ガチャ
ただいま～
は～、今日も疲れた……
ダダダダダダ ドンッ
お帰り、妹よ！
あ、うん、ただいま……
………………（ｼﾞｰ）
ん？
はぁ～……
おいおい、姉の顔を見るなりため息とは……失礼な奴だな！
あっ、ごめんお姉ちゃん……。思わず……
なんだ？ 私の顔は思わずため息をつきたくなるほどブサイクか？ あん？
ち、違う違う！ そうじゃなくって……！ 今日は疲れたから……！
えっ？ そうじゃない？ じゃあ、私の存在自体がため息を吐きたくなる程醜悪だと、お前は言いたい訳だな？
（め、めんどくさい……！ また暇だからって私で遊ぼうとしてるな？）
（今日は疲れてるから、適当に流しておこう……）
どうなんだ？ 何とか言ったらどうだ？
うんっ！ そうなんだ～！ お姉ちゃんの醜悪な顔を見たら思わずため息がでちゃったの！
…………えっ？
（あれ……？ 反応が薄いな。まぁ、それならそれで……）
じゃあ、今日は汗掻いちゃったから、ちょっとシャワー浴びてくるね！
……………………
……あれ、お姉ちゃん……？
…………泣くぞ？
えっ、嘘、何で？
シクシクシクシク……
う、うわぁ、マジ泣き!? ちょ、ちょっとお姉ちゃん！ 冗談！ 冗談だから！
…………えっ？ グスン、冗談？
うんっ！ 冗談だから！ 流石にそこまで酷いこと思ってないよ！
そこまで……？ じゃあ少しは思ってるって事か……？ 妹は、私の事が嫌いなんだな……？
だ、だから違うって！ そりゃあ、たまにウザったい時もあるけど……
……もうダメだ。私は実の妹にウザがられる程醜いんだ。シクシクシクシク……
（あ～もぉ！ しょうがないなぁ！）
そ、そんな事ないよ！ お姉ちゃんは美人ですっごい可愛くて、自慢のお姉ちゃんだよ！
…………
それに、私はお姉ちゃんの事、大好きだよ！
…………愛してる？
あ、あいっ？ え、えぇ？
う……うぅ……私はもう駄目だ……生きてる価値もない。死のう。
あ、愛してる！ めちゃくちゃ愛してる！
……英語で言うと？
I！ LOVE！ YOU！
ピッ……
えっ？ 何？ 今の音……
…………（ﾆﾔﾆﾔ）
ピッ……
＜＜あ、愛してる！ めちゃくちゃ愛してる！＞＞
＜＜英語で言うと？＞＞
＜＜I！ LOVE！ YOU！＞＞
…………え…………？
ありがとう、妹。お前の気持ちは実に嬉しい。だが……！
私たちは姉妹だぞ？ これからはそういう不健全な考えは謹んだ方がいいな、うん
…………えっ？
は～、妹のきゃわいい声も録れたし、満足満足！
さぁ、風呂でも入ってくるかなぁ～♪♪
タッタッタッタッ
………………
～その日の夜～
は～、今日は楽しかった！
妹のレア音声も私の策略によってGETできたし、本当に私は天才だな！
ふんふんふ～ん♪
それでは早速、癒されるとしますかぁ！
ピッ
あ、あれ……？
ピッピッピッ
な、無くなっている!? それも、私の『お宝☆～妹盗聴音声～』フォルダごと……だと！
嘘だろ……12年間コツコツと溜めてきたのに……バックアップもとってないのに……！
くっ、何か一つでも残ってないのか!? これでは今夜は安眠できん！
おっ！ 一つだけ残ってるじゃないか！
え～っと、作成日時……30分前？ あれ？ いつの間に録ったんだっけ……？
まぁいいや、再生～♪
ピッ
＜＜お姉ちゃん、この音声を聴いているという事は、私はもう、連れ去られた後なんだと思います＞＞
えっ!? 妹!? 連れ去られた？ 一体どういうことだ？
＜＜“奴ら”は私の大切な『アレ』を狙ってるの……！ 助けて！ お姉ちゃん！＞＞
＜＜私の部屋のタンスに『アレ』が隠してあるから……！ お願い！ それを持って交番に行って！＞＞
＜＜あぁ、もう奴らがすぐそこまで……！ ……イヤァー！！＞＞
＜＜ザー――……ブツッ＞＞
くっ、何かよく分からん上に馬鹿っぽいが、あいつの危機らしいな……！
妹の危機を救わずして、何が姉か！ 待ってろ、今助けてやるぞ！ 妹ぉー！
～妹の部屋～
え～っと、まずはタンスで『アレ』とやらを見つけないとな……
ガサゴソガサゴソ
か、可愛いパンツがいっぱいだな……ん？
ピラッ
これは、手紙……？
＜＜お姉ちゃんへ＞＞
＜＜ありがとう、見つけてくれたんだね！ 信じてたよ、お姉ちゃん！＞＞
ま、まぁな。このぐらいは造作もないな、うん。
あっ、ちなみにパンツは被らせて貰ってま～す♡ ごっつぁんです！
＜＜実は“奴ら”が狙ってるのは、そのパンツなの！＞＞
な、なんだと!? この変態がぁ！
あ、私もか……
＜＜お願い！ それを持って、今すぐ交番に行って！ 私はそこに居るハズだから！＞＞
…………くっ、よく分からんが、私はコレを持って交番に向かえばいいんだな？
グイッ
いたたたたたっ！
あれ……？ あれ……？
頭に被ったパンツが……取れない……
むぅ、これは何かの呪いか？ はっ……！
もしかしてこれは呪われたパンツで、“奴ら”とやらはその力を狙っているのかもしれない……
……こうしちゃいられない！
妹ぉ～！ 今行くぞ～！！
はぁ……はぁ……つ、疲れた……
お～い！ 妹！ 私が来たからにはもう安心だ！
“例のアレ”も、バッチリ持ってきたぞ～！
キミっ！ こんな夜中に何をやっているんだ！
あっ、パンダ顔のおまわりさん！ 大変なんです、妹が……
大変なのは君の頭だろう！ 何故パンツを被っているんだ！
このパンツは呪われているからしょうがないんです！
そんな事よりも、早く妹に合わせてください！ ここに来ているんでしょう!?
い、妹？ いや、今夜は誰も来ていないが……
そんな訳ないです！ 来ているハズですよ！
いや、そう言われても……
もうっ！ 早くしないと“奴ら”にやられてしまう！
キミ、ちょっと落ち着きなさい。とりあえず、中で話を聴かせてもらえるかな？ 住所は？ 電話番号は？
あーもううっさい！ 早く妹を出せって言ってるだろ！
コラッ！ 暴れるな！ くそっ、公務執行妨害で逮捕するぞ！
うっせーバーカバーカ！ 早く妹を出せー！
お、お姉ちゃん！！
っ!?
ちょっと！ 何してるのよ！
い、妹～！ 良かった！ 無事だったか～！
んっ？ 君、この人の妹さんかね？
はっ、はい、そうです！ すいません、ウチの姉がご迷惑を……
違う！ 迷惑を被ったのはむしろ私だ！ このパンダ警官、もしかしたら“奴ら”の手先かもしれないぞ！
あっ、あはは、姉はこの通りちょっと頭が弱い子なので、どうかお許しください！ 私が責任持って連れて帰りますので！
う～ん、そういう事なら、まぁしょうがないね
おい、何がしょうがないんだ？ あ？ 頭か？ 私の頭がしょうがないってか？
それじゃあ、気をつけて帰ってね
はい、失礼しました！
おいシカトすんなぁ！ てめー笹燃やすぞコラァ！
ちょっと！ いい加減にしてよ！ ほら、早く帰るよ！
あ、あぁ、そうだな。いやー、無事で良かった良かった
…………
～帰宅～
ねぇ、お姉ちゃん……
ん？ どうした？
…………怒らないの？
ん？ 何がだ～？
その……私がお姉ちゃんを騙した事……
ああ、いいんだいいんだ。元はといえば、私が最初にお前を騙したんだからな
それに、あんな穴だらけの罠に引っ掛かった私も悪いんだ。いずれにしろ、おあいこだよ
うん……まさかお姉ちゃんがあそこまで馬鹿だったとは思わなかった……普通途中で気づくでしょ……
え～？ 今何か言った～？
ううん、なんでもな～い！
それより、どう？ その頭のパンツ、取れそう？
いやぁ、それが全く取れる気配がない……お前、これ何をくっつけた？
……超強力接着剤
…………
だ、だって、まさか頭に被るとは思わなかったんだもん！ ちょっと手にくっつくくらいかなって思って……
うん、まぁ、それももっともだ
分かってるなら被らないでよ、お姉ちゃん……
くぁー！ ダメだ、取れない！
しょうがない、ハサミで髪を切るか……
チョキチョキチョキ
ふぅ、取れたぁ
本当にごめんなさい、お姉ちゃん……
だから、気にするなって言ってるだろ？
ううん、それでも……ごめんなさい。それと……
んっ？
私の事……い、一生懸命助けようとしてくれて……その……
ありがとう
…………どういたしまして
そ、それじゃあもう寝るね！ おやすみなさい！
おう、おやすみ
タッタッタッタッ
ったく、あの照れ屋さんめ……
～数時間後～
………………そろそろ寝たかな？
では、作戦を開始しよう……！
ガチャ キィ……
（お邪魔しま～す……）
ス～……ス～……
よし、妹は寝て――
寝てる……のか？
まぁいいや。作戦を開始！
ガサゴソ ガサゴソ
ふんふんふふふ～ん♪
ララ、ララララ～♪
んぁ……あれ、お姉ちゃん？
ぬぉぉぉぉ～！
えっ!? えっ!? 何？ 何事!?
ビッッックリしたぁ～！！！
…………
…………
何……してるの？
いや……その……
なんで……また私のパンツを被ってるの……？
はっはっはっ、何を仰いますお嬢さん！
あなたも素敵なパンツをお被りになっているじゃありませんか！
えっ……？
えぇっ？ 嘘、なんで私、パンツを被ってるの!?
それは私のお気に入りだぞ☆
ああ、そういう事か。なるほどOK全て理解した。……お前だな？
ふん！ 正解だ！
もうっ！ 私にパンツを被せて、何がしたいのよお姉ちゃんは！
いやなに、お前のパンツを被った時に、何か開放的な気分になってな？
……それをお前にも、是非味わって欲しくてさ……
…………
…………
仕返しか……
ああ、その通りだが？
なんでよー！ 許してくれるって言ったじゃん！
うるさいっ！ よく考えたら、私は精神的にも社会的にも抹殺されかけたんだ！ このぐらい当然だ！
それはお姉ちゃんが馬鹿なのがいけないんでしょう!?
あんだとこの野郎！
なによ、やる気!?
ムキー
ポカポカポカポカ
ムキー
ポカポカポカポカ
いたっ、いたたたた！ や、やったな！ くそっ、ヘッドバットをくらえ！
ドギャァ
いたっ！ 頭突きはやり過ぎだよ！ お返ししてやる！
グググググ……
あ、あれ？
おっ、おおおお……おっ？
お姉ちゃん……
なんだ？ 妹よ
なんか、頭と頭がくっついて離れないんだけど……
ふむ……。恐らく、私がお前の頭のパンツに散布した超強力接着剤のせいだな。
なんか、おでことおでこでくっついてるんだけど……なんで？
滅茶苦茶大量に塗ったからな！ おでこにはみ出してしまったのだろう！
…………
…………
えっ？ ちょっと！ どうするの？これ！
痛い痛い！ 動くな！ 皮膚が痛いだろうが！
あっ、ご、ごめん……
じゃなくて！ なんて事してくれたのよ！ お姉ちゃんの馬鹿！
ま～、こうなってしまったからには、時が経っておでこの皮膚が剥がれ落ちるまで待つしかあるまい……
うそっ!? そんなの、いつまでかかるの!?
さぁー、一週間か、二週間か……
いやっ！ 絶対に嫌！ 耐えられない！
…………ふむ
なっ、なによ……！
こうしてお前の顔を間近で見てると……なんだ……
無性にムラムラしてくるな
…………死ね、変態
ここは一つ、キスでもするかぁ
はぁ？ 冗談じゃない――
ムチュ～
って、キス顔を作るな！ うわ、近い近い！
どこにも逃げ場はないぞ、妹♡
イヤっ、イヤっ、本当にイヤぁ～！！！
この後、妹の火事場の馬鹿力により、姉はおでこに全治3日の怪我を負ったという
良い子は絶対に真似すんなよ！
する訳ないでしょ、バカ姉！
続く……？
