兄さん!
誰だ・・・私の眠りを妨げるのは・・・?
・・・・・・。
・・・なんだ、夢か。
俺は名も謂れも無き、ただのお地蔵様。あんなカッコイイ兄者がいるはずない。
我を呼んだか、弟者よ。
あ、あなたは・・・・・・!
夢で会ったぶりだな、弟者よ。
・・・・・・。
会ってねーよ!
貴様、新手の詐欺か!?他人の兄を騙るなんて、「あにあに詐欺」もいいところだな!
俺が夢で会ったのは、こうゆう気品あふれるお兄様なんだよ!似ても似つかない贋物めが!
何がお望みだ!?まさか、この額のちょっぽが目当てか!?
悪いが、このちょっぽの貞操は、俺が惚れた女にしか渡さないからな!
何を言っている、弟者よ。
貴様は、正真正銘の、我の弟者よ。
・・・まじで?
そういや、-甲- の時の話で、実は双子でした、とか言ってたな・・・。
まさか、あれでフラグ立った感じ!?
弟者よ。
な、なんですか兄者・・・(うわ、ごっつ恥ずかしいわこの言い方・・・)
我は、人の手により、あの山の向こう側からこっちに移されたのだ。
我は貴様の兄者であると同時に、ご近所に越してきたお隣さんということになるのだ。
つまり、我と仲良くしろ、お隣さん。
・・・・・・。
(・・・ツンデレ?)
嫌だ、といったら?
・・・・・・。
その時は、全力で弟者の額のちょっぽをこねこねする。
親指と中指の腹を巧みに使って、優しく、時に切なく、こねこねする。
や、やめろよそうゆうの!
だいたい、ここの住人タダでさえ多いって言うのに、また余計に1人増えるとか、耐えられない!
たしかに多いな。 だが今更1人2人増えても同じだと思うがな。
いんや、違うね。 それをもうすぐ身を持って知ることになるだろうよ。
・・・・・・誰かやってくるな。
地蔵のふり・・・地蔵のふり・・・。
もーっ、なんで私がお使い頼まれなくちゃならないのよー。
お婆ちゃんが腰痛めちゃって、日課だったっていうお地蔵様のお供え物を代わりに持っていくだなんて、
面倒くさいことこの上ないわ。
兄者「なんだあの小生意気な娘は・・・?」
弟者「毎日我々お地蔵様にお供えものを持ってきてくれる女の孫だ」
弟者「あのように、少々性格が悪いが、お供え物にありつけるとならば我慢できる」
兄者「なるほど、ならばお地蔵様らしく、有り難られるように徹しようじゃないか」
はぁ、ようやくついたわ。
てかぁ、お地蔵様が実際にまんじゅう食うんですかって聞きたいわ。
こんな寂れた道上の、名も知れないお地蔵様だなんて、有り難くもなさそうだし、やってても意味なくね?
どうせだったら、これ、私が全部頂いちゃおうかしら?
弟者・兄者「!!」
あー、このこしあんのまんじゅう、美味しそうだわ・・・。
兄者「じゅる」
弟者「兄者、いけません!今ヨダレなんか垂らしたら人間にバレますって!」
兄者「し、しかし・・・、こしあんは我の好物であってだな」
こっちの白あんのほうも、負けず劣らずと美味しそうだわ。
弟者「じゅる」
兄者「弟者よ、貴様こそそのオシャレなヨダレかけが今役に立とうとしているぞ」
弟者「で、ですが、白あんは俺の大好物でして・・・」
迷うことなんてない。両方いただいたらいいのよ!
いっただきまーす!
弟者・兄者「この罰当たりがっ!!」
・・・・・・っ!?
なんか、変な声が聞こえた・・・?
・・・・・・。
気のせいね。
それじゃ気を取り直して、いただっきまーす!!
弟者・兄者「まずは末代から祟ってやるっ!!」
・・・・・・っ!!
こ、今度は確実に聞こえた・・・!
末代って・・・たぶん私のことよね!?
や・・・やっぱり、これはお地蔵様のお供え物ですわ!私ったらとんだ食いしん坊さん!
弟者「なんだか知らんが、我々の熱い思いが伝わったようだ」
兄者「人間なんてちょろいッス」
弟者「兄者、キャラ崩れてきてるよ」
それじゃ、端から順番に並べていこうかしら。
1つ、2つ、3つ・・・・・・。
兄者「こしあんがいい」
弟者「白あんプリーズ」
・・・11個、12個・・・・・・って、あら?
大変っ!残りの2人のお地蔵様の分のまんじゅうがもうないわ!
弟者・兄者「な・・・なにぃーっ!?」
ど、どどどうしよう・・・・・・このままじゃ私、ガチで祟られてしまうわ・・・!
なにか・・・・・・なにか、代わりになるものは・・・・・・?
兄者「・・・・・・代わりなら、既に小娘が持っておろう?」
弟者「あ、兄者・・・・・・?」
兄者「その衣の内に隠れている、小ぶりな2つの肉まんが・・・」
弟者「下衆い!さすが俺の兄者! 仏の風上にも置けない!」
兄者「さて・・・それでは」
弟者「いただくとしますか・・・・・・」
じゅる