窓越しに微かに聞こえる蝉の声。青空に積み重なる入道雲。その下にサッカーをしている生徒たちが見える。
俺もサッカーしたいなぁ・・・
二時限目の始業のチャイムが鳴ってから2分。今年の国語の先生は毎回5分は遅れてくるからあと2、3分は休み時間のようなものだ。
―ガラッ
国語教諭「はーい、号令」
と、思ったけど今日は早かったな。
だらだらとした号令の後に先生が出欠確認をする。今日は昨日に続き全員出席だ。
この国語の教師は毎回授業に入る前にその日にちなんだ話をするのだが、今日は、
国語教諭「今日は7月7日―」
七夕、だな・・・
キーンコーンカーンコーン
放課後になった。 いつもならすぐに帰るところだが今日はそういうわけにも行かない。
なぁ、今日いいか?
――・・・
うん、いいよ。もしかして明日の化学のテスト範囲?
ああ、そうなんだよ。先週3日間風邪で休んでたら全然わからなくなっちゃってさ
まぁ今やってるところは少し難しく感じるかもしれないけど、一度理解すれば簡単よ。まぁ私に任せなさい!
頼もしいな。じゃあ先に行って待ってるよ。
あ、待って。私ももう準備いいから一緒に行くわ。
放課後は時々こうして幼馴染に勉強を教えてもらうことがある。
生まれたときからお隣さんで小学生までは一緒に登下校していたけど、中学に上がるときに俺が引っ越したから今はもうしていない。 まぁ、引っ越し先がそんなに離れた場所じゃなかったから中学も同じだったし今もこうして同じ高校に通ってる。
同じクラスでもあるけど、休み時間なんて短いもんだし昼休みはそれぞれの友人と過ごすから
今となってはこの図書室までの移動時間と、勉強が終わった後の図書室から校門までの道のりくらいでしか会話もしなくなっている。
来るたびに思うけど、なんで図書室だけこんなに力入ってるのかしら
もうそれは何度も話し合っただろ。それよりご指導お願いします、先生。
それもそうね。さて、始めましょうか。
と言いながらクイッと眼鏡をあげる真似をしてみせた。
三時間後・・・
・・・
あんたが一度も化学を教えてくれって言わなかったのはそういうことだったのね。
い、いやぁ流石だな!あそこまで壊滅的だった俺の化学をたったの三時間でここまで成長させるなんて!
まぁいいわ。今日はあんまり怒りたくないし。
それじゃあ帰ろっか。
うん。
もうすぐ完全下校時刻も近づいていて他に生徒は一人もいない。俺たちは急いで荷物を片付けて図書室を出た。
図書室には生徒はいなかったが、まだ生徒がいる教室もいくつかあって所々まだ明かりが点いていた。
俺たちと同じく勉強をするために残っている様子だったので静かにしようと二人で確認したのだが、結局黙っていることはできずに、小声で会話をしながら歩いた。
俺のせいで遅くなっちゃったし今日は途中まで送るよ。公園の分かれ道から行けばそんなに距離も変わらないし
うん。お願いするね。
三時間も時間使ってあげたんだから平均越えくらいはしなさいよー
もちろんだよ。あれだけ教えてもらえば俺でも平均に届くさ。
小さい頃は、よく二人でこの先の公園に遊びに来ていた。そこには高台があって、天気がいい日には―
せっかく今日は星がきれいなんだし、公園まで行くんなら高台上ってかない?
―とてもきれいに星空が見える。
ん~!すっごいきれいだね!来てよかったよ。
うん。・・・なぁ、
・・・誕生日、おめでとう。
うん!ありがとっ!
織姫と彦星は一年に一回しか会えないらしい。俺は会おうと思えばいつでもこいつに会えるけど、 この最高の笑顔には、一年に一回しか会えないんだ。