“【リレー小説】シンデレラ その10”

かーっ! なんなのよあの医者! この右手、結構重症だとか言ってたくせに30分くらいして「あ、やっぱしこれ突き指だわ」って!

人はね、いくら突き指でも重症って言われたら脚本も書けないほどの重傷って思っちゃうの! 気持ちの問題だよ!

要するに、突き指くらいじゃ脚本書くのに支障はないよね。人差し指こんなに曲がるし。うん、ホント気持ちの問題だね。

ふんふん……歩きながらでもこんなストーリーが思いつく私ってやっぱり天才なんじゃないかしら。今度シェイクスピアにでも弟子入り……

……って、ん? グラウンドが騒がしいなぁ。

しかもあそこは……私たちの 演劇をやってる場所だよね。

トイレ、トイレっと……うわ、委員長!?

あぁ相沢さん、今保健室から来てね。劇のほうはどう? 成田さんはうまくやってる?

え、えぇ!  それはそれはうまくやってるわよ! もうなんていうのかやばいわ!

あぁ! 私にもっとボキャブラリーがあれば成田さんの凄さを伝えることができるのに……なんてもどかしい!

それはよかったよ。 さて、じゃあ私も成田さんの名演技を見てみようかな。

そ、その必要は無いわ!

どうして? そこまで言われたら気になるよ。それと、みんながどんなシンデレラを上演してるのかもね。

大丈夫! 大丈夫だから! だから委員長は家にでも帰って高みの見物でも決め込んでてよ!

家に帰ったら見物できないよ! むしろ高みっていうよりイジメだよねそれ!?

うぅ……。

……相沢さん、そこをどいて。

い……いや、今ここをどくわけには……!

ふぅん、そういうつもりなの。じゃあ私もずっとここにいるよ。

え?

相沢さん、トイレに行くためにここを通ったんだよね? ってことは今、相沢さんはトイレに行きたくてたまらないはずだよ。

トイレに行きたい。でも行ったら私を通してしまう。さあ相沢さん、どうするの?

そんなのッ……気合で我慢できるわ!

もう額からあぶら汗が滲んでるけど、まあいいよ。あなたのその気合とやら、見せてもらうよ。

~五分後~

死ぬ……死ぬから……これ以上トイレ我慢したら、私の……相沢ダムが決壊しちゃうから……!

ほらほら、我慢は体に毒だよ。 さっさと出すもの出しちゃおうよ。と言っても、ここで出されても困るけどね。

でも、私はここで負けるわけには――

隙あり!

えっ……何を……うぅ!

たった今、あなたの膀胱を破裂させるツボを突いたの。ほら、これまでとは比じゃない苦痛が襲うでしょ?

あ……あぁッッ! もう……もう限界よ! 分かったわよ通らせてあげるわよ!

私は、あまりのシンデレラ具合に委員長が悲しむ顔なんて……見たくないよ!

な、何を言ってるの?

もう無理! あとは自分で確かめてよね!!

行っちゃった……人間って、内股であんなに速く走れるものなんだね……。

でも、あまりのシンデレラ具合って、相沢さんも大げさなんだから。

シンデレラがいないくらいでそこまでお話は変わらないでしょう。要は誰か別の人がガラスの靴を履けばいいだけなんだし。

さて、相沢さん。通らせてもらうよ。

まさに最終決戦にふさわしい場所ね。ブラックへアー。

なんなのよあなたはッ……! 突然現れたと思ったらこんなに……私の計画をめちゃくちゃにして……!

………………

な………………

なんだこれ!!!!!

シンデレラのシの字も感じないよ!!  っていうか最終決戦ってなに!?

しかもお客さんの態度! 百人が百人固唾を飲んで見てる始末!

私が今書いたストーリーを途中にくっつけてハッピーエンドにしようと思ったのに……大変だよ……くっつかないよ……別次元の話だよ……。

そこにいるのは委員長か!?

杉田くん! これは一体……!

どうだ俺たちのシンデレラは? なかなかよくできてるだろう?

誇り持っちゃってるよこの人!! しかもシンデレラって言い切ったし! やっぱりこれ、シンデレラなんだ……。

誇り? そう、俺は誇り高きシンデレラー。役目は終えたものの、ナリータへその意志はしかと受け継がれた。

やばいよ……もうさっぱりだよ……。 ところでこれ、そろそろ終わるの?

そんなの俺には分からない。知っているのは委員長、あんただけだ。

それはどういう……

俺たちのこの演劇は、委員長が来るまでの時間稼ぎでしかない。委員長が来る前に話が終わってしまってはいけないからな。

……委員長、お前がこの演劇に終止符を打つんだ。その口ぶりじゃあ脚本は上がっているんだろう?

いやまぁ書いたけどさ! 私の書いたシンデレラに最終決戦なんて無いし……。

どうすれば委員長の話にうまく繋がる?  必要なセリフ、モノがあったら挙げていってくれ。

なんかもうこの無茶苦茶な状況に手馴れちゃってるよこの人! 昨日より杉田くんの顔が凛々しく見える……!

ええと、とりあえずガラスの靴は必要でしょ? シンデレラはいなくても、ガラスの靴を持った王子様はいるわけだし……。

あと、話のオチとしては、シンデレラがいないことにしめた! と思った魔法使いが、自分が舞踏会に行っちゃおうって考えてね、

それで、魔法使いと王子様がつながっちゃうってお話にしようと思ったんだけど……。

分かった。なんとかしよう。みんなに伝えてくる。

二つ返事かよ!!!! 本当に終わるのかな、この劇……。

お話はいよいよフィナーレを迎えます。

アンカーのダメリンゴさん、頑張ってください。このリレー小説が無事完結することが、私たちの願いです。(丸投げ)

B
e
f
p
q
r
s
K
O
Keyboard Shortcuts
  • J Next page
  • K Previous page
  • [ First page
  • ] Last page
  • E Enable/disable bubble animation
  • 0 Manual page turning
  • 1 Slow page turning
  • 2 Normal page turning
  • 3 Fast page turning
  • P Start/stop auto page turning
  • ? Show keyboard shortcuts
Play Again
More Stories
Posted at 2012/11/15 03:54 Viewed 69 times

From Author

前回:【リレー小説】シンデレラ その9→ http://www.kimip.net/play/3UEAu あ、あとは任せました。  次回:

Comments

Login to Write your comment