『トロイメライを待ちながら 2』

「あっ…」

「…おはようございます」

「…ん」

「あぁ、結衣子か。おはよう」

ぺこり、と小さく頭を下げ、結衣子は私の隣に並んだ。

彼女は私の一つ年下で、同じ学校に通う後輩である。

「…よい天気ですね」

「そうね。晴れてるわね」

「……」

「……」

「…暖かいですね」

「そうね。もう春だものね」

「……」

「……」

――と、まぁこのように、私達二人は会話が続かない。

別にお互いを嫌ってるだとか壁を作っているわけではなく、むしろ逆にとても馬の合う(少なくとも私はそう思っている)間柄である。

「…亜季先輩」

「ん、何?」

コンビニエンスストアの前で立ち止まる結衣子。

「すみません。朝食をまだ食べてないので何か買ってきていいですか?」

「そう、じゃあここで待ってるわ」

そう言うと私に向かってこくこくと頷き、コンビニへ入っていく。

朝食……。

……。

……思い出すと胃がぐるぐるする。

「お待たせしました」

「ん、……」

「あぁ、早かったわね」

「どうかしましたか、お腹を抑えて」

「いや……ちょっとね」

「……つわり、ですか」

「……は?」

「どこぞの馬の骨に孕まされたのですか?」

「……」

――と、まぁこのように、結衣子は突然わけのわからないことを言い出す。

「ゴムのないところに挿入はない」

「……ごもっとも、で」

「マタニティ先輩のために何か酸っぱいものを買ってきましょう。あと、ゴムも」

「ちょ!――いらないから!ていうか勝手に妊婦にするな!」

朝っぱらから制服の女子高生がコンドームを買うなんて、とんでもない。

「……怒ると、胎教によくないですよ」

よしよーし、などと言いながら私のお腹をさする。

「あ、今蹴った」

「蹴らねぇよ!」

――私の周りは変人が多い。

B
e
f
p
q
r
s
K
O
キーボード操作
  • J 次のページ
  • K 前のページ
  • [ 最初のページ
  • ] 最後のページ
  • E フキダシのモーションON/OFF
  • 0 自動ページ送りOFF
  • 1 自動ページ送り (おそい)
  • 2 自動ページ送り (ふつう)
  • 3 自動ページ送り (はやい)
  • P 自動ページ送りの停止/再開
  • ? キーボード操作の表示
もう一度みる
他の作品をみる
公開日 2012/04/17 13:13 再生回数 28

作者からのコメント

第2話。ゆっくりじんわり進めて行きます。

みんなのコメント

ログインしてコメントを書く…