タッタッタッタッタッ・・・
タッタッタッタッタッ・・・
タッタッタッタッタッ・・・
ふぅ、陸上部だった頃の実力は衰えてないな・・・。
さて、と・・・。
ゴソゴソ・・・
カチャ
ガチャガチャ！
あ、あれ・・・？
なんで鍵が閉まるわけ？ 開いてたってこと？
僕、閉め忘れたっけ？
まあいいや。
カチャン
ガチャ
ええっと、軍手は確か台所の・・・
って、なにこの靴・・・。
ハイヒール・・・？ こんなえぐいヒールなんて母さん持ってないしなあ。
中島のおばさんはこんなの履かないし・・・。
も、もしかして、泥棒？
いや、でも泥棒がハイヒール履くわけないし・・・わざわざ靴脱ぐかなあ？
うーん・・・。
！？
・・・・・・。
あれ？
今、誰かいたような・・・？
す、すいません・・・。 誰かいます・・・。
えっ！？ ど、どなたですか！？
（女の人の声！？）
隆夫さんの知り合いです・・・。
あ、あの・・・話を聞いていただけませんか？
（隆夫さん・・・親父のことか）
ご、ごめんなさい・・・。気味が悪いですよね、知らない人が上がり込んでるんですものね・・・。
お願いします、警察には、警察にだけは通報しないでください・・・。 もうあんな所には・・・。
（以前に捕まった事がある・・・？）
逃げよう！
サッ
キーンコーンカーンコーン
え、タカちゃ・・・タカシ来てないの？
えっ、中島さんも事情知らないの？
・・・・・・。
ハッ！？
って！？
ドターン！
し、縛られてる・・・！
（しかもなんか変な縛り方・・・！）
ご、ごめんなさいね・・・。
あ、あなたが・・・
あなたが逃げるからいけないんですよ？
（やばい、笑顔が地味に怖い・・・）
いやん、隆夫さんそっくり・・・。なんだかイケナイ気分になっちゃいそう・・・。
・・・誰ですか？
（もうどうにでもなれ！）
ジュル・・・。
ひぃっ
おおっと、いけないいけない・・・。
手荒なまねをしてごめんなさいね。私は細川興子（きょうこ）という者です。
細川忠興（ほそかわ・ただおき）という戦国武将にちなんだ名前なんですよ。
すごくマイナーな、でもマニアにはすごく有名な武将なんです。
そ、そうなんですか。
うふふ・・・。
あの、父とはどういったご関係で？
あーん！ やっぱり隆夫さんの息子さんですね！ いやーん、面影あるー！
（怖い。話の聞かなさっぷりが怖い・・・）
あ、でもあのオンナの面影もありますね・・。怖がってる顔が最☆高です！
あら、私としたことが・・・はしたない！
（ファッションからして既にはしたないですが・・・）
私と隆夫さんとの関係はですね、今は元恋人、でも将来は固く結ばれる運命にある男女です！
あーん！ 言っちゃったー！
あの、もしかして・・・？
あーん！ ご存知ですかー！？ そう、女狐に騙されて結婚する前の、隆夫さんの正当な恋人ですよー！
ちょっとした誤解があって、冤罪で刑務所にいましたけどねぇ。
うふふ・・・。
ぼ、僕の聞いた話では、あなたは父を振ったそうですが・・・。
あらーん？ 詳しいんですねぇ。
で・も！ それは女狐の計略だったの！ だから、無し！ ノーカン！
（そんな、勝手な・・・）
うふふ、今日から失われた日々の清算が始まるのです。全てリセットされます。隆夫さん以外みんな・・・。
君にも女狐にも、リセットしてもらいます。その準備として、君には、女狐の職場を教えてほしいの。
そうすれば、チェリーのままリセットはしませんよ。
うふっ。
母親を女狐呼ばわりするような人に教えられるわけないだろ！
そんなこと言わないでぇ・・・
ねぇ、お姉さんに教えて？
（怖い恐いこわい怖い恐いこわい！）
（近寄るな近寄るな近寄るな！）
あ、それとも・・・心に決めた相手とかいるの？
じゃあ、言わないとこのまま、私が初めて奪っちゃいますよ？
ウフン。
誰でもいい、誰でもいいから助けてくださーい！
やーん、大声出しちゃ、だ・め！
ふぐぅ・・・。
カチャカチャ・・・
そのベッドイン、待ったー！
！？
バサン！
シュタぁ！
だ、誰ですか！？
故あって姓は名乗れぬが、人は私をこう呼ぶ！ 国のために働く匹夫、すなわち邦夫と！
（く、邦夫って、まさか・・・！）
うふふ・・・天井裏から出てくるなんて、びっくり驚き桃の木ですね。
女よ、その子が我が運命の人の子と知っての狼藉か。
たとえ天がそれを見逃そうとも、この邦夫は決して見逃さん。そこに直れ、成敗してくれる！
あらぁ、その邦夫さんは天井裏に忍び込んだストーカーさんは見逃すのですか。不思議なこともありますねぇ。
す、ストーカーとは何のことだ！
くっ、この女、生かしてはおけぬ！
あら、それはこちらのセリフです。
せっかく親子丼シチュでしたのにぃ。
馬に蹴られてリセットしろやー！
てやぁー！ せやー！
ドタドタドタ・・・
ぐむむむ・・・。
くそっ、なんなんだよ！ 変な女が不法侵入してるわ、縛られるわ、変な男が天井裏にいたわで・・・。
こんなわけのわからない状況でリセットされてたまるか！
と、言っても・・・この縄はほどけないわけですが・・・。
あ、あれ？ 縄に切れ目が・・・。
邦夫さんが切ったのかな、刀持ってたし。
よし、今度こそ逃げるぞ！
ススス・・・
＜ｵｲﾉﾁﾁｮｳﾀﾞｲ！ ＜ﾀﾞｶﾞｺﾄﾜﾙ
ダイニングで戦ってる・・・！ くそっ、軍手は諦めるしかないか・・・！
タッタッタッタッ・・・
で、できるだけ遠くに逃げないと・・・。
あ、タカシくん！ こっちよ、こっち！
こっちこっち！
中島さん！ どうしてここに！？
芙弓から電話があったのよ。タカシくんが学校にいないって！
何かあったんじゃないかと思ってたけど、とんでもないことになっているようね。
はい、興子さんとか邦夫さんとか名乗る人たちが家に押しこんできて・・・。
く、邦夫が・・・なんてこと！ 出所していたの！？
あ、あの人も元受刑者なんだ・・・。
でも良かった。もう110当番したから、すぐにおまわりさん来るから！
ピーポーピーポーピーポー
ほら、噂をすれば・・・。
キキキキー！
ガチャ、ドタムッ！
ドドドドドド・・・
被害者を確保しろー！ 急げー！
窓越しに脱獄者細川興子の姿を確認、早急に確保せよ！ 刃物を持った男性も確認、応援求む、応援求む！
ピーポーピーポーピーポー
た、助かった・・・？
君、大丈夫かね！
おまわりさん、優しくしてやってちょうだい。さっきまで監禁されていたのよ？
失礼ですが、お名前は・・・？
おい新米、失礼だろ。通報してくださった方だ。私の知り合いでもある。ここは私に任せて現場を囲め。
ハッ！ 失礼しました警部殿！
中島さん、お久しぶりです。１6年ぶりになりますか・・・。
邦夫の件依頼ですね。もうそんなに経ちますか・・・。
まさか出所後まっすぐにこちらに向かうとは思ってもいませんでした。奴は一応、模範囚で通ってましたから。
自分から史子を振っておいて・・・本当に身勝手な男・・・。
君が、 史子さんの息子さんだね・・・？
はい、タカシと言います。あの、刑事さんは・・・？
そうか、君は事件の詳細を知らされていないのか・・・。
いったい、何が・・・？
それはご両親から伺った方がいいだろう・・・。もうすぐ到着なされる。
えっ？
ピーポーピーポーピーポー
ガチャ
タカシちゃん！
タカシぃいいい！
うぉおおおお、無事だったかー！
そ、そんな親父・・・大げさだよ・・・。
フッ・・・。
タカシちゃーん！
だきっ
タカシぃいいい！
ガバッ
うぐぐぐぅ！ タカシ！ 無事で、無事で本当に良かったぁあああ！
タカシちゃん、職場にね、おまわりさんから電話があってね、事件に巻き込まれたかもって言われてね、
すごく心配でね、大変だったのよ、タカシちゃんも大変だったけど、ウッ、グスッ、ヒッグ・・・。
そ、そんなことより、なんだったのか説明してほしいなあ。
な、何があったのかって・・・？
なんか、親父の知り合いとか名乗ってる興子っていう女の人が・・・。
興、子・・・だと？
親父・・・？
興子がタカシをこんな目に合わせたのかー！
酷い目にあいそうになっていたところを、邦夫さんっていう人に助けられ・・・たのかな？
く、邦夫さんって・・・まさか・・・。
くっ、俺たち夫婦の不始末ってことかよ・・・。
＜被疑者確保！ 確保しましたー！ ＜午前9時02分35秒！ ＜貴方には黙秘権があり・・・
ハッ、ハハ・・・。 終わった、のか・・・。
バタリ・・・
＜タカシちゃん！ タカシぃいい！＞
