学校帰り、商店街の書店に見知った顔がいたので声をかけた。
「結衣子」
「……」
「……わっ! ゲルショッカー先輩!」
「や、誰だよ。誰と間違えてんだよ」
「すみません。昭和の仮面ライダーのネタなんてわかる読者層じゃないのにこんなボケになってしまって」
「やり直したいんでもう一回話しかけるところからお願いします」
そう言って、読んでいた雑誌に再び目を落とす。
面倒臭い後輩である。
「……結衣子」
「……」
「わっ! ハイパーメディアクリエイター先輩!」
「そんな胡散臭い商売してないから」
「失礼な。ハイパーなメディアをクリエイトする立派な仕事です」
「どんな仕事よ」
「高飛車な女と結婚して泥沼の離婚調停に陥る仕事です」
「最悪ね」
相手が変化球ばかり投げてくる会話のキャッチボールは難易度が高い。
「てか、あんた……何読んでるの?」
彼女の手にしていた雑誌を覗き見る。
「あぁ、公募ガイドです」
「公募ガイド……? なに、賞にでも応募するの?」
「はい。ラノベでも書いて一山当てようかと」
「随分簡単に言うわね」
「冗談です。本一冊書くのがそんなに簡単だと思ってはいません」
「ろくすっぽ書いたことねーくせに軽くパラパラ読んで、これなら書けそうだ、なんて思って」
「設定だけを練りにねって、これならベストセラーだ!みたいに妄想だけはして、一向に原稿用紙の余白が埋められない癖に―――」
「でかい口を叩くな」
「……あんた、一体誰と戦ってるのよ」






