“美少女ゲー風シナリオ共通ルートその1”

耳に、けたたましく鳴る音が響いた。

暗い意識の中から少しずつ開放され、手を伸ばす。なにか硬いものに触れた感触が伝わり、これだと確信を持ってスイッチを押す。

音が、止む。 それでもなお、外から聞こえる鳥の声に導かれるようにして目を開いていった。

あぁ‥‥‥もう、朝なのか。

その事実を確認した後で、今度は今止めた目覚まし時計のほうを見た。 今日は昨日までの春休みと違い、学校があるからだ。

目に入る、現在7時10分の表示――

‥‥‥ゆっくり食べていくのは無理かなぁ、こりゃ。

この家から学校までは、信号妨害にあわなければ歩いて30分はかかる。HRが始まるのが8時25分なのを加味すると、少し早いほうがいいくらいだ。

考えるよりもまず先に、休み明けの重い体を引き起こして、壁にかけられている制服を手に取った――

着替えてから顔を洗い、リビングに下りてくる。その場には誰もいない。

‥‥‥母さん、父さん。

ちらりと、顔をあるものに向けた。

そこにあるのは仏壇で、ただひっそりと佇んでいる。立てかけられた男女の写真は、あまり見ていたくなかった。

俺はこれからも、元気でやっていくよ。だから‥‥‥どこからでも、見守っててくれ。二人とも。

誓いのような言葉を告げてから、朝食の準備に取り掛かる。まずは冷蔵庫に近づいた。

パンは何か塗ればいいし、サラダも夜に作ったのがある。後は‥‥‥

よし、ベーコンエッグでも作るか。

うまい朝食にすることをイメージしつつ、冷蔵庫の中からベーコンと卵を取り出した。

お、桜が咲いてる。 やっぱりここのは綺麗だな。

腹に確かな満足感を覚えながら、ゆっくりと歩いてゆく。

このペースなら、遅れるようなことはないだろう。

ちらほらと、談笑している同じ学校の生徒たちの姿が目に入ってきた。

春休みが終わり、学年が一つ進級してまた学校に行く。これまでの生涯でも何度か繰り返されてきたサイクルだが、それだけに慣れも飽きもある。

――それもあるのだろうか。 心の中に、馬鹿みたいなことが一つ浮かんでしまうのは。

それを振り払うために頭を振ろうとすると、背中からなにかがのしかかってきた。

ぐえ‥‥‥!

ハハハハハ! 潰れたカエルみたいな声出して、どうしたんだよ利秋!

‥‥‥そっちこそ、いきなり俺を潰そうとしてくるなんてどういうことだ、雄斗?

いや、利秋の後姿を見たら反射的につい。

金髪で軽そうな雰囲気をしている同級生、榊雄斗(さかき ゆうと)の姿が後ろにはあった。

制服を着崩して、フードのようなものをつけてる規範的の逆方向に位置するこいつと俺――双葉利秋(ふたば としあき)は10年来の親友だ。

‥‥‥いや。

お前なぁ‥‥‥どうせなら性別変えて胸育ててからやってくれよ。

なら、次にやるまでにプロテインとステロイドを毎日飲んどくわ!!

筋肉鍛えろとは言ってねぇよ! あとマッチョのお前とか気持ち悪いわ!

――悪友、という表現が一番当てはまるかもしれない。

まぁ、それは置いといてよ。

あぁ、置いておけ。そのまま忘れろ。絶対にだぞ。

そ、そこまで嫌か‥‥‥。

ま、いいや。 なぁ、利秋?

‥‥‥なんだ?

今年も、同じクラスだといいな。あいつともさ。

そうだな。 そういえば、あいつは全然見ないけど‥‥‥先に行ってるのかな?

雄斗の言葉を聞いてから、一人の同級生の顔を思い出す。

去年からの仲だが、それを感じさせないくらいにはかなりつるんでいたと思う。それくらいには俺たち三人とも、仲がよかった。

そうかもな。 ま、何はともあれさっさといこーぜ。 久しぶりに三人顔をあわせるんだしな!

そう言ってから、前を突っ走っていく親――悪友。それくらいには、色々と楽しみなのだろう。

‥‥‥やれやれ。

一言呟いてから、俺もその後に続いていった。

教室は、すでにざわついていた。 やはりみんな、まだ色々と落ち着かないところもあるのだろう。

教室の中を見回す。 見覚えのある金髪頭はすぐに見つかった。

おーう、利秋! 遅かったじゃないか!!

お前が突っ走りすぎなんだ。 急に朝のジョギングをやらされる身にもなってみろ。

軽口を叩きあいながら、二人で笑う。

そして、視線を雄斗の隣に向けた。

数週間ぶりだな、春崎。

ん。なんか、久しぶりだと印象変わるね、やっぱり。

春崎 笠音(はるさき かさね)。 俺と雄斗、そしてこの春崎の三人でつるむのが、去年からのパターンだ。

いつもは結構元気なほうだが、少し落ち着いているのは今日が新学期初日だから、というのもあるんだろう。

‥‥‥ふふふ。

不意に、春崎が笑った。 薄い茶色のショートカットを揺らして笑う顔は、去年にも何度か見たことがある。

しかし、なぜ今笑うのか。

おぉっ、どうした春崎!? 急に笑い出すなんて、ついにテンションが振り切れておかしくなっちまったか!?

あはは、バカ雄斗の失礼な発言は後で正すとして‥‥‥

なんか、こうして三人揃うとやっぱりいいなぁ、って思ってたら、ついね。

‥‥‥

‥‥‥

春崎の発言に、二人して沈黙。 それでも春崎は何一つ変わらない笑顔のままでいた。

ん? どうかした?

嬉しいこと言ってくれるじゃねーか、このぉっ!

雄斗は喜色満面、春崎に飛びかかるようにして抱きつこうとした。

うわわっ!

そんな雄斗を、春崎は手で押し返す。

ちょっ、オレの愛の抱擁に逆らうなよ!

い、嫌だよ! 雄斗、基本的にそういう時は胸揉もうとするし!

ちっ、バレたか‥‥‥

やっぱりー! あんまり近づかないでよね、バカ雄斗!!

あっはっは、フられたな、雄斗。

いい気味だ。この際思う存分馬鹿にしてやろう。

くっ‥‥‥オレは諦めない、絶対にお前の胸(ハート)を鷲づかみにしてみせる‥‥‥!

すんなー!

目の前で繰り広げられる、この光景。 当たり前のようで、しばらく離れていた日常だ。

ようやく、学校にまた来たんだなと、実感することができる。

よし、じゃあ春崎。 オレじゃなくて利秋ならどうだ?

ん、俺の名前? 少し懐かしさに浸っていたせいで、話の流れを聞いていなかった。 いったい何を話してたんだろう。

え、と、利秋‥‥‥?

なんで顔が赤くなるんだ。 流れがまるで理解できない。

すげぇ、なんとも春崎には似合わない乙女チックな顔をしておられる‥‥‥

う、うるさい、バカ雄斗。

いつもよりも罵りにキレが無い。 もしかして、熱でもあるのか春崎は?

そう思っていると、雄斗が肩を叩いてきた。

よし、行け利秋――

――抱きつきだ!

‥‥‥はぁ?

何言ってんだ、この金髪。 ついに煩悩に狂ったか。

というか‥‥‥

(春崎の態度はそれが原因か‥‥‥)

おいおい、話聞いてなかったのかよ?

オレが近づくのは嫌だったら、じゃあ利秋はどうなんだって言ったんだよ。

こいつ‥‥‥完全に俺を自分の境遇に巻き込む気だな!?

(ニィッ)

この野郎。 貴様のあだ名がかつて金髪鶏頭だったことを公表してやろうか。

と、利秋は‥‥‥わたしじゃ嫌?

‥‥‥これじゃ下手に断ったら、俺が春崎を嫌がってるみたいになるじゃないか。

八方塞ってわけでもないのだが、あまりやりたくない方法だしな‥‥‥

(えぇい、まったく。そんな顔見せられたら、やるしかないだろうが)

春崎‥‥‥

ごめんね、利秋。 雄斗がバカな事を――

俺はな、実は尻派なんだ。

‥‥‥

‥‥‥え?

雄斗は胸を揉もうとしていた。あいつは胸派だからな、それは当然だ。

だが俺は、どっちかというと尻のほうが好きだ。ついでに言えば、春崎の尻は俺の知る中で最高の部類に入る。

!?

だからつまり‥‥‥あれだ。

俺の場合、多分お前の尻に手が伸びる。

あ、触らせてくれるんならもちろん喜んでやるぞ?

だ、だめだよ! あたしはもっときれーなままでいたいんだからね!!

そうか、それは残念だな。

これでいい。俺が嫌がったからじゃなく、当の本人が拒絶したならば、それで角は立たないだろう。

‥‥‥! ‥‥!!‥‥‥!!!

あそこで後ろ向いて隠れて笑ってるバカは許さん、絶対にだ。

プルプルと苛立ちで震える手を押さえようとしていると、クラス担当の教師が入ってきた。

お、それじゃ、そろそろ席着くか。 また後でな!

二人とも、後で絶対説教だからね!!

それは怖いな、利秋。

あぁ、まったくだ。帰るまでに忘れていてくれると嬉しいな。

こうして、俺と雄斗、春崎は久しぶりの再会を楽しんだ後で、それぞれ席に着いた。

しかし一人になった後で、俺の心にはまた、馬鹿みたいな考えが広がっていた。

それは暗く、後ろ向きで、放っておけば俺が沈んでしまいそうな、深い闇。

――世界というのは、どうしてこう、ただただ狭苦しいのだろうか。

どうもみなさま、今回こんな馬鹿みたいに長くなりそうな企画を始めたファイッです。はじめまして。

うわ恥ずかしげもなく一ヶ月近くの前の文章を丁寧口調に直しやがった、そう言いたいアシスタントAです。

いきなりぶっちゃけて悪いんだけどさ。

はい?

‥‥‥まぁいいか。

言えよこの豚。

お前が言うな。 とりあえず美少女ゲー風と謳うからにはヒロイン紹介は必要だよね。

今回ルート書くか、と思っているのは‥‥‥

この三人ですね。 ある意味初期キャラですね。

ちなみに他のキャラは個別シナリオでそれぞれ役割を振っているので、出番が無いということはありません。

ほうほう。 ところで僕出れます?

出ないよ。本編出るキャラはここには出さないよ。 クマーなんざラスボスぞ?

ネタバレと出番無いのダブル宣告ッ!? というか出られないんですか、僕!?

流石にこんなのほほんとした豚をモンスター扱いは‥‥‥

‥‥‥あ、はい。 一応言っておくと、バトルものっぽいルートが二つあります。青春学園ものっぽいのは一人ですね。

こういうのは最近は言っておかないと詐欺だとか言い出す人がいますからね。 この手のフォーマットの大本のほうではですけど。

かーなーしーみのー

やめなさい。

というか最初に言おうとしたことってなんなんですか?

ああ、あれ? せっかく考えた主人公とヒロインのS○○のシチュエーションが使えな‥‥‥

またいつかっ! 何か話すネタが出来たときにでもこのコーナーは復活します!今回は撤収!撤収です!!

終わり

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Posted at 2012/08/30 12:04 Viewed 55 times

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ゲーム風テキストにしようとするとあまり事細かに書けない件 その2→ http://www.kimip.net/play/ydpR0

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