「あっ…」
「…おはようございます」
「…ん」
「あぁ、結衣子か。おはよう」
ぺこり、と小さく頭を下げ、結衣子は私の隣に並んだ。
彼女は私の一つ年下で、同じ学校に通う後輩である。
「…よい天気ですね」
「そうね。晴れてるわね」
「……」
「……」
「…暖かいですね」
「そうね。もう春だものね」
「……」
「……」
――と、まぁこのように、私達二人は会話が続かない。
別にお互いを嫌ってるだとか壁を作っているわけではなく、むしろ逆にとても馬の合う(少なくとも私はそう思っている)間柄である。
「…亜季先輩」
「ん、何?」
コンビニエンスストアの前で立ち止まる結衣子。
「すみません。朝食をまだ食べてないので何か買ってきていいですか?」
「そう、じゃあここで待ってるわ」
そう言うと私に向かってこくこくと頷き、コンビニへ入っていく。
朝食……。
……。
……思い出すと胃がぐるぐるする。
「お待たせしました」
「ん、……」
「あぁ、早かったわね」
「どうかしましたか、お腹を抑えて」
「いや……ちょっとね」
「……つわり、ですか」
「……は?」
「どこぞの馬の骨に孕まされたのですか?」
「……」
――と、まぁこのように、結衣子は突然わけのわからないことを言い出す。
「ゴムのないところに挿入はない」
「……ごもっとも、で」
「マタニティ先輩のために何か酸っぱいものを買ってきましょう。あと、ゴムも」
「ちょ!――いらないから!ていうか勝手に妊婦にするな!」
朝っぱらから制服の女子高生がコンドームを買うなんて、とんでもない。
「……怒ると、胎教によくないですよ」
よしよーし、などと言いながら私のお腹をさする。
「あ、今蹴った」
「蹴らねぇよ!」
――私の周りは変人が多い。






