ゴロゴロゴロ……!
やばい…! お腹の調子が…ッ!?
どこかにトイレ無いかな…。
……。
…仕方ない。この学校のトイレ借りるか…。
誰もいない…。
今日は土曜日だったのが、不幸中の幸いだったな…。
もし、生徒に見つかったら、不審者として警察に突き出されるからな…。
さっさと済ませて、ここを出ていこう。
…にしても、トイレはどこにあるんだ…?
ゴロゴロゴロ……!
このままじゃ…、う…ッ!
…やっと見つけたぞ、この野郎…っ!
どれだけお前の事を捜してしたと思って…。
ゴロゴロゴロ……!
…いかん。限界だ。
タッタッタッタ…!
キィ……。バタンッ!!
ふぅ…。間に合って良かった…。
……。
トイレに必死だったから、気づかなかったが…。
このトイレ…、何だか薄気味悪いなぁ…。
何だか幽霊でも出そうな…。
カツ…、カツ…。
誰かの、足音…ッ?
今日は土曜だから、学校には誰もいないはず…。
まさか…、幽霊ッ?!
カッ…。カッ…。カッ…。
俺の入っている個室に近づいてる…ッ?!
カッ…。
…俺の個室の前で、足音が止んだ…ッ?!
く…来るなら…、…来いッ!!!
…。
や…、やっぱり怖いよォォォ!!!
コン…。コン…。
ひィッ!!?
か…、勝手に学校に忍びこんで…、…ごめんなさぁいッ!!
…。
うえさま…。うえさま…。
…ッ?!
うえ…、さま…?
うえさま…。うえさま…。
いらっしゃいましたら、ドアを3回ノックしてください。
…へっ?
…。
ほらぁ、やっぱりィ!
トイレの上様なんて、いないじゃないの!
いるよ!
いるんだったら、いるのッ!!
やっちゃんのやり方が下手なだけだよッ!
そもそも、トイレの上様って何なのよ? 神様じゃないの?
……。
まう、わかんない☆
…私、帰っていいかなぁ?
こんな下らないことに付き合ってられないんだけど…。
ちょ…ッ!?
ちょっと待ってよォ…。
…あッ! トイレの上様はねッ! どんな質問にでも2択で答えてくれる…、
お化けなんだよッ!
(この子…、今考えたわね)
…都市伝説みたいなもの?
…そっ、そゆこと!
YESならノックを1回、NOならノックを2回してくれるんだよッ!
さっきは、たまたま上様が不在だっただけで…。
じゃ…、じゃあさ! 次、あたしがやるから!
やっちゃんは、まうの後ろで見ててッ!
(この子は、どうして嘘の都市伝説をでっちあげてまで、私をこんな所に……。)
(…、まさかッ!?)
(…ドッキリね。
そういえば、今日は私の誕生日…ッ!
だから私にサプライズパーティを仕掛けようと、こんな所に連れてきたんだわ…!
…ノってあげましょう。)
お願いだから、まうを一人にしないでよ…。
……。
…あと一回だけよ。
やったあッ☆
(どのようにして、私を驚かせてくれるのか…、楽しみだわ…ッ)
…何だか、よくわからないが、
要するに、彼女らは「トイレの上様」という都市伝説を検証しに、ここへやってきた訳か…。
下手に反応したら、変質者として通報されかねない…。
彼女達には悪いが、ここはだんまりを決め込もう。
……。
じゃ、じゃあ…、やるね?
コン…。コン…。
うえさま…、うえさま…。
いましたら、ドアを3回ノックしてください。
(個室の中に、バースデーケーキとプレゼントを持った人が待機してるのね?
あなたの考えてることが、手に取るようにわかるわ…ッ!)
コン…。コン…。
……。
コン…。コン…。
(ごめんよ…、ごめんよ…)
……。
…いないねぇ。
そのようね…。
(何やってんの? 中の人、早く応答しなさいよ…ッ?!)
…帰ろっか。
…えっ?!
それじゃ、私へのサプ…、
…も、もう1回やってみない?
もしかしたら、待ちくたびれて寝…、次こそは現れるかもよ?!
…もういいよ。
やっぱり、都市伝説は…、所詮都市伝説だよね…。
やっちゃん、ごめんねぇ。土曜日なのにこんな所に連れてきちゃって…。
ト…、トイレの上様は絶対いるって! だから帰るだなんて言わないで?
(うわ、ホントに帰りやがった)
私の誕生日プレゼントは、どうなるの!?
ヴィトンのバッグは?!
……。
やっと帰ったか…。
ドンドンドン!!!
な…、何だぁ?!
ちょっとォ!
誰か入ってるのはわかってんのよォ!?
き…、気づかれてるッ?!
早く(プレゼント持って)出てきなさいよォ!!
…どうする俺? ここで出て行ったら、間違いなく変質者として通報される…ッ!
…そうだ!
こうなったら、トイレの上様に成りすましてやろう!
適当に相手してたら、向こうが飽きて帰っていくだろう…。
ドアを叩いて答えればいい訳だし、声を発さなくていいから、絶対バレない!
ちょっとォ! 聞いてるの?!
確か…、最初は3回だったよな…?
ドン…。ドン…。ドン…。
…こんな感じか?
…ドン。…ドン。…ドン。
…ッ!?
(やっとノックしたわね? この薄鈍ッ!
…ということは、まうが帰ったのもシナリオ通り?
私としたことが…、ちょっとヒヤヒヤしちゃったじゃない。
…まぁ、いいわ。
ヴィトンの為なら…、こういう茶番に付き合ってあげてもいいわッ!)
こうして、色んな思惑が渦巻くトイレで…
闘いの火蓋が切られたのだ…ッ!
続く。