…あたしの、家… なんでこんなに急に、どうして…
ほらほら、そんなところで突っ立ってると…売るよ
ひ… い、嫌、ごめんなさいっ
逃げなきゃ… どこかにっ
早く… 誰か、人のいっぱいいるところに
はあ、はあ、はぁっ… …どこだろ、ここ
とりあえず…高いところに行けば 全体が見えるかなっ
うわ…、ビルしか見えないっ どうしよう…いつの間にこんな遠くまで来ちゃったんだろ
ん? こんな時間に何してるんだ、君
あ…あ、あたしっ 家、家に帰れなく… 父と母が…えっと、うぅ…
(家出か?丁度いい、彼女を作れってみんなうるさいしな…連れ帰るか)
君。帰る家がないなら僕の家に来る? ぇ~…と、丁度寂しかったんだ
え…本当に良いんですかっ (このままじゃいつか死んじゃうし…少し、信じてみようかな)
ここが僕の家だ。 隣に建った高級マンションのライトが眩しい上にトイレ・風呂・台所は住民の共用、築83年で月1万5000円のボロアパート
それでも…死ぬよりマシですよっ 本当にありがとうございますっ
(…しかし。純真無垢すぎる 俺の彼女にはできないな…仕方ない。 居候としておいてやるかな)
じゃあ…今日からよろしくね
! は、はいっ!
そうやって…2年とちょっと。 別にどうってこともなく過ごしてきたんだけどね
悪いけど今日もコンビニ弁当なんだ。 まぁ、ご飯が食べられるだけ幸せだろ
う、うん… だ、だけどね!たまには何か他の物…
…何言ってるんだ 君は所詮気まぐれで拾った居候だ、気に入らなければいつでも出て行っていいんだぞ?俺も最近飽き飽きしてきたし、そろそろ出て行くか?
ごめんなさいっ お願いっ…許してください
脅されながらずっと居候してたから。 たまに殴られたりもしちゃった
それで、一昨日。 女の人が彼とべたつきながら来たの
涼ちゃ~んっ♥ 私嬉しい、やっと涼ちゃんのおうちに入れるんだねっ♥
ああ、ゆっくりしてってくれ。 中に一匹ペットがいるけど、無視して
ふふ、お邪魔します♥ ペットはワンちゃん?猫ちゃん? わ、狭いけど素敵な部屋♥
いいだろ。 狭いけど、な
ちょっと涼さん、誰か来てるの? 女の子の声がする
黙って隠れてろ。目障りだ
…あ…、ごめんなさい…
あら。 あなたは何様?涼ちゃんの家に入って …あぁ、もしかしてペットかしらね
え…い、居候させてもらって、ます
…可哀想に。 あなた、涼ちゃんにペット扱いされてるわよ?それに今日から私がこの家で暮らすの。ま、捨て猫にでもなりきって路地裏で泣いていらっしゃれば?どこぞの脂ぎったオジ様が拾って慰めてくれるんじゃなくて…?あは、惨めね!!!
!!!!! そ、そんなっ…
そうでしょう? ねぇ…涼ちゃん♥
その通りだ、みィは賢いな。 昨日捨ててこようと思ったんだが鳴き声がうるさくてなぁ…夜中だったからしぶしぶ置いておいてやったんだよ
だそうですわよ、ペットちゃん? 悪いけどあなたがいることで狭いわ。 早くここから出て行って頂戴、ノミが飛んで私にくっついちゃうわ…ああ汚い
オラ、さっさと出ていけよ! 邪魔なんだ、突っ立ってるんじゃない
そんな… 昨日は優しかったのに
ハ! 勘違いして思い上がっているの? 発情した猫じゃないんだから…
…もういい 出ていきますよ
そうやって涼さんのおウチを出て… 路地裏でなんたらて言われたでしょ? だから…もうヤケになっちゃって 本当に実行してみたんだ
そしたら運良く蒼李さんが拾ってくれたってわけ! 本当に出てきてよかったよ
そんな…そんな風にっ 橙果さんは悔しくないんですかっ
…うん 昨日一日色々考えて、恨むのはやめた 悔しいっちゃ悔しいけどね!あはは
…橙果さんは強いんですね でも…一人で抱え込んじゃダメです 私が。ちょっとだけじゃなくてずっとここに居させてあげます。居候なんかじゃなくて家族として… だから、私を頼って話してください…ね?
…うんっ… ありがとう…ありがとう蒼李さんっ あたしも、もっと頑張るね…!!!