プルルルル……プルルルル……
…………!
電話が鳴ってる。
(ガチャッ) はい、もしもし……。
あ、もしもし?藤井先生のお宅でしょうか?
(お父さんもお母さんも大学の先生なんだけど……。)
(どっちだろう……?)
あの……。どちら様でしょうか……?
あ、私。アカデミックテクノロジーコミュニケーションカンパニー(仮名)の安住と申します。
藤井先生へお取次ぎをお願いしたいのですが……。ご家族の方ですか?
えっと……。どっちの藤井先生でしょうか?
は?
両親2人共、大学の先生をしているので……。
あ、ああ。娘さんでしたか!
お嬢ちゃん。A女大の藤井さやか先生。お母さんの方に代わって貰えないかな?
母は今、仕事で留守にしています。
差し障りがなければ、用件を母へ言付けておきますが……。
(難しい言葉を使って、ちゃんと電話の遣り取りが出来る雛子、凄い!)
あ、いえ……。
そうですか、それではまた改めて掛け直させて頂きます。 (ガチャリ……)
切れちゃった……。
お母さんに電話しておいた方がいいかなあ……?
……………。
…………。
出ないなあ……。 ま、いいか。
その夜
ひな。あなた、夕方にお母さんの携帯に電話した?
うん、したよ。
アカデミック何とかって会社の安住って男の人から、お母さんに取り次いで欲しいって。
お母さんが留守にしているから……。
お母さんに伝言しましょうかって言ったら、掛け直すって言って切れっちゃったんだけど……。
そう。
多分、ただの業者でしょ。
お母さんの仕事関係の人はお母さんの携帯の番号を知っているし……。
部外者でも、お母さんと本気で仕事の話をするなら、先ずは大学の方に話を通すでしょうしね。
まあ、兎も角。お母さんにしても、お父さんにしても……。
お父さんやお母さんが家に居ない時に、家に仕事の電話が掛かる事は絶対にないから……。
今度、知らない番号から掛かってきたら、無視しなさい。
うん、わかった。