“いいなり!おいなりさま!”

日本古来より、こんな言い伝えがある。

ある日、どこからともなく、ある地蔵の前に供えられるという稲荷ずし。

何を隠そう、その稲荷ずしは、伝説の稲荷ずし。

それを食べると、たちまち神々しい光に包まれ、全知全能の神に相対する程の力を手に入れることができる。

しかし、その出現位置は毎回ランダムで、日本の何処の地蔵なのか、探すのにも一苦労。

見つけた所で、既に腐ってしまって食べれない、なんてこともしばしば。

そんな中、様々な手を尽くし、先に出現位置を特定した物がいた・・・。

とうとう見つけましたわ、幻の稲荷ずし・・・

どうやら、ヒグマのクロさんの情報は確かだったようですね。

あれを食べれば、人類最強。

指先1つ振るえば、町は木端微塵。

その気になれば、その圧倒的な力をもってして、地上征服だって可能なの。

でも、私はそんなものはてんで興味が無いの。

私が興味があるのは、いつだって、たくましい男!

全てを滅ぼすそんな凶悪な力を持ち合わせた、危険な男なの!

私はそんな力を持った男に、支配されたい!

同族の男狐なんて、みんなひ弱だし、日和見なやつらばっか!

女はいつだって、刺激が欲しいの!

刺激が足りなくって、今にも体中の神経が皮膚を突き破りそうなの!

強くて屈折した野心と7つの傷を胸に秘めた男。

そんな男なら、伝説のお稲荷さんの存在だって見過ごすわけないし、 一番乗りであれを見つけた男こそ、私が長年追い求めていたマスターなの!

お稲荷さんを狙うカラスの群れと格闘して、早数日。

目の前に行き倒れの男が現れた!

あの人が、私の御主人様・・・?

み・・・みず・・・。

これは・・・お稲荷さん・・・? なぜ、こんなところに・・・?

さぁ。御主人様。 ひと思いにそれを平らげるのですよ!

た、確かに脂が乗って美味しそうだけど、僕が欲しいのは水・・・。

ここまで来て何を躊躇してるの!? とっとと喰えよ!

ふが・・・ふがっ!?

ごくり

ふぅ、生き返った

お水どーぞ

ありがとう、ごくごく

あぁ、なんて男らしい飲みっぷり・・・(ハート)

あの、突然ですが、私を・・・、 あなたの下僕にしてください!!

・・・え、なに?

いきなり現れてゴメンなさい。 私、狐の里の出身のツミキと申します。

狐の里・・・俺はまだ夢でも見ているのか?

夢じゃないです! あなたは今この瞬間、地上のどんな生き物のてっぺんに君臨するお方へと生まれ変わったのです!

へぇ、すごいすごい(棒)

嘘じゃないです! 試しに私に何か命令して見て下さい!

そんなこと言って、キミも僕をからかってるんでしょ? 新手のデート商法か何かだろう? 僕その手の誘いに散々引っ掛かりまくって、財布もすっからかん、軽く人間不信になってるんだよね。

というか、その耳だってどーせ飾りなんでしょ? ちょっと、取ってみてよ。

か、からだが勝手に・・・っ!?

自分の耳を思いっきり左右に引っ張り上げる。

いたいいたい、耳ちぎれちゃううぅっ!!

(御主人様の言いつけには、逆らえないィっ!!)

それ、ホンモノなの?

私のアイデンティティー!アイデンティティー!!

わ、わかった。キミが狐なのは認めるから、もう止めて!

・・・はぁ・・・、はぁ・・・。 ・・・今みたいな感じで、あなたはこの世のあらゆるものを支配することができるんです。お分かりいただけましたか?

この俺に、そんな力が・・・。

(そう・・・そのギラギラとした目・・・表情・・・。私が長年追い求めていたのは、これだったの!)

あの、改めて、この私をあなたの下僕にしてもらえませんか?

下僕、か・・・。

なんか、その下僕って言い方、僕好きじゃないなぁ。

あ、そうですか・・・

それに、君は命の恩人だ。下僕とはまるでかけ離れた存在だよ

よし、こうしよう

・・・僕のお嫁さんになってください。

・・・え?

こうして、2人(1人と1匹)は、結婚した。

言葉通り、狐の嫁入りとはこのことだが、式当日は快晴そのものだった。

そして、時は経ち・・・

つみきー、僕のメガネ知らないかなぁ?

やだー、あなたったら、メガネならもう掛けてるじゃないですか?

あっ・・・、あっはっは。僕としたことが、つい忘れてしまっていたよ。

キミに見惚れていたせい、かな?

もう、やだぁ、あなたったら!

幸せな新婚生活。

おっと、僕がゴミ出ししておくよ。

そんな、いけませんわ。 会社に遅刻しますわよ。

なに、そんなの大した手間じゃないさ。

今日も、終わったらまっすぐ帰ってくるからね?

はい、お待ちしてますわ。

それじゃ、いってきます!

いってらっしゃーい

・・・・・・。

・・・なにこれ!? なんで私、ちゃっかり人並の幸せ築いてんの!?

てゆうか、なにあの支配力の無さ! 単なる優男じゃない!

私が求めていたのは、こんな平凡な生活じゃなかったのにーーっ!

あっ、忘れてた

どきっ

いってきますのキス、忘れてたよ

あ、あぁ・・・そうでしたわね。このうっかりさん!

ちゅっ

ふふっ、いつか食べたお稲荷さんの感触そのものだよ。僕の命を救ってくれた、あのお稲荷さん。

じゃ、今度こそ、いってきまーす

・・・あの腑抜け男を、なんとかして人類最狂の男に仕立て上げないと・・・!退屈で死んじゃう!

こうして、自身の理想の夫に育成するためのつみきの歪んだ計画が今始まった──。

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Posted at 2013/09/14 23:50 Viewed 14 times

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昔あげた作品の中にこんな素敵なフレーズがあったので。。。

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