これまでのあらすじ。
狐妖怪『空狐(くうこ)』の呪いのせいで女の子になってしまった少年・八雲(やくも)!!
呪いを解くには『空狐』の代わりに『善行』(人助けなど)を行わなければならないという。
そこで八雲は幼馴染の少女・李(スモモ)に協力してもらい、様々な人を助けていくのだ!!
人助けをしていくうちに徐々にだが、彼らの仲は深まっていき・・・
やがて妖力を取り戻し、成長した姿になった空狐。あとは八雲を元の男の姿に戻して貰うだけだ!!
・・・と思っていたが、空狐の口から思わぬ言葉を聞くことになってしまう・・・・・・
・・・
俺が男に戻ると空狐が居なくなっちまう・・・だって!?
・・・うん。呪いを解いた僕は現世にいる理由が無くなってしまうから、君達にはもう逢えなくなってしまうんだ。
・・・そんな・・・くーちゃんが・・・せっかく仲良くなったのに・・・・・・
・・・でも、僕が居なくなれば彼は元の姿に戻ることが出来る!!それはスモモちゃんも望んでいることでしょ!?
そ、そうだけど・・・でも・・・・・・!!
・・・なあ、他に手はないのか? 俺が男に戻れて、お前も現世に居られる方法ってのが一番なんだが・・・
・・・方法はある・・・けど、それをやってしまえば八雲は・・・一生苦しむことになるかもしれない・・・
・・・どういうことだ?
平たく言えば、僕が一生八雲に取り憑くってことなんだ。
そうすれば、妖力が溜まっている間は男に戻してあげる事が出来る。
けどそれは一時的なものだし、何よりも妖力が尽きたらまた女の子の姿で人助けをして妖力を貯めるハメになる。
一生、ずっとその繰り返しだ。 男にも女にもなりきれず、呪われたままの人生だよ・・・そんなの嫌だろ・・・?
・・・なるほど、要は無限ループみたいに男と女で入れ替わり続けるってことか・・・
・・・・・・
・・・よし、それでいいよ。
え、えええええっっっっっっ!?
ちょっ、何言ってるの八雲!? 一生このままの体質でいるつもりなの!?
・・・そうだよ!僕のせいで君はこれまで苦しい目にあってきたっていうのに・・・
・・・僕なんかのために、一生その苦しみを背負うなんて・・・そんな迷惑かけられないよ!!
・・・あのな、空狐。 誰が迷惑だなんて言った?
・・・え?
・・・実は言うと俺、お前と出会ってからの生活が・・・楽しかったんだ。
今まで引き篭もってばかりで他人とロクに話さなかったような俺が、人助けをする事になるなんて考えもしなかった・・・
もちろん最初は嫌だったけど、今では人と関わるのが楽しい。そのきっかけを作ってくれたのは・・・お前だよ。
・・・八雲・・・・・・
そして、そんな恩人が困ってるなら今度は俺が助けてやる番だ。
神様だろうが人間だろうが関係ねぇよ!!俺なりの恩返しだ!!受け取ってくれ!!
・・・本当に、それでいいの?
・・・ああ、俺は・・・
ちょ、ちょっと待ってよ!!これじゃ八雲が自分の人生を捨てているようなものじゃない!!
・・・そりゃ私だってくーちゃんと離ればなれになるのは辛いけど・・・
けど、それは八雲が人生を掛けてまでやらなきゃいけないことなの!? ・・・私には・・・分からないよ・・・
・・・スモモ・・・
・・・スモモちゃん・・・
・・・
・・・決めた。
・・・やっぱり、僕がみんなの前から消えることにするよ。
お、おい・・・それでいいのかよ!?
大丈夫だよ。現世で暮らしたいなんていうのは僕の単なる我儘だ。これ以上は言えないよ。それよりも僕は・・・・・・
・・・みんなに、こんなにも気遣って貰えた・・・そのことがとっても嬉しいんだ!!
君たちと過ごすことが出来たから、僕はもう一度「この世」を「生きる」ことが出来たの!!本当に楽しかったよ!!
・・・空狐・・・無理してないか?
う~ん、本音を言えばちょっと寂しいんだけどね。君達のことを影から見守らせてもらうよ。
・・・ごめんね。私が変なこと言っちゃったから・・・・・・
もう!!そんな弱気でどうするの!? 八雲が男に戻ったら言うんでしょ?
『八雲のことが好き』だって告白・・・
う、うわああぁぁっっ!? な、なななな・・・何言ってるの!?
ん? 俺がどうしたって?
な、なんでもないわよ!? 女の子同士の話なんだから!!
・・・一応、今の俺は女の子なんだが・・・?
うんがーーー!!この男女!!
冗談だって!!その言い方はないだろ!?
あははっ!! やっぱ二人とも面白いなぁ・・・!!
・・・さて、僕はそろそろ行こうかな?
・・・くーちゃん・・・
・・・空狐・・・ ・・・別れる前にこれだけは言っておきたい・・・
・・・ありがとな!!
こちらこそ!!
・・・さあ、お別れの時間だ!!
・・・これは、あの時と同じ空間・・・
そう、これで明日目が覚めたら八雲は晴れて男に戻っているはずだ!!
だから今日はまだ時間がある。最後の「女の子の日」を過ごせるよ!!
・・・「女の子の日」って・・・それなんか違うような・・・
・・・まあいいや。 じゃあな、楽しかったぜ!!
僕もすっごく楽しかったよ!! ・・・それじゃあ・・・・・・
・・・さよなら!!
・・・行っちまったか。
・・・私、最後にくーちゃんに酷いこと言っちゃったかな・・・・・・
・・・そうだな・・・でも、あいつ去り際に言ってたぜ。
・・・『楽しかった』ってな。 お前のこと、責めてもいなかったよ。 一緒に居て幸せだったんじゃないか?
・・・ううっ・・・なおさら自分が情けないよぉ・・・ぐすっ・・・くーちゃんっ・・・・・・
あーあー、泣くなよ? この後、事が済んだらみんなで集まる約束だろ?
そこで気持ち切り替えようぜ!!
・・・うん・・・そうだね・・・
・・・行こっか・・・くーちゃんの分まで・・・楽しまなきゃ・・・!!
・・・おう、その意気だ!! ・・・さーてと・・・俺は・・・・・・
・・・これが「最後」の・・・「女子会」だな・・・!!
その日、俺は『女の子』でいられる『最後の一日』を過ごした。
みんなで集まって町を歩き・・・
おいしいスイーツ店を何件もハシゴして・・・
その後カラオケで大熱唱して・・・
・・・そんな他愛もない、女の子だけの集まり・・・
・・・もう二度と経験することのないであろう一日を過ごした。
・・・明日には男に戻れる。 そのことが嬉しいはずなのに、なぜかとても寂しかった・・・・・・
・・・
そして、翌日の朝。
・・・男に・・・戻ってる・・・
・・・胸もない・・・髪も長くない・・・立ち上がると視界の高さに一瞬フラつく。
・・・そうだ。やっと元に・・・男に戻れたのだ。
八雲ーーー!!八雲いるーーー!?
この声は・・・またあいつ勝手に上がり込んで来やがって・・・
いるなら返事しろーーーー!!!!
・・・ってあれ?
・・・男に・・・戻ってる・・・!?
ああ、空狐の言ってたとおり朝起きたら戻って・・・っておい!!
・・・私より大っきいおっぱいもない!!髪も短い!!身長も高い!!
お、おいベタベタ触るなってっ!! うわっ、ちょ、どこ触ってんだ!!
・・・アレもある!!・・・声も低い!! ・・・よかった・・・・・・
・・・やっくんだ・・・やっくんがいるよ・・・ぐすっ・・・おかえりいいいぃぃぃぃ!!!
ああもうっ!!抱きつくなよ!! ・・・ったく・・・・・・
・・・ただいま。
・・・こうして俺は久しぶりに男として過ごす毎日が始まった。
・・・だが、昨日一緒に遊んだ彼女たちとはもう・・・・・・
あ、そうだ昨日集まってくれた女の子たちなんだけどね。
八雲が男に戻った記念に今日も一緒に騒がないかって言ってたよ!!
・・・は?
昨日は誘わなかった他の男子メンバーと一緒に行こうって!! どう!?行くでしょ!!もちろん!!
ああ・・・
・・・そうか。
男だろうが女だろうが、俺達にとって、そんなことは関係ないんだ。
性別なんて枠を飛び越えて、お互い馬鹿騒ぎしたり、喧嘩したり、助け合ったりする仲間・・・大切な『友達』・・・
わっ、もうこんな時間!! 早く行こう!みんなが待ってるよ!!
・・・そんな『友達』と助け合うことを俺が知ることが出来たのは・・・・・・
・・・空狐・・・・・・
・・・お前のおかげだ・・・!!
・・・よし、こうなったら校門まで一気に走るぞ!!
えええええっっっ!? ・・・ちょ、置いてかないでよ!!やっくーん!!!
ふははっっ!!男に戻った俺の脚力を舐めるなぁぁぁ!!!
・・・
・・・まったく、これだから男の子は・・・!!女の子も負けてられないね!!
待てコラ―――!!!
おしまい。
おまけ。
八雲が男に戻って数日が過ぎたある日。
ふう・・・女になってる間は高いところの掃除が出来なかったからなぁ・・・埃がすげえや・・・
・・・この台座に乗っても上まで届かねなかったんだよなぁ。ボロいから危ねーし・・・って、あれ?
・・・お、ここ丁度あの地蔵の真上か。 ・・・思えばあの地蔵から全てが始まったんだよな・・・・・・
・・・後であの地蔵もキレイにしてやろう。八雲も喜ぶだろうしな!!
・・・グラッ
・・・やべっ、バランスが崩れて・・・!! ・・・う、うわあああぁぁぁっっっ!?
ガラガラ・・・ドッシーン!!
・・・痛っててて・・・ ・・・・・・って、ああっっ!?
うわあっ!? やべぇ、地蔵の首が取れちまったっっ!!マミったどうしよう!?
・・・って、このパターンは・・・・・・
・・・!!
・・・ああ・・・ちくしょう・・・これでまた・・・・・・
・・・女の身体で人助けする毎日が始まっちまうじゃねーかああぁぁぁぁ!!
・・・目が覚めるとまた八雲は女の子になっていました。彼の受難な日々はこれからも続くようです。
おしまい。