注意※ナチュラルにBLです。ホモォです。苦手な方は回避を。おけな方はどうぞ笑ってやってください。
僕の名前は楓(かえで)。ごく一般的な高校生だ。隣にいるフードを被ってるのは幼馴染みの亜樹(あき)。同じく高校生である。 明日から夏休みを控えた僕たち二人はいま、とてつもなくありえない状況にいる。
………亜樹、どうしよう。
俺に聞くなよ…。…と、とりあえず…話聞いてみたら?
亜樹の言葉に促されて僕はそっと顔をあげた。現実とは思えない、目の前の光景。逸らし続けたその二人へと…。
おう、なんだ嬢ちゃん。ようやく話を聞いてくれる気になったかよ。
そちら側は本当に奇妙な部屋ですね…此方では見た事のないものばかりです。
(なにがどうなったのかわからないけど、朝目を覚ましたら僕のあったはずの部屋の半分が見た事もない和風の部屋となっていた) そしてそこにいたのはこれまた時代錯誤な格好と身振りをした二人。混乱で頭が回わらずにいたら亜樹がやってきて…今に至る。)
あの…その、もう一度さっきの説明を亜樹にしてくれますか…?
またか?ったく、嬢ちゃんは疑り深いねぇ。…昨日こいつとここで酒を飲んでたら部屋がいきなり真っ白になってよ。
目が潰れるんじゃねぇかっつうぐらい光に包まれたら目の前に寝てる嬢ちゃんの部屋があったわけだ。
そちらが寝ている間に色々と調べさせてもらいましたが…どうやらその部屋の扉からは我々は出れず行き来出来るのは部屋のみ。
そちらの部屋の扉を開けると結界が張ってあるかのように出られないようです。ただし此方側でここから我々が出入りする分には問題なく、
その先も我々の世界のまま。これはそちらも同じ条件かと。そして、部屋主以外にはこの状況や互いは見えぬようです。
この部屋の主は隣の男なので、巻き添えを食らった私以外にそちらのご友人が何故見えたかはわかりませんが…
朝方に俺の知り合いがここにきたがそっちの事はなんにも見えず、前と変わらない俺の部屋が見えるらしいぜ。
…お前、寝ている間に好き勝手されすぎだろ。
ごめん…僕、一度寝たらなかなか起きなくて…。
まったく…。とりあえず訳わかんねぇことには変わりねぇけど…俺が見える事は謎として他には支障ないんだな?
う、うん。さっきお母さんが部屋にきたけど何も言ってなかったし…。
僕がそう言うよりも早く亜樹は無遠慮にスタスタと向こう側へと入っていき、襖を開けると広がる景色に目を丸くした後、 見えない壁を叩くような仕草をしてから和服の二人を警戒するように睨んで戻ってきた。
確かに、こっちからも出られないな。廊下に人がいたけど俺の事は全然見えてなかったみたいだし。
そう、なんだ…うーん…これからどうしよう…。
まぁ周りに影響がないならとりあえずは成り行きを見守るしかないだろ。他に問題はなさそうだし。
う、うん…。亜樹がそう言うなら…。
ただし、あんた達!楓に変なことすんなよ!手を出したらただじゃおかないからな。
亜樹…!
楓も。俺は隣の家だし、なんかあったらすぐ呼べよ、駆けつけるから。俺が守ってやる。
うん、ありがとう、亜樹。やっぱり亜樹は頼りになるなぁ。
お、おう…。
ほう…?
おやおや。
な、なんだよ…。
いやいや。…そうだ、嬢ちゃん。俺ぁそっちの食い物に興味があるんだ。
これだけ部屋が違えば文化も違うんだろう?なんでもいい、茶と食い物頼めるか?
あ、はい…。…あの、さっきから思ってたんですがなんで僕を嬢ちゃんって呼ぶんですか、僕男ですよ…?
あん?そんなに色が白くてなよっちくて小さいんだ、女と変わらないだろ?
なぁに、バカにしてるわけじゃないさ。可愛いと思うから嬢ちゃんなんだ、いいだろう?
よ、よくないですよ…うう…ひどい…。
楓はしょんぼりと肩をすくめながらトボトボと部屋を出ていった。残された三人。亜樹は睨むように二人を見た。
が、当の二人はニヤニヤと意地悪に笑っているだけで。そのうちの一人、厳つい方がこちらへとやってきた。
な、なんだよ、何笑ってんだよ…。
いやぁ青いと思ってよ。…お前、あの嬢ちゃんのこと好きなんだろう?
なっ!何言ってんだよ!俺は別にそんな…そ、そりゃ好きだけどそれは友人とかであってそんな…!
若い若い。隠す事ぁないって、そういう好きなんだろ?なんならおっさんが手伝ってやってもいんだぜ?
男色家つうのは俺らの所じゃ珍しくもないし、性別はどうであれ恋つうのはいいもんだ。
だ、だから違うつってんだろ!
例え…もしそうだとしてもあんたの手なんか借りねぇよ。そういうのは自分でやるもんだろ。
ほう…?
うお、あんたまでこっちに…なんだよ、そんなに俺をからかいたいのかよ!
つうか本当に違うつうの。そりゃ楓は可愛いと思うしやべぇなって思う時もあるけど…。
恋とか、そういうのは越えた別次元で大事なんだよ、あいつの事。だからなんか欲があるわけじゃないし、ただ守ってやりたいって思うだけ。
……。
ん…?あんた、どうした?なんか肩がぷるぷるしてるけど…。
あ!!!やべぇ!!おい、離れろ!!!
は?
惚れ申した!!!!
へ?
あーあ…始まったよ、そいつの病気。そうなったらもう止められねぇぜ。知ーらね。
え?え?な、なんだよ!!
初な顔立ちや見た目に反して、内に秘めたるや熱き情熱。人を思い遣り、守ろうと貫くその御心…まさに男の中の男!!
貴方こそ私が仕えるべきお方!我が主…!
え、えぇええ!?な、なにっなにこいつ…!?
お前の言葉に感動して惚れたんだとよ。しつこいぞー、そいつ。一度惚れたら死ぬまでついていくと言ってもいい。
主を絶対的存在とし風呂までついていく。前にそいつがそうなった相手を一人だけ知ってるが…幽霊に憑かれたみたいにやつれて最後は真っ白に…
し、死んだのか…!?
いや、逃げた。このままじゃ本気で死ぬって。追いかけようとしたそいつを止めてなだめるの大変だったぜ…。
ひぃぃい!!なんだよそれっ意味わかんねぇ!!
ちなみにそれ昨日の話な。やけ酒に付き合っててよ。いやぁ今日こんなんじゃなかったら確実に前の主を探しに行ってたな、そいつ。
タイムリーすぎるだろ!!!
昨日までの主に捨てられ、それこそもう死ぬしかないと思っていた矢先の運命の出会い…
私はなんて幸せ者なんだ…!この命をかけて一生、貴方様を守り慕い、仕えさせていただきます…!
いやだぁぁぁぁあ!!!!
この私からお逃げになるというならば…主を切って私も死ぬ…!!
ひぃぃぃぃ!!
俺らはここから出られねぇんだからお前は隣に逃げたらいんじゃね?
は!!そうだった!!
茶菓子持ってきましたよー。…ってあれ?なんか皆仲良くなってる…?というか亜樹、なんで窓に足かけて…!?
すまん、楓!俺、自分の部屋に逃げるからお前も後で来い…!
えぇえ!?ちょ、亜樹っ危な…っ!
楓は持っていたお盆を机に置き、窓から飛び降りた亜樹を追うように慌てて窓に駆け寄って下を見た。 そこには見事自分の家の庭に降りた亜樹の姿があった。
よ、よかった…。って一体亜樹に何が…?
主ぃぃぃぃい!!!くそ、忌々しい結界め!主と私を引き裂きおって…!!私は自室に戻って対策を考える、御免!
…!?え、あ、今の…な、何…!?
すまん、嬢ちゃん。実はな……。
間。
まさか…僕がいない間にそんな事が…。
俺も頑張ったんだぜ、嬢ちゃんよぉ!でもあいつのあれは止められなくて…!
あ、あの、わかりましたから…すがらないでください…。
亜樹、大丈夫かなぁ…。
ぎゃぁぁぁぁあああ!!!!
主ぃぃぃぃい!!!
なんだ!?
い、今のは亜樹とあの人の声!?
なんで向こうから……。ん?足音だ、嬢ちゃん気を付けろ…!俺の後ろに隠れてな!
え、あ…ありがとう、ございます…!
ドタバタと尋常ない程に慌てた足音が楓の家からも、和室の廊下からも響く。髭の男は楓を背中に隠し、楓はその大きな背中に守られた。 やべこれ惚れちゃうんじゃね、と内心うきうきしてる髭とうっかりきゅんとしてしまった自分に戸惑いドキドキしてる楓がいるとかいないとか。 そんな中、あの二人の身に何かあったのかもしれない、と二人が身構えていると…バンッと開いた楓の部屋の扉と和室の障子。そこにいたのは…。
嬉々とした喜びを表す侍と、顔面蒼白とした亜樹の姿だった。
亜樹!どうしたの?そんなに慌てて…大丈夫?顔色、すごく悪いよ?
楓…!俺は…俺はもう…!!!
お前が渡殿を走るたぁ珍しい。ましてやいつも無愛想面にそんな笑み浮かべるたぁ…どうしたんだ?
うむ、この喜びを一早くお伝えしたく参ったのです。やはり私と主は運命の赤い糸で繋がっているのです!!我が主はあの方しかおりません!
どういう事?亜樹…
うう…!…俺の部屋が…こいつの部屋と繋がってたんだ…朝は普通だったのに…今見たら部屋半分和室に…!!満面の笑み浮かべたそいつが…!!
うわぁ…えげつない…。
まさに奇跡!自室に続く襖を開けた途端に光が広がり、見知らぬ部屋が表れて開いた扉からは主の姿…!この幸せをなんて現したらいいのか…!
思えば、まさに最初からわかっていた事。部屋の主しか見えぬ変化を私と我が主は見えていた…これは繋がる私達の運命を主旨していたに違いない。
…なんつうか…御愁傷様。
これからは毎日一緒に過ごせますね、主…!
いやだぁぁぁぁあ!!!!
あ、亜樹泣かないで…!
いやー大変な事になったなぁ。まぁでもこれでこいつが俺の部屋に入り浸る事はなくなったし…こっちはこっちでじっくり愛を育める訳だ。
え?
ん?
誰が…誰と…愛を育むと…?
俺と嬢ちゃん以外誰がいるんだよ?言っただろ、可愛いと思ってるってよ。
……!!!!
こうして僕たちの暗い夏休みが始まったのだった…一体僕と亜樹のこれからはどうなるのだろうか…というか名前すら知らない同居人って…。
奇妙な四人の生活はこれからどうなっていくのか、果たして無事夏休みを過ごせるのか…僕たちの苦難は続く…。 終
閲覧ありがとうございました!!