あれまぁ…本当に来ちまったよ
これって…オレ様、超ラッキー? さすがオレ様だにょん!
がさがさ…と音がして、人影が草むらから出てくる。
いたた…何? … 何が起こったの…?
ついさっきまで、友美たちといたのに…
『そうだ…私、さっきまで商店街を友達と一緒に遊んでた…どうして…こんなところ…。』
『早く帰って、おかあさんから預かっている…届けないと…』
『でも…辺りを見渡すけど、どこを見ても… 木!木!木!』
もしもーし。 そろそろ、オレ様を見つけてくれてもいいんじゃね?
え?…あ。 …人?!
『ビックリしたー…急に声が聞こえた…あれ?…でも、いない?』
確かに、人の声が聞こえたはずだったが、誰もいない。
…誰かー…いませんかー? っていうか、いてくださいー。
自分が何故ここにいるのか分からないのに、更に人気がない。 オマケは声だけ聞こえる…
…ちょっと待ってよー…頭が混乱してるから、声が聞こえたんじゃない? えぇっと…整理してみよう。 うん。
えーっと…誰だったか、妖精の声が聞こえると言ってた人がいたような………いや。これは関係ないや…
あぁ! もう…分からないってのよ! ヒント!ヒントください!
ヒントは…懐中時計じゃないの? つーか、気がつかなすぎ。 オレ様のことをシカトするなんて、生意気だ…にゃんこ。
あれー? また、声が…私もう………ダメなの?
先ほどから声がするほうを探してみているが、誰もいない。
あ…悪い。 会話してたから、すっかり視界チャンネルを切り替え忘れてたにゃーん。
オレ様の名前はな! オレ様の名前はな!
うわっ! いつからそこに?! お巡りさん呼びますよ!
近くにいただけで犯罪者予備扱いかよぉ…つーか、キミはここの自宅警備員どもを呼んだら逆に大変だよ?
あ。つい…って、えぇ?! 私、知らない世界に飛ばされたんですか?!
そう。 キミは、選ばれたんだにょん!!!
何にですか?! あと、先ほど[懐中時計]とかなんとか言ってませんでしたか?
大せーかいだにょーん。
わ~い。 当たった~。
うんにゃん! さすがだよ。 やっぱり、素質あるね。
ん? なんの素質ですか???
ん? あぁ…そうか説明してなかったや。 単刀直入で、[白ウサギ]としての。
はい?
うん。 だから、[白ウサギ]としての素質…。
………。
………。
えぇっと…よくわからないのですが… 何の素質ですか?
え? あぁ。聞こえなかったの? [白ウサギ]のね。
って、どんな素質やね~ん! [白ウサギ]の素質なんてあるか~い!!!
…いやいやいや…。 すげぇあるよ。ものっそいあるよ。 正直ありすぎるんだにょん。
どんなだよ! いらないよ。 もといた所に返してよ!
方法は………ありませ~ん!
はぁ?! あなたがここに連れてきたんでしょう? 返してよ!
うん。 無理にゃす。
い~~~や~~~~!!!!
あっはははははははは!!!
笑ってるなよ! さっきから思ってたんだけど、時々、語尾がおかしいんだよ!
げほっ…ごふっ…げほげほ…。
うわぁ…びっくりした…いきなりむせないでよ………大丈夫?
優しいね! オレ様気に入ったにょ! 絶対に[白ウサギ]にしてみせる!!!
だーかーらー! 私は、元いた場所に返せっていってるの!
大体、[白ウサギ]っていうのはなんなの?
うん。実は…オレ様もよく解らないんだにょー。
あ。そうなの? よく解らないんだったら、私の出る幕じゃないわ。
えぇ?一緒にやろうよ~。 みんなでやったら楽しいよ~。 ねぇ?
………うん。
ビックリした… あなた…いつからいたの?
………前?
なんで疑問系にょ! あ。それでね。こいつは[眠りネズミ]なんだよ~。ね!
………うん。
相変わらず無口だねぇ~。 まぁいいや。 それで、キミはどうするの?
え?私ですか???
………あなた。
私は………家に帰りたいのですが…。
だぁーかぁーらぁー。 帰れないの。 家なんてどこもないの。
………そうね…。
やっぱり…私…帰れないの?
………帰りたいの?
帰れるんですか?! 教えてください!!!
………知らない。
やっぱり…私、ここで死ぬんだ…。
ストーップ。 とにかく、帰り方が解らないくらいで、死なないの。
…でも…。
でもじゃないよ! こんなに楽しいことなんて、そうあることじゃないんだし。
思い切って、この状況を楽しんでみたらどうかな~んてにゃ。
………馬鹿。
え。 どうしたら、オレ様を馬鹿呼ばわりになっちゃうのさにょんころ。
………その、語尾を直したら教えてあげなくもない。
………とにかく。
ここから脱出するには、オレ様たちと一緒に行動するほかに道はないんだけど。
………もう…なにがなんだか…。
まぁ。はじめはそんなもんだって。 大丈夫。悪いようにはしないから。
………悪いようにしたら、この猫を○○○○にする権利をあげるわ…。
な、なんでこういう話の流れになってるのかよくわかんねぇにょ…。
………ここにいる?
オレ様たちと来る?
わ…解りました…。 …ご一緒させてください…。
え? 言ってるそばから、なんか…周りの様子が…
やべぇ…やべぇよ。 ネズミ! 逃げろ!!!
………。
やだ…か、体が………うごかっー
しっかりしろよ、[白ウサギ]!
もう…ダメ…。 …なんだか…眠く…。
男が、私に手を伸ばしてくる。 でも…身体が重い…。 手までの距離なんて…すぐなのに…
うわぁ!!!
キャァァァ!!!
私の足元から強い光が放たれていて。 よくよく見てみると、魔方陣らしき文字が書かれている。
おい! おまえ…なま…ぇ…!
!!!
絶対…絶対に迎えに行くからな!
あ…ここ………近所の神社…。
神社の周りを見渡すが特になにも変化はない。 いつもの神社だ。
よかった~…きっと、白昼夢でも見てたんでしょう。 さて。 お母さんのところ…へ?
おい。そこの人間。 [白ウサギ]じゃないのか?
…また、開いたか。 まぁ、あきらめんな。
それでは!!!
一瞬で消えたウサギを、私はただ黙って呆然と見ていた。
なんでうさぎが話してるの?! どうなってるのよぉ!!! 誰か答えなさい!!!!!
私には結局、何が起きたのかさっぱり解らない。
とにかく、友美のところに行かなきゃ。
彼女は走り出す。 一心不乱に。
ふふっ…み~つけた。
この女性が出てくるのは、またのお話。






