！
ここは・・・？
ガチャ・・・
・・・・・・。
あ、ふゆちゃんの部屋か・・・。
・・・・・・。
タカちゃん、気がついたの？
あー・・・。なんかご迷惑をおかけしたようで・・・。
よ、
よかった～！
よかったよぉ～・・・！
＜おーい、ふゆー？ どうしたんだよー？
あっ、タカ坊！
＜おふくろー！ 隆夫おじさーん！ 史子さーん！ タカ坊が起きたよー！
＜ﾅ､ﾅﾝﾀﾞｯﾃｰ！？
＜ドタドタドタドタ・・・
なんか 騒がしくなっちゃいそうだなあ。
あの後、我が家で起きた事件は凶悪な一家殺人未遂事件として紙面と世間をにぎわした。
学校にはよくマスメディアが押し掛けてくるけど、
先生達がうまく追い返してくれているようで、平穏な日々が続いている。
細川興子は親父の元恋人らしい。親父が母さんと付き合い始めた時から、
どんな考えか執拗なストーカー行為を繰り返していたようだ。
あれでいいとこのお嬢様らしいから、人間というものはどんな者にもなれるんだなと戦慄する。
今までの懲役期間に加え、脱獄の罪も加わるから、もう一生分は出て来れないだろうとのことだ。
一方、我が家の天井裏に潜んでいた天野邦夫だが、
こちらもまた、母さんの元恋人で母さんが親父と付き合い始めた時から、執拗に付きまとっていたらしい。
ストーカー行為の常習犯として、ゴミ箱を漁っている現場を現行犯逮捕。懲役を終え出所していたが・・・
その行き先が我が家の天井裏なのだから筋金入りだ。
屋根裏には数日分の生活痕が見られ、家族の生活を監視していたらしいとのことだ。
僕はあの後、刑務所で邦夫さんと面会した。周りの人は反対したけど、助けられたのは事実だから・・・
く、邦夫さん？ お久しぶりです。タカシです。
た、タカシくん・・・？ どうしてわざわざここに・・・？
一つ、聞きたい事がありまして・・・。
・・・一つと言わず、何でも聞きたまえ。
・・・どうして僕を助けたんですか？
助けなければ、ずっと母さんのこと見ていられたでしょ？
多分、細川はリセットとか言いながら殺す気は無かっただろうし・・・貞操は守れなかっただろうけど。
史子さ・・・じゃなくて・・・。 君のお母さんが、悲しむだろ？
正直に言うと、私もあの女と似たり寄ったりなんだよ・・・。
最初は全てを奪って自分の物にしようとしていた。だけど、ずっと君たちを見ていて気付いたんだ。
史子さんは、最高に輝いていた。私と一緒にいた時とは比べ物にならないくらいだったよ。
あの輝きは、君と君のお父さんが与えたものだ。君たちがいなければ消えてしまう輝きなんだよ。
これからも、彼女のことを守ってくれ・・・。
・・・・・・。
僕は、あなたは犯罪者の一人だと重々承知しています。
悪いことをたくさんしたから、そこにいます。でも出てきたら、きっとそれはチャラになります。
何故なら、それは罪をつぐなったことになるから。
その時には、もう両親も年寄りになっていて、僕は結婚していて、子どもも生まれているでしょう。
その時は、うちに寄ってご飯を食べていってください。あなたが結果的に守った輝きを見に来てください。
ウッ・・・グスッ・・・駄目だよ、犯罪者とそんな約束しちゃ・・・。利用されちゃうよ？ グスッ
僕はあなたと約束なんてしていません。出所したあなたがその時に思い出せばいいことです。
・・・ありがとう。
はて、何のことやら・・・。
あ、そうだ・・・。忘れてた。
？
タカシくんさ、漢字でなんて書くの？
西郷隆盛の「隆」に歴史の「史」ですけど・・・。
そうか、愛されてるんだね・・・。
そう・・・
ですよね、きっと・・・えぇ・・・。
お時間です。お引き取りください。
はい、失礼します。
こうして、僕を巻き込んだ事件は終わりを告げた・・・。
『天井裏の元恋人』【完】
お付き合いいただき、本当にありがとうございました。長くて本当にごめんなさいね・・・。
