『あなた誰なの? ~5~』

うーん……やっぱり載ってないか。

どうしました、先生。

ご自分も先生じゃないですか。 そんな言い方しないでください。

へへへ。 私は出来の悪い先生ですから。

……その服装、 いい加減に変えないんですか。

『落ち着いた服装にしなさい』って 教頭先生に言われてませんでした?

毎日言われてると、慣れちゃうよね。

毎日見てても慣れませんけどね。

うまいこと言うねえ。

とにかく、ちゃんとしてくださいね。

そりゃもう。 ちゃんとしますよ。ちゃんと。

生徒との関係も、ほどほどに── ちゃーんとね。

……お願いします。

先生、あの……。

あら。どうしたの。

先生にお願いがあって……。

あの机なんですけど…… 放課後のみんながいないうちに、 片づけておいてもらえませんか。

どういうこと?

あの机……あれがあると、 みんな不安で……。

不安って、どういうことなの。

なんか、あの……。

あそこに誰かいるんじゃないか、 って……みんな言ってますよ。

誰かいる……? 誰も使ってない席で?

だから……誰かいるみたいで、 気持ち悪いってことです。

そう……仕方ないわね。

今日の放課後、 先生が片づけておきます。

ホームルームが終わったら、 全員すぐに帰るように……って。

委員長から全員に伝えておくように、 頼んでおいてね。

わかりました。 伝えておきます。

やっぱり名簿にも載ってないか……。

何回数えてみても、40人。

けれど、教室にある机と椅子は ……41。

どういうことなのかしら……ね。

なぜ私にわからないのだろう。 担任教師であるはずの私が。

41番目の机、か……。

40人だけでも──いいえ。 1人だけでも、こっちは 首が回らなくなりそうなのにね。

あの子とのこと、どうしようかしら。

『これで最後にしましょう』 と言っておいたけど…… 納得してなかったみたいだし。

もし、誰かに知られたら…… 私の人生もおしまいだわ。

とにかく、ちゃんとしないと……。

とりあえず、 これは片づけておかないとね。

『あなた誰なの?』

なにこれ……?

誰よ、こんなところに ラクガキなんかしたのは。

まったく…… 誰なの、はこっちが言いたいわよね。

ガッ──!

え……。

あ、あなた……だ……の……。

ゴッ……ドカッ──ゴキッ!!

頭の骨に何か硬いものがぶつかる。

その音が何度か響いて──。

二度と目が覚めることはなかった。

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公開日 2012/06/17 01:47 再生回数 29

作者からのコメント

生徒たちの様子がおかしい。 いないはずの四十一人目。 名簿にすら載っていない生徒がいる。 なぜ私は知らないのだろう。担任教師の私が。 こうして教室にいると、まるで誰かがそこにいるように感じられるのに。 (全8回)

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