『女子高校生の散歩』

は、はわわわわ……なによぉ……。

お分かりかと思うが、私は現在外にいる。

いつも家でぐうたらとしている私の身を案じて、家族によって放り出されたのだ。全くもって理不尽な話である。

しかも一時間は帰ってくるなという条件まで定められてしまった。

突然放り出されてもどうすればいいのよぉ……こんなに晴れてるし、干からびて死んじゃうよぉ……。

そう、この日差しは実に厄介である。

本日の予定最高気温は二十二度。現在時刻は十時で、これから気温は上昇する一方だというのに、これでは身が持たない。

一刻も早く室温が十六度に固定された自室に戻れないだろうか。

歩けばいいんでしょ? 歩くわよ……。

はうぅ……もう疲れたよぉ……。

……?

……??

この世に生を受けて十六年。一度もこの地から離れたことのない私だが、どうしてか道に迷ってしまった。

やはり通学路以外の道は通ったことのないことが原因だろうか。

ど、どこなのよここは……おうちはどこよぉ……。

は……早く帰らなきゃ、外に出てから一時間経っちゃう……なんなのよ本当にぃ……。

ちなみに私は外に一時間以上いると肌がカサカサになり、大変なことになってしまう。

という設定を施して自らを戒めている。

あっちの道から来たはずだから、うぅ……。

こっちでいいのかな……はぅっ!

道に迷う中、そんな私の前に何かが立ちはだかった。

う……ウーちゃん……。

ウーちゃん。ウーちゃんとは私の家で飼われている犬のことである。

ウーちゃんは私以外の家族にはよく懐いているのだが、どうしてか私だけには寄ってくることがない。

故にウーちゃんと私の間では長きに渡り冷戦が続いている。

このようなことがあってか、私は犬という動物が好きではない。

向こうが私のことを好かないのなら、私も好こうとは思わないのだ。

ちなみにウーちゃんとは、私の中では犬を総称した言葉のことである。

つまり私の前にいるコレは、ウーちゃんでありウーちゃんではない。どこか見ず知らずの犬というわけだ。

む……むむむ……。

……この道はやめとこ。 もし噛まれたら痛いし、絶対泣いちゃうし。

自分自身、賢明な判断だったと思う。

そうして私は来た道を引き返……

……。

どの道から来たのか分からなくなってしまった。

一体何なのだ。ウーちゃんに続いて、この世界さえもが私のことを嫌うようになってしまったのか。 ああ、なんて無情っ……!

……おなか空いたなぁ。

私はふと空腹感に襲われた。 思えば布団を剥ぐようにして叩き起され、そのまま一直線に玄関まで担がれたのだ。それは空腹にもなる。

早くおうちに帰りたいよう……。 でも歩くとおなかが減っちゃうし……。もう、どうしたらいいのよぉ……。

私は悩んだ。このまま歩いて家を探すことはもちろんのことなのだが、もしかしたらその道中、空腹で倒れてしまうかもしれない。

自分で言うのもなんではあるが、私は非常に燃費が悪い。

どれ程悪いかと言えば、牛丼のメガ盛りを完食して満腹になったのにも関わらず、その帰り道で更に牛丼屋さんをハシゴしてしまう程だ。

はぁ……おなかへったぁ……。

とりあえず歩を進めてはみるが、歩くごとに口をついて出る空腹の言葉。このまま私の体力は持ってくれるだろうか。

や……やっと着いたよぉ……。 これもう明日絶対筋肉痛だよ……。

ここまでの間、私はまさに悠久の時を感じた。

しかし、家まで倒れることなく帰って来れたのは素直に自分を褒めたいと思う。

いかにエネルギーを消費せずに歩くことが出来るかを考えた末、私はベストの歩法を習得することに成功した。

その道中、なぜか数人の警官に職務質問をされたが、どうということはない。

とにかく疲れてしまったし、今は何より空腹で死にそうだ。早急に何かを口にしなければならない。

あうぅ、ただいまぁ。ほら、ちゃんと行ってきたよぉ。おなかぺこぺこだよもう……。

……え?

まだ三十分も経ってないの? え、ちょっと待っ……!

うぅ……閉められちゃった……。

私の修羅の道が終わることは無かった。

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公開日 2012/09/28 18:27 再生回数 40

作者からのコメント

ツッコミが不在というのは、恐ろしいことですね。どなたか彼女のクズっぷりを叱ってあげてください。

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