俺、森本サトシが最初に異変に気づいたのは、数ヶ月前からだった。
さーてと、歯磨いて寝るか。
あれ? 俺の歯ブラシがない…。
あれー、どこやったっけなー?
その時は、単に無くしただけだと思っていた。
その翌日。
さーて、帰ろうかな?
あれ、俺の靴が…。
どうかしたんですか、森本先輩?
俺の靴がなくなって…、
いや、何でもねー。(他人を巻き込む訳にはいかねー)
そうですか。何か困ったことがあったら、いつでも私に言って下さいね。
いじめか何かか?
いや、俺は人に恨まれるような人間じゃない。むしろ人から好かれるような人間だ。
それから一週間後。
どうして気づかなかったのか…。
シャンプーや石鹸といった小物から、
炊飯器、電子レンジ、冷蔵庫といった大型製品までが、
いつの間にか無くなっていた。
一体何が起きてるんだよ…。
パソコンやIpodもなくなってるし…
部屋の物が無くなってるってことは、誰かが俺のいない内に忍び込んで盗んでるとしか考えられない。
俺は犯人を突き止めようと、部屋に隠しカメラを仕掛けることにした。
そして翌朝。
なんてこった…。
部屋がもぬけの殻じゃないか…!!?
俺が寝ていたベッドも、家具も、食料も全て…!?
でも、隠しカメラだけは盗られなかったようだ。
これを見れば犯人の正体がわかるはず…っ。
何だ、こいつら?!
うわぁ…、俺が寝ている間に次々と物を盗んでいく…。
こいつらが犯人だったのか…。
また現れた…。
くそぉ…、顔さえ見えれば…。
あれ…、動きが止まった。
…と思ったら、押入れの中に…。
……。
…あれ、押入れから出てこないぞ?
ここで映像が終わってる…。
まさか…。
ガタガタ! 押入れから物音が…!
ひぃっ!
俺は無我夢中で家から逃げ出した。
森本先輩、どうしたんですか? そんなお化けでも見たような顔して息切らして…。
じ、実は…。
俺は自身に起こった全ての事を、後輩に全て話した。
警察に電話しましょう。まだ森本先輩の部屋にいるかもです。
お、おう…。そうだな。
でもその間、帰る場所がないですね…。
そうだ! 私の家に来てください。
いいのか?
森本先輩が困ってるのを、放っておけないです。
ありがとうな。
私の部屋に着きました。
お邪魔しまーす。
え? この部屋って…。
俺の家にあった冷蔵庫や電子レンジ…。
歯ブラシやシャンプーも…。
……。
まるで俺の部屋そのものじゃないか…。
ガチャッ。
!?
一体どういうことなんだ、後輩?
何のことですか?
とぼけんな! この部屋にあるもの全てが、俺の部屋から盗まれたものだらけじゃないか!
まさか…、お前が…。
やだなぁ、私は先輩のものを盗んだりしてませんよ。
ただ、通販でとある雑誌を購入しただけですよ。
ざ、雑誌?
その雑誌の名前は…、
『週刊 森本サトシ』
『週刊 森本サトシ』?
森本先輩の全てを、ビジュアル満載のマガジンとDVDで楽しむ分冊雑誌です。
毎号付録には、先輩の私物がついてきて、それを揃えると…。
1/1スケールの森本先輩の部屋が完成するんですよ♪
多少お金はかかっちゃいましたが、先輩の全てをコレクションできるなら構いません。
お前…、やべーよ。気持ち悪いよ。
コレクターがヲタクみたいで気持ち悪がられるのは、仕方ないことです。
それより聞いてください! さっき、最終号の雑誌が届いたんです。
その付録は…、
森本先輩 です。
お…、俺?
私、無くしても戻ってくるように、自分の物には必ず名前を掘っておくんです。
…おい、何をしようとしてる。やめろ!
森本先輩…、私のコレクションになって下さい♡
あ゛あ゛あ゛あぁぁぁっっっ!!!!
皆さんは最近、身の回りの物が無くなっていたりしませんか?
それはもしかしたら、誰かにコレクションされているのかも、知れません…。
劇終