『【6月第三週】ペルレは静かにうなずいた』

今日は「ホームラン」の概念について学習します。

はい、ネポラ。

ペルレは、「ホームラン」について学習します。

よろしい。

ではまず、ホームランについて学ぶ前に「野球」という概念に関する説明を受けてもらいます。

説明を受けます、ネポラ。

ペルレは学生である。

古代文明の研究を行っているネポラから授業を受けること。

ネポラはこの分野では最高にして、ただ一人の研究者であった。

ネポラの研究に疑念をさしはさめる者は誰もない。

それゆえ、ペルレのやることと言えば、師であるネポラの言葉に黙ってただうなずくことだけだ。

それがペルレの役目であった。

・・・以上です。 何か質問はありますか。

はい、ネポラ。

授業の内容とは、別の質問があります。

質問を受けます、ペルレ。

ありがとうございます、ネポラ。

ペルレからの質問。

私は現在位置から3800ポロセク離れた場所で、奇妙な文献を発見いたしました。

奇妙な文献についての説明を求めます、ペルレ。

説明いたします、ネポラ。

その文献は、たいへん脆いものでした。

文献は炭素系繊維質で構成されていたため、燃焼に弱く、高密度エネルギー体である私には触れることさえできないものだったのです。

私はマーカーの設置、ならびに光学観測を行い、文献の表面に記載された古代文字を記録いたしました。

記録情報の放射パターンを確認。

解析をしていただけますか、ネポラ。

可能です、ペルレ。

私の重力圧縮式光力場回路にあるデータベースから、類似の情報を検索。

解析結果を閲覧してもよろしいでしょうか、ネポラ。

許可します、ペルレ。

『お父さんへ  今日は父の日です。  いつもありがとう。  マリコより』

質問があります、ネポラ。

個体名マリコが示している「父の日」とは、どのような概念でしょうか。

古代文明の生命体が、炭素基体の生物であったことは知っていますね、ペルレ。

彼らはエネルギーで構成された私たちとは異なり、世代間のつながりが密接だったようです。

父、という世代的上位存在が、下位の存在を保護、そして教育していく制度でありますね。

そのとおりです、ペルレ。

その育成の努力に対する感謝を示す時間帯が、一定周期ごとに訪れる「父の日」という概念なのです。

理解しました、ネポラ。

質問は以上です。

そして、これは・・・。

文献の近くで発見した、高反発力磁場重積体です。

・・・・・・!?

あなたから受けた授業に対する感謝として、これを提供いたします。

受け入れてくれますか、ネポラ?

それはたいへんすばらしいものです。私はとても嬉しいです、ペルレ。

この感情をなんと示すべきなのか、類似の概念を検索。

これは「父の日」に父親が抱く感情と類似しているのではないか、と推測。

これは新たな発見です。私は、とても大きな喜びに包まれている。あなたに理解できますか、ペルレ。

師の新たな発見に対して、ペルレは静かにうなずいた。

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公開日 2013/06/17 21:17 再生回数 23

作者からのコメント

背景も立ち絵も変わらないと、作るのがラクでいいな。

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