紫は知っていた。
小学校からずっと傍にいたアカネ。
幼馴染であるアカネがどれだけ凄い人物かを……
ふむ……
紫ちゃんは、アカネ君に勝てないんだったね。
えぇ、それが何か？
……いや、なんでもない。
初めてカードショップに行った時に彼が何を言いたかったのか。
運動だけじゃないやい！
嘘おっしゃい
本当だって！
昔に、ほら！
………………
彼女の家で話していた時もそう。
思い出してしまう。
彼女は本当に、運動も勉強も全てが完璧きだった。
そして、運命のあの時……
いつも通り、彼女の散歩に連れてこられ、山の中に入った。
私はずっと耐えきれなかった。
運動もできて、勉強もできるアカネのことを。
アカネはズルい！
勉強もできて、運動もできて！
私なんにも勝てない！
ズルいよ！
………………
今思えば、本当に子供じみた言葉だった。
勝てないなら勝つように努力すればいい。
それなのに、私は彼女に原因を求めてしまった。
あれだけ酷いことを言ったのに、彼女は何も言わなかった。
そして、翌日から私たちの評価は変わった。
運動ができるアカネ。
勉強ができる私。
だから、私は必至で勉強した。
彼女に負けないように。
彼女の影に怯えながら。
そして、今……
私はテーブルを挟んで、彼女と向かっている。
アカネ！
手加減はナシよ。
もちろん。
私は変わったのだろうか？
アカネに負けてくれと言ったその日から……
私のターンね。
「河原の瑪瑙妖精」を配置。
………………
彼女のスキル発動ね。
手札に「詩歌う銅妖精」がいる場合、コストを支払わず場に出してもいい。
手札に持っているから出すね。
そして、彼女のスキルで、妖精トークンを場に置くわ。
（「河原の瑪瑙妖精」から「詩歌う銅妖精」のコンボ。）
（たった、2コストで3体もの妖精が場に出た。）
（他の属性にはまずできない芸当ね。）
（アカネが出した「河原の瑪瑙妖精」を「戒厳令」で妨害することはできた……）
（でも、ここは妖精。攻撃力の弱い金属性でも十分対処ができる。）
これとこれとこれで攻撃表示ね。
「ホネホ・ネロック」で守備意思。
あとの2体はライフダメージね。
「ホネホ・ネロック」と戦ったこの子は負けちゃったから墓地ね。
（数で押されている……）
（防御の数が間に合っていない……）
（でも、まだ大丈夫だ……この程度の差なら……）
紫ちゃん。やっぱり、賢いよね！
凄い凄い！
………………
（ダメだ。バカ。思い出すな！）
（あの子は今、本当に勝ちに来ている！）
（これに勝ってからこそ……）
（このアカネに勝ってからこそ……）
私のターン！
「弄られデュラハンのミララコ」に「デュラハン家の宝剣」を装着。
妖精にこれを倒せるかしら？
うっ……これはきついかも。
（呪いの連撃で確実に破壊できる……）
（このキャラを中心で構築していけば……）
「ホネホ・ネロック」で攻撃意思を示すわ。
妖精トークンで守備意思を示すね。
ねぇ、紫ちゃん……
なに？
楽しいね。
………………
えぇ、楽しいわ。
（こうやって、本気でアカネと向き合うなんていつ振りだろうか……）
（たかがゲームなのに、身体熱くなる……）
（負けたくないと心が叫ぶ……）
絶対に負けないわよ。
私だって！
次回予告 決着！
ついに佳境！ どうなる紫！ どうなるアカネ！
次回、ついに最終回！
