信じられない! 彼女を1時間も待たせるなんて!
電車が遅延してたんだよ。
まーくんの家からここまでの路線でそんな遅延無かったってことはスマホで確認済みなんだからね!
そんな遅刻したぐらいで怒んなよ。
私は遅刻したことに怒ってるんじゃないの! せめて遅れるーの電話ぐらいかけてもいいんじゃない?
あー、携帯の電池無くてさー。
さっきLINEの「ペコン☆」って通知音聞こえたんだけど?
悪かったよ。お前のこと一番に愛してるから。
さっきウチのスマホに「今日はありがとう。やっぱお前が一番だわ りえ♡×365日」ってお前からメール来たんだけど。
何これ、浮気相手と間違えて私に送っちゃった系なの?
りえって言うのは妹で・・・。
『家族の居ない天涯孤独な俺ってカッコいいだろ?』ってさんざん口説いてきたの誰だよ!
思い出した。りえって言うのはお前の前世の名前でさー。つまりお前が一番
どーして嘘ばっかりつくの? 私のこと嫌いなの?
いやいや、お前のことは好きだよ?
それも嘘なんでしょ! もうお前の言う事全部信じられない!
ちょっと待てって、りえ。
私はりえじゃなくて、未来(かなた)だっつーの!
もういい! 遅刻するわ、浮気するわ、私の名前すら覚えてくれない嘘吐き彼氏なんてウンザリ! 別れる!
そんなに嘘を吐くのが好きなら、嘘吐きの国のお姫様と付き合っちゃえばいいんだよ!
おい、りえ! ・・・じゃなかった、カナター!
くそっ。何だよアイツ。2番目の癖に生意気だわー。
しょうがねえ、本命のりえと会うか。
もしもし、りえ。今すぐ会いたい。来れる?
『わかりました、すぐ向かいます。愛してます、まさくん』
やっぱ彼女は従順でなくちゃな!
2時間後・・・。
あれー、りえの奴なかなか来ないなー。
もしもしー? りえ、今どこー?
『ごめんなさい、急に行けなくなりました。急におばあ様が亡くなって、今お葬式の最中なんです』
何で葬式なのにエレクトリカルパレードが流れてるんだよ。何、今○ズニーランドにいるの?
『○ズニーランドでお葬式なんです。おばあ様の遺言でそうしろと』
『何、誰と電話してんの? 男? ・・・ちょっと、今電話中ッッ! ・・・もしもし? 今のは小学生の弟で』
そんな野太い声の小学生がいるかよ! 彼氏か! 彼氏と○ズニーランドでデートしてるんだろ!
『・・・違うよ?』
嘘吐いてんじゃねーよ! 本当のこと話せよ!
『・・・・・・』
『今私は男性と○ズニーランドでデートしています』
だよな。
『おばあ様のお葬式なんていうのも嘘です。おばあ様も弟も存在しない人物です』
ああ。
『ちなみにまさくんを愛しています、というのも嘘です』
・・・好きじゃないとか。ヒドイな、りえ。
『そもそもりえっていう名前も嘘です、本当の名前は荘二郎です』
・・・は?
『私、男なんです。しかも男にしか性欲沸かないゲイなんですよ』
ちょ・・・ちょっと・・・。
『もうお気づきだと思いますが、あなたが挿入したのはアナルの方です』
『あのあえぎ声、嘘だったんですよ。本当は全然気持ちよくありませんでした』
『それなのに勘違いして、テクニシャン気取って・・・』
やめろよ・・・。
『あ、FXで失敗した話も嘘です。300万円ありがとうございました』
『これでゲイバーを開く長年の夢に少し近づきました』
やめろって・・・。
『あ、未来さんとの復縁は難しいと思いますよ。私、未来さんにまさくんに幻滅するようなこと書いた嘘のメール送ってますんで』
やめろおおおお!!
この嘘吐き女め! 訴えてやる! 法で裁けなかったとしても俺がこの手で殺してやる!
『ふふっ・・・、嘘吐き王子の次ははったり王子ですか』
『はったりじゃねえ! マジだ!』
『あら、怖い。じゃあ殺される前にまさくんを殺すことにしましょうか』
何だって・・・?
『気づかなかったんですか? 私が依頼した暗殺者が今もずーーっとまさくんの命を狙ってますよ?』
嘘だ・・・。
『そうです、嘘ですよ。暗殺者なんていません』
パァン!
バタッ
『そしてこれも嘘。』
『知っていたんでしょう? 私が嘘吐きの国のお姫様だということを。だから貴方は私に近づいた。私を殺して国の王になる為に』
私は最初から貴方の素性は知っていました。でもあえて知らないフリをして貴方の接触を許しました。
嘘吐きの国を統べるには、嘘を吐くだけではなく、相手の嘘も見破らなければならない。
だから私は今までお姫様を続けていられたのです。
──我が名は嘘吐きの国のアリス。私の前では嘘も吐けないし、私の吐く嘘も見破れない。
──っていう夢を見てたら、寝坊した。
死ねばいいのに、嘘吐き野郎。