―――いよいよ夏休み。皆さんはどう過ごされるのでしょうか?
うえ~ん!!夏休みの宿題終わんないよぉ!!
ほらほら、そう言わずに後ちょっと頑張りなさい。
ある程度終わったら・・・お父さんが遊園地に連れて行ってくれるって!!
・・・え!?本当!? やったぁーーーー!!!
夏は絶好の行楽季節!! ・・・遊園地、いいですね!こういうご家庭も多いのではないでしょうか?
・・・でもね・・・僕らは・・・
くおぉぉぉらああああぁぁぁっっっ!!何をしている新入りいいいいいいっっっっっ!!!!
そろそろ開園の時間だぞ!! いつまで油売ってんだくらあああぁぁぁぁっっっ!!!
・・・すっ、スミマセン!! このきぐるみ着るのに物凄く時間掛かってしまっ・・・ぐふっ!!
・・・いい?それを着た時点で貴方はきぐるみなんかじゃないの。ウチの遊園地の可愛いマスコットなの。わかった?
・・・はひぃ!!わっ、わかりまっ・・・
(ギロッ)
『ははっ!ボクはこの夢の国に住んでいるクマプーだよ☆ みんな、今日は来てくれてありがとう!!』
・・・よしよし、いい子ねクマプーちゃん♪ ・・・じゃ、アタシ一旦事務所に戻ってるから!!
・・・はぁ・・・疲れる・・・
・・・なんか言った?
・・・いっ、いえなんでも・・・いや、『なんでもないでぷー☆』
・・・よろしい。では後はよろしく!! また後で会いましょう!!あっ、風船も忘れないでね~
(・・・くそっ・・・なんでこんなバイト選んじまったんだ・・・!夏休みになると忙しくなるのは分かってたのに!!)
(・・・つーかあの先輩も事務所にいないで俺と同じ苦痛を味わってみろってんだ!!って、もう開園の時間だな・・・)
・・・数時間後。
うなだれるような日差しが新入りを襲う!!
(ぐうううっっっっ!!きぐるみが暑い!!だが・・・耐えろ・・・耐えるんだ・・・ん?あれは・・・)
イチャイチャカップルのリア充が新入りを襲う!!
(ぐぬううぅぅっっリア充どもめえええぇぇぇっっっ!!俺がこんな目に合ってるというのにぃぃぃっっっ!!)
あっ!!クマプーだ!!
(おっ、子供か。純粋そうな目をしてるなぁ・・・よし、風船をあげて・・・)
相変わらずここのマスコットってブッサイクな顔してるよなぁ!!つーか暑いのにきぐるみなんてバカじゃね?
将来こんな大人にならないようにしなきゃ!!さて、次どんな子供だましのアトラクションに乗ろうかな~♪
(・・・ぐっ・・・ぐぬぬ・・・ぐぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬ・・・・・・!!)
(・・・どうして!!どうして夏休みだというのに俺達ばかりこんな過酷な苦行を続けなければならんのだ!!)
(俺だって好きでこんな格好してるわけじゃないっつーの!!ちくしょう・・・ちくしょう・・・・・・!!!)
・・・あっ!クマプーちゃん!! そろそろ交代の時間だよ? 飲み物でも飲んできたら?
あ、はい!!ありがとうございます!・・・では引き継ぎよろしくお願いします!!
(・・・クマプーの恋人『プー子』のマスコット・・・そういえば一体誰が入っているんだろう・・・?)
この日差しだというのに弱音を吐いたところ見たこと無いし(・・・むしろこっちの心配してくれる)
さっきのような悪ガキが来ても平然と対応しているし・・・
・・・その後も『プー子』はマスコットとして最高の接客を魅せた。僕はその正体が気になって仕方がなかった。
あれ?話してなかったっけ?
『プー子』の中の人は私だよ。
・・・せ・・・先輩だったんですか!? てっきりクーラー効いた事務所でデスクワークしてると思ってたのに!!
・・・先輩は・・・辛くないんですか・・・? 夏休みだというのに遊ぶことが出来ず・・・この光景をみることに・・・!!
・・・そりゃ、辛いさ。みんなが遊んでいるのになんで自分だけ・・・って思うこともある。だが、よく見てみな。
この遊園地には笑顔があふれている。夏休みを利用して大勢の人が来てくれている。
確かに遊園地(ここ)で働く以上、皆のような夏休みはない。だが、それ以上に得るものがあると私は思っているよ。
・・・せん・・・ぱい・・・
さあ・・・戦いの続きだ・・・!! いくぞ・・・新入り!!今度は二人で全力を持って皆を楽しませるぞ!!
・・・・・・ ・・・はい!!
この夏、遊園地などへ遊びに行く時はその裏に彼らの頑張りがあることを忘れないであげてね!!おしまい。