“ようこそ文藝部部へ 第01話”

まだ桜が散りきっていない春の朝。

私は、この日、高校生となった。

色上の丘(いろがみのおか)公立高校。

西の青谷高校と東の赤里高校とが合併してできた高校。

過疎化が進んだ私たちの村ではこの二校が合併してもまだ生徒数が足りない。

そんな小さな高校。

本当なら、私たちは青里高校へ通うはずだったが、折りの老朽化で校舎の一部が倒壊。

そうして、ここへ来ることとなった。

(私たち青谷高校に入学予定だった生徒は、制服が違うのよね……)

(少し締まらないかな……)

青谷よりも幾分か新しい校舎。それでも、古い部類に入るのだろう。

………………

私が担任の鈴鏡 みどり(すずかがみ みどり)と言います。

これから、一年。宜しくお願いしますね。

まずは、皆さんの出席を取ります。

………………

露草 紫(つゆくさ ゆかり)さん

はい。

………………

機郡 あかね(はたごおり あかね)さん

はい。

………………

大人びた教師の声に耳を傾け、ゆっくりと最初の日が過ぎて行った。

それでは、最後になりますが、皆さん、これから高校生です。

勉強に運動に、そして、様々なこと。

多くを学んで、この学校生活を謳歌してください。

我が校には、多くの部活動があります。

もちろん、強制参加ではないですが、なるべく入ることをお勧めします。

やる気のある部活はもうすでに見学などができると思いますので、興味がある方は是非のぞいてみて下さい。

それでは、皆さん。さようなら。

ガヤガヤ……ガヤガヤ……

高校生になってやりたいこと。

それは私の中でずっと決まっていた。

――文藝部。

本を読むことが好きな私は絶対にそこに入部したかった。

あの……すいません……

ん? 君は新入生か?

はい。

文藝部を探しているのですが、どこにあるかご存知でしょうか?

文藝部……

君は文藝部部に入部希望か!

よし! 僕が案内してやろう!

こっちだ! 来い!

あっ、ちょっと――

ここがそうだ!

えーっと、このプレハブ小屋みたいな場所が?

さぁ、中に入るぞ!

あ、あの、まだ心の準備が!

おーい!

新入部員連れて来たぞ。

だれ、だれ? 女の子?

桃ちゃんより可愛い子はいませんよ!

おい。蒼(あお)。また、無理やり引っ張ってきたんじゃないだろうな!

この子が来たいって言ったのさ。

本当か! それは嬉しいねぇ!

で、その子はどこにいるの?

これこれ。

あ、あの……露草 紫と言います。

宜しくお願いします。

おぉ、今度は本物っぽい!

前の無理やり連れてきたときは災難だったからな。

そうだねぇ。女の子泣いてたしね。

ちわー

おっ、クロ!

遅かったな。

ちょっと、拾いもの……

拾いもの?

あ、あの……入部希望の機郡 あかねと言います。

宜しくお願いします。

クロ! でかした!

ぶい……

一気に新入部員が二人か。

全員で8人か。

今年は部に昇格だな。

7人じゃ部にできなかった……

やっと文藝部同好会から文藝部部に昇格……

長かったねぇ。

翆(すい)……泣かないの……

部長! 彼奴らが逃げる前に入部届書かせるッスよ。

うむ。そうだな。

ちょっと待てよ……

ガサゴソ……ガサゴソ……

よし! 二人ともこれに名前を書くんだ!

は、はい……

………………

書けました。

私も。

よし! 桃! 後は頼んだぞ!

らじゃあ♪

さぁ、改めて、おめでとう。

君たちが、文藝部同好会改め、文藝部部の最初の入部者だ。

あの……なんで、文藝部じゃなくて

文藝部部なんですか?

それは、私たちの部活が「文藝部」までが名前だからだ。

えっ? どういう意味ですか?

文化藝能部索部。略して文藝部部なんだよ。

えっ?

お前言ってなかったのかよ!

彼女は確かに文藝部を探していると言った。

僕は嘘は言ってないよ。

あ、あの……じゃあ、文藝部は?

別にちゃんとあるぜ。

あの……えーっと……

……ここは何する部活なんですか?

風俗文化や藝能にまつわることを調べる……

というと、堅苦しいか。

おかしな儀式や風習の元を探し出す。

いわば、文化研究部だ!

(なんで、最初からその名前にしないのよ!)

平たく言うと、オカルト研究部。

(お、オカルト研究……)

で、クロに連れてこられた貴様は、どうするんだ?

もっとも、辞めると言っても入部届は出したしな。

少なくとも一ヶ月は辞められないぞ。

うーん……

思っていたのと違うけど。

これはこれで面白そうかな。

よくできたメス犬だ。誉めてやろう。

わーい♪

………………

(私の学校生活……)

(これからどうなるんだろう……)

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Posted at 2013/01/25 20:30 Viewed 33 times

From Author

始まりは桜が散りきっていない頃だった……  前々から描きたいと言っていたホラーシリーズ。久しぶりに来たら過疎っているようなので、景気づけにまた連載してみようかなと。

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