どうも、初めまして。いきなりでしたけど、取材はOKですかね?
えぇ、かまいません。
ありがとうございます。では早速、インタビューの方に入らせていただきます、
と言いたいところですが、幾つか納得していただきたいことが。
(何か不正が行われているとして、それを庇うわけにもいかない。報道の自由、そして生徒への知る権利を確認させておこう)
な、なんでしょうか?
いえ、私どもも新聞部、人が書く以上、記事には意図しない行き違いがあるものです。
もちろん、故意にあなた方をコキおろして書くわけでもありませんし、生徒たちに良い顔を振りまくわけでもありません。
あくまでウチの部は、中立を保っているのです。
どんな記事になっても、そこに悪意はなく、また善意もない。と言いたいのですね?
えぇ、掻い摘んでいうと、そうなります。
聞き及んでおりますわ。あなた方の記事はあくまで中立。一度ほかの部活と揉めたそうですわね。
そうですね、あちらはもっと褒めて、讃えられた英雄文を求めていたみたいですが。
素晴らしいことですわ。メディアはそうあるべきだと考えます。中立。それが真実をストレートに届ける。
わかっていただいて恐縮です。もちろん、答えたくないインタビューは答えなくても結構ですので。
警察の取り調べみたいですわね。大丈夫です、私達はあなた方のような存在を待っておりました。
? それはどういう?
それはあなたがたに気付いていただきたいところです。それこそが私達を救ってくれるはず。
どういう事です?
あなたがたがここに来た理由くらい、察しておりますわ。現にホラ
(ゴソゴソ)
あの怪しげに動いて、私達の冷蔵庫を先程から調べているダンボール、アレは新聞部の方でしょう?
(早速バレた!だからお前は蛇になれないと言ったのに!)
アレはただのダンボール。私は何も見ていません。
さ、始めましょう。
え、えぇ、では、早速。 料理研究部でいらっしゃいますが、ここ最近作ったのは何ですか?
最近は昨日作ったどら焼き、ですわね。白あん。
でも、理研ですよね?ウチのリサーチでわかった事ですが、ここ数カ月、あなたがたは和菓子しか作っていません。
そう、それが第一のカギ。私達を解放する一つ目のカギ。
はい?どういう意味です?解放?
あなたがたが中立を、そして真実を報道して下さるのなら、それが私達を解放します。
続けましょう。
え、えぇ、じゃあ、次に作りたいものはなんでしょう?やっぱり和菓子?
シチューですわ。鶏肉ゴロゴロ、人参ホクホク、コクのあるブイヨン。そういったものをふんだんに使ったクリームシチューです。
え?和菓子じゃないんですか?てっきり次も和菓子を作りたいのだと、
それが二つ目のカギ。私達は理研です。和菓子メインで作りたいはずはありません。
(だんだんとわかってきたぞ、理研は何かから解放されたい)
(だが、声に出して助けを呼べない。だから今回、ウチの取材に応じることでウチにその鎖を断ってもらおうとしている)
(先程からの妙な回答、アイツがバレバレのダンボール変装で家庭課室を漁ってても黙認…!)
(取材と言う事でヒントを与えている!これで気付いて鎖を探してほしいと望んでいる!)
では、気になっている点なのですが。部員に対して、材料が多すぎやしませんか?使い残している風でもありませんし。
聡いですわね。そう、それが三つ目のカギ。理研だけなら、あんなにたくさん材料は必要ありません。
なるほど。では最後に一つ。料理に対する思いを、
食べてもらう事が喜び、という事が言われていますが、作ることそれ自体も喜びなのです。
作るのがつらいなんてことは悲しいことですわ。
わかりました。いきなりの取材に応じていただき、感謝します。
あなた方が中立を守り、真実に迫り、報道し、そして解放して下さることを願っていますわ。
はい、では。
どうだった?完璧だったろ。伝説の装備。
バレてたよ!アホ!
で、どうだった?
かわんねぇ。すっからかんだし、次買う予定の材料も大量に和菓子用だ。
取材をしていてわかったんだ。今回のこの一件、理研に取り付いてる鎖がある。そしてそれを断ちきってもらいたがっている。
へぇ、鎖、ねぇ。当然、アンタは断ち切ってやるんだろ?
あぁ、そうだ。だがあくまでも俺らは中立を保つ。
理研の肩も、鎖の肩ももたねぇのな。いいぜ、乗った。
悪いな、なんか。
いいっていいて、この記事ものにしよーぜ!早速何が鎖か考えようぜ!
そうだな。
(さて、その鎖とやらは一筋縄じゃいかないわ。お手並み拝見)





