(朝の騒動はひとまず過ぎて今は授業……)
(はぁ……休み時間が怖いよ)
ロク、教科書を見せて欲しいの。
え?あ、うん別にいいけど……。 持ってないの?
今日来たばっかだからまだ教科書の用意が出来ていないの。
あ、なるほど……じゃあ机をちょっと近づけないと。
机を動かす必要は無いの。 こうすればいいの。
ちょ!み、水無月さん!?
むー、苗字じゃなくて名前で呼んで欲しいって言ったはずなの。
あ、ごめんなさい……じゃなくて! 何で僕の膝の上に座っているの!?
こうすれば机も動かさなくてもいいしロクに密着しながら授業出来るからいいの。
僕がよくないって!! 頼むから一回席に戻って……お願いだから……。
嫌なの。
(あああぁぁぁ……いくらなんでも授業中だよ……恥ずかしいし何よりも……)
(文月いいいいいぃぃぃぃぃぃ!! 貴様は万死に値するうううぅぅぅぅ!!!)
(休み時間に覚えていろよおおおぉぉぉぉ……!!)
(命の危険を感じる!!このままだと本当にヤバイ!!)
みな……いやサツキさん。
呼び捨てにして欲しいの。
(なああああぁぁぁぁ!? 女の子を名前で呼び捨てって……呼び辛い!!)
さん付けだとロクと距離がある様に感じるの、それは嫌なの。
だから呼び捨てで呼んで欲しいの。 私もロクって呼ぶからロクはサツキって呼んで欲しいの。
(ううううぅぅぅ……純真過ぎて強く断れないよう……)
……サツキ。
……やっと呼び捨てで呼んでくれたの。嬉しいの。
(ああああぁぁぁ……女の子特有の柔らかさがああぁぁ……そして視線が痛い……)
っ!!
どうしたの?ロク。
(こ、この恐怖の殺気は……)
……。
(ロク……休み時間では逃がさないわよ……)
(うわああああああぁぁぁぁ!!! 凛さんがマジで切れる瞬間10秒前!!)
あの凶暴そうな女が気になるの? あんなに睨んで来てるのが気になるの?
(その通り、その通りです……)
気にしなくていいの、何かあっても私がロクを守るの。 安心していいの。
(ああああぁぁ……また胸が当たってきてるうううぅぅぅ……)
(ムッカーーーーーーーッ!!!!)
(……休み時間、文月に制裁を加えよう思ったが止めておこう……)
(というか逃げないと俺ら巻き添えになる……逃げるんだぁ……)
(うううぅぅぅ……こういう時に限って時間は経つのが早いんだよなぁ……それに何故か先生も注意しないし……)
ロク、こっちを見て欲しいの。
え?あ、うん……。
キーンコーンカーンコーン……。
逃げるんだよおおおぉぉぉぉ!!
こぉら待てぇ!!!
あ、待って欲しいのロク。 ……行っちゃったの。
(ひえええぇぇぇ……捕まったらやばいよぉ……)
待たんかい!このドスケベ変態ロクデナシ男!!
あれは僕のせいじゃないよぉ!! サツキがやれっていうから……。
いつから転校生を名前で呼ぶようになったの!?
それもサツキがやれって言うからだよぉ!!
大体何よ!!授業中なのにあの態勢は!!
僕に言ったってしょうがないだろぉ!?
待ちなさい!!取り合えず一発殴らせろ!!
何が取り合えずなのさ!? 絶対嫌だよ!!
はぁ……はぁ……。
ロク!お帰りなさいなの!
はぁ……はぁ……もうだめ……。
さぁもう逃げられないわよ!! 観念しなさい!!
ちょっと待つの。
何よ転校生!! アンタなんかに話は無いわ!!
こっちにも話す事は無いの。 でも貴女は無理やり話そうとしている。
話があるのはロクだけよ!! アンタは引っ込んでなさい!!
その様子だと話し合うだけじゃすまないの。だから絶対どかないの。
そもそもロクは何も悪くないの、全部私が頼んだ事なの。
それを勝手に嫉妬し暴走している貴女にロクと話す権利なんて持ってないの!
し、嫉妬なんてしてないわよ!
なら私の事は気にせずに普通に話しかければいいだけなの。それが出来ないという事は何か特別な感情を持っているという事なの。
な!……くうううぅぅぅ……!!
(……凄いなあの転校生……あの葉月を相手にして完封勝利だぜ……)
(ぐううぅ……胸が痛い……悔しいが水無月ちゃんの言ったとおりだ……!)
ロク、貴方は私が守るの。 だから怯えないでいいの、ただ私の側から離れないようにすればいい。
はぁ……はぁ……さ、さようですか……。
もう大丈夫なの。そんなに怯えなくても私がこうしてるから落ち着いて欲しいの。
(あああぁぁ……柔らかくていい匂いで落ち着くけども……毎時間これじゃ身が持たないよ……)
~続く~