて何よりだ」
嬢「嫌ですっ!やめてください~!」
俺「冗談だ。なかなかからかい甲斐があっていいな」
嬢「うぅ~、意地悪、ですね…」
俺「今頃気付いたか」
・・・・・・
嬢「私、ホントにずっとここで暮らすんですか?」
俺「そうだ。ずっと、俺と一緒だ。逃がさないぜ?」
嬢「お母さん…、お父さん…」
俺「もう忘れろ。二度と会うことはないんだからな」
嬢「そんなぁ…」
俺「泣くなよ?泣いたら、死ぬより辛い目に遭わせてやるからな?」
嬢「ひどい、です…。泣くくらい、いいじゃないですかぁ…」
俺「……」
嬢「うぅ…ぐすっ…」
俺「…もう寝ろ」
嬢「…はい。そう、します…。おやすみ、なさい」
俺「お、おやすみ…」
・・・・・・
俺「ふぅ、朝か…」
嬢「…すぅ…すぅ…」
俺「よく寝てるな…。少し、やり過ぎたかな。でも、俺はもう決めたんだ。この子と一生を共にするって」
俺「拐うと決めた時から、覚悟はできていたしな。まぁ、この子にとっては、いい迷惑だけど…」
嬢「ん、ん~」
俺「おはよう」
嬢「お、おはよう、ございます。…って、えぇっ!?な、何してるんですかっ!?」
俺「言ったろ?泣いたら死ぬより辛い目に遭わせてやるって」
嬢「寝起きに頭を撫でられるのが、ですか?」
俺「そんな生易しいものだと思ったら大間違いだ。これからたっぷりと、お前を可愛がってやる」
嬢「そ、そんな…」
嬢「あ、あんまりじろじろ見ないでくださいよぉ…」
俺「愛らしい体だなぁ、と思ってさ」
嬢「昨日は、未熟な体なんて、見たくないって言ってたじゃないですか」
俺「それはあれだ、百聞は一見にしかず、ってやつだ」
嬢「実際に見てみると…、ってことですか?」
俺「あぁ。わりと綺麗な体してるな。肌は白く透き通っていて、ほどよくハリがあり、なんといっても柔らかい」
俺「それと対照的な、黒く艶やかな長い髪も、可愛らしい」
嬢「きゅ、急に、何ですか…///」
俺「胸は控えめだが、くびれが絶妙なカーブを描き、カーブといえば尻のラインもまた見事」
俺「そしてスラリと伸びた脚。全体的に、バランスよく、整っている」
嬢「あ、ありがとう、ございます…///」
俺「朝飯の用意はしてあるから、自分のタイミングで食え。あ、あーんしてやってもいいぞ?」
嬢「じ、自分で食べられますっ」
俺「口移しでもいいが…?」
嬢「い、嫌ですっ!絶対にっ」
俺「そんな強く拒否しなくても…。冗談なのにな…」
嬢「今日、天気いいですね」
俺「そうだな。どこか出掛けるか」
嬢「いいですね。連れてってくださいよぉ」
俺「ついでに逃げよう、なんて、考えてないよな?」
嬢「ま、まさかぁ…」
俺「そうか、ならよかった」
嬢「ほらほら、行きましょう?」
俺「そう急かすなって」
・・・・・・
嬢「で、なんでゲームセンター何ですか?天気もいいんですから、普通外に行くものでしょう?」
俺「生憎、普通じゃないんでな。それに、いい天気の日は、ガキが少なくていいからな」
嬢「そ、そんな理由で…」
俺「お前、金は…、ないよな?」
嬢「はい…」
俺「しょうがねぇな、ほら、これくらいあれば、十分遊べるだろ」
嬢「えっ、い、いいんですか!?こんなに…」
俺「いいっていいって。気にせず遊べ。溜まってる鬱憤を、少しは晴らしてこい」
嬢「は、はいっ!」
俺(さて、俺は監視しつつ、レーシングでもするか)
嬢「あ、あの…」
俺「ん?何だ?」
嬢「いえ、その…、ここのゲームって、得意なんですか?」
俺「まぁ、それなりに」
嬢「それじゃあ、UFOキャッチャーとかも、ですか?」
俺「そうだな。得意な方ではあるぞ」
嬢「その、それじゃあ…、えっと…」
俺「何だよ?」
嬢「…あれを、取ってほしいんです」
俺「あれか…。自分では、やったのか?」
嬢「はい…。ですが、全然…。先ほどいただいたのも、もうこれしかなくなってしまって…」
俺「どうしても、あれがほしいのか?」
嬢「…はい」
俺「はぁ…。しょうがねぇな、やってやるか」
嬢「あ、ありがとうございます!」
俺「……」
嬢「……。あっ!」
俺「…よし。ほらよ」
嬢「ほ、本当に、ありがとうございます!」
俺「いいよ、これくらい」
嬢「えへへ~///」
俺「って聞いてねぇし。ま、いいか。笑ってくれたし」
俺「少し休憩しようか。飲み物買ってくるけど、何かいるか?」
嬢「いえ、お心遣いだけで、十分です」
俺「そうか…。無理すんなよ?」
嬢「大丈夫です」
・・・・・・
男「お嬢ちゃん、こんなところで何やってんの?」
男「一人かい?お嬢ちゃん」
嬢「いえ、あの…」
男「俺たちと遊ぼうぜ?」
男「たっぷり楽しませてやるからよ」
嬢(嫌っ…!また誰かに拐われる…。誰か、助けて…!)
俺「おい、お前ら。俺の女に手ぇ出すんじゃねぇよ」
嬢「……っ///」
男「へぇ、こいつ、お前の女なわけ。ロリコンかよ」
男「キモッ。おい、行こうぜ。ロリコンがうつる」
俺「大丈夫か?」
俺(っていうかあいつ、友、だよな…?)
嬢「はい、私は何とも…」
俺「そうか、よかった…」
嬢「あ、あの、ありがとうございました!」
俺「気にするな」
嬢「えっと、そのぅ…、ロリコン、なんですか?」
俺(やめろ、そんな目で俺を見るな)
俺「それは違うな」
嬢「その、お、俺の女に、手を出すな、というのは…///」
俺「わ、忘れろっ///」
嬢「そう、ですか…」
俺「でもいつか、お前が俺の女になってくれたら、いいのにな…」
嬢「えっ…?」
俺「俺は、お前のことが…。何でもない、妄言だ」
嬢「…でも、私…」
俺「いいって、なにも言うな」
嬢「…わかり、ました」
俺「さて、今日はもう帰るか?」
嬢「もう帰っちゃうんですか?」
俺「お、やる気だな。いいぜ、とことん付き合ってやる」
嬢「ありがとうございますっ」
俺「そうと決まれば、さっさと回るぞ。時間になったら、お前は出されちゃうからな」
嬢「そ、そうなんですか…」
俺「あぁ。だからそれまでに、目一杯遊んでおこう」
嬢「はい!…ところで、さっきから何を見てるんですか?」
俺「いや、あの子可愛いなって…」
嬢「……っ!」
俺「痛っ!な、何で脚踏むんだよ?」
嬢「あっ、踏んじゃいました?ごめんなさい」
俺「いや、わざとだよね?絶対わざと踏んだよね?」
嬢「そんなわけないじゃないですか。ほら、早く回りましょう?」
俺「わ、わかったよ…」
嬢「あ、プリクラ撮りましょうよ?」
俺「いいぜ。…なんか機嫌いいな」
嬢「そんなことないです。別に、何もいいことなんて、ありませんでしたから」
俺「そのわりに、眩しいくらいの笑顔なのは何故だ?」
嬢「ほらほら、もうちょっとくっついてください。はみ出しちゃいますよ?」
俺「俺の質問は無視かよ。…いいのか?こんな近くて。これじゃあまるで…」
嬢「もう、カメラ見てくださいよ」
俺「わ、わかった」
嬢「あははっ、楽しかった」
俺「さて、もう時間だし、帰るぞ」
嬢「わかりました。…今日は、その、ありがとう、ございました」
俺「楽しんでもらえて、何よりだ。また来ような?」
嬢「はい!」
俺「可愛いな、お前は」
嬢「…ありがとう、ございます///」
俺(俺がお前を、幸せにしてみせる!)
・・・・・・
友「ちっくしょう…あいつ、やっぱり彼女できてたんじゃねぇか」
完