『【5月第三週】母さんからは逃げられない』

ハラ減ったなあ・・・。

母さん、メシはまだぁ?

はいはい。

ご飯なら、もうすぐできるわよ。

今作っているところだからね~。

それじゃあ、お母さんと一緒に食器の用意でもしましょうか。

ちょっと! 自分だけ抜けがけしようなんて、ズルいわよ。

そうよ。 食器の用意は私と二人で・・・。

やめてください! 今は私が、この子の母親なんですっ。

いや、あの・・・。

母さんたち・・・ケンカ、しないで。頼むから・・・。

やれやれ・・・。

オヤジが死んでから、毎日これだもんなあ・・・。

オレを産んでくれた母さん。

オレを育ててくれた母さん。

そして、オヤジが死ぬ直前に再婚した相手────つまり、今の母さん。

ようするにオレには、三人の母さんがいるわけだ。

今日は母の日かぁ・・・。

こんな日に、あの三人を相手にするなんて・・・どう考えても無理だ。

だがしかし、幸いなことにオレには特別な力がある。

洗面所にある、何の変哲もない鏡。

ここを通って、鏡の中の世界に行くことができる────。

ふぅ・・・。

これで、こっちの世界で今日だけやりすごせれば・・・。

あら。 鏡なんか見ちゃって、どうしたの?

か、母さん・・・。

あなたも年頃なのね。 母さん、ビックリしちゃったわ。

鏡の中の世界にも、もちろん母さんがいる。

ちょ、ちょっとオレ・・・でかけてくるから!

わっ!?

ど、どうしたの? そんなに急いで・・・。

ご、ごめん! 母さん、オレちょっと用事が・・・。

オレにも理由はよくわからないのだが、鏡の中ではこの人もオレの母さんであるらしい。

くっ・・・ここを通り抜ければ!

そこまでだよ。

母さんを出し抜こうとしたって・・・そうはいかないんだからね。

今日はたぁ~っぷり・・・親孝行してもらうんだからぁ。

さあ、こっちへいらっしゃい・・・。

う、うわぁぁぁぁーっ!!

母さんたちに囲まれた瞬間────。

オレの能力は限界を超えて、さらなる力を発揮したようだ。

こ、ここは・・・。

オレの能力で、宇宙にまで来ちまったっていうのか・・・?

いいえ。 あなたを呼んだのは、この私。

お、おまえは・・・何者だ?

私は大宇宙の創造者・・・。

すなわち、この宇宙に生きるあらゆる生命を生み出した存在────。

つまり、あなたの母さんよ。

おまえもかよ!

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公開日 2013/05/16 18:54 再生回数 11

作者からのコメント

いつもお世話になっているお母さんに恩返ししたりとか、そういう感動的な話が書けない病気にかかっているみたいです。

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