放課後。帰り支度をしていると肩を叩かれた。
「ん……?」
「やっほー、亜季ちゃん。お疲れ~」
「二万」
「……はっ?」
「肩に触れた。セクハラ。示談にしてやる。諭吉を二人連れてこい」
「ははっ!相変わらず亜季ちゃんは手厳しいなぁ~」
「著作権に五月蝿い黒ネズミみたいな笑い方しないでくれる?」
「ハハッ!ぼくミッ―――」
「洒落にならないからやめなさい」
世の中には敵に回してはいけない存在もある。
「はははっ!亜季ちゃんは世渡り上手だね!権力に対する正しい身の振り方をご存知だ!」
「殺伐とした世の中を生きるための処世術なり」
流れには逆らわず身を任すタイプである。まぁ、この性格なので敵は作りやすいが。
「……あぁ、てか、何か用?」
「わぁ!相変わらず、ぼっきらぶうな物言いだ!」
「ぶっきらぼう、ね。勃起じゃないから。やんわりと下ネタ交えないで」
ナチュラルにセクハラをする個性は恐ろしい。
「ごめんごめん!ぼっきらぶう、って言うと勃起ラブぅ、って意味合いに取れて、あぁ、不思議と『元気ハツラツぅ?』みたいだね!」
「大正○薬に訴えられちまえ」
「ああっ!亜季ちゃん待ってよ~!」
「……」
「追い付いた~!」
「ストーキングしないでくれる?」
「だってまだ用事終わってないからさぁ」
「なに……?」
「今度の日曜、デートしようよ!」
「無理。お疲れ」
「……」
「即答過ぎるよ亜季ちゃん~!」
「……」
「はぁ、はぁ……亜季ちゃん歩くの早いね」
「009もびっくりな加速装置を積んでるから。もしくは天剣の宗次郎直伝の縮地方」
九頭龍閃を全弾かわすぐらいだからねぇ。
「でも、どんなに遠くにいても俺のぽこてぃんレーダーが亜季ちゃんを関知して知らせてくれるから問題なし!」
「亜季ちゃんのいる方角に向かって伸びていくからね!まるで太陽に向かっていくひまわりのように!」
「これ以上、生物の神秘を汚さないで」
「ははっ!ごめんごめん!……で、話の続きなんだけど」
「店外デートは十万からで」
「客とお水じゃないんだからそんな法外な価格を要求しないでほしいな」
「じゃなくて!」
「三人で遊ぼうよ!結衣子ちゃんも一緒に!」
「三人で……?」
世良と結衣子と私とでか。
「もし暇だったらなんだけど、どう?」
「んー……、別にいいけど」
「よしきた!」
「んじゃっ!今度の日曜日空けといてね~!」
言って、世良は大きく手を降り元来た道を引き返していった。
三人で遊び、か……。
……。
……ま、遊んでやるかな。
――と、デレてみたり。
「とりあえず、……空けとくか」





