煙たい空気と瓦礫の山が二人を迎える。ここは駅近くのエリア。かつて、都市の中央として賑わいを見せた場所だ
きらびやかな駅ビルや、多種多様な人混み……それらは今や、見る影もない。
人々の欲求を巧みに刺激したサイネージも、ただの黒い板と化している
……駅に入るのは、諦めたほうが良さそう
(任意の女性向けアパレルブランド)とか、(任意のカフェチェーン店)にはもう行けないってことかー
(任意のハンバーガーチェーン店名)もね
あっ…あそこ、二人でよく行ったよねー。懐かしいなぁ
ちょっと…懐かしいなんて言わないでよ。まだ滅亡して数日しか経ってないのに
えっ? …ああ…!! これが滅亡慣れってやつ?
ってやつ? って…さも既存の概念かのように…
一瞬で終わったから、一瞬で全てが過去になっちゃった。怖いねー、滅亡は
まあ…気持ちはわかる。私も未だに、夢なんじゃないかなって思っているし
夢説もあり得るよね。だって、「ねむり」なんて名前なんだし
……その名前イジりも、すっごい久々に感じるなー。滅亡慣れってこれかー、怖いなー、滅亡慣れ
あやねを置いていくかのように、ねむりは歩みを早めた。すたすたと、器用に瓦礫の無い道を選んで、早歩きをしていく
あー、待って待って! ごめんってばー! 危ないからゆっくり行こうよー!
ねむりの背を追うあやね。灰色の重たい雲の隙間から、突如として太陽の光が射し込んだ。雨上がりの瞬間のような美しいその現象は、
太陽の光などではなく、人類を葬る人工の熱線であった。放棄された兵器の一つが、たった今、偶然起動したのだ
しかし。それを浴びても、二人の身体が崩壊したり、溶けるようなことは無かった。全く意に介さずに、終わった世界を進んでいく
少女たちは、はしゃぎながら旅を続ける。~つづく?~